歯並びが悪いのはなぜ?原因とリスク・咬み合わせなどの基礎知識
歯並びや咬み合わせにコンプレックスを感じている方は多いと思います。歯並びの乱れは虫歯や歯周病、口臭などの口内トラブルのほか、頭痛や肩こりなどの身体の不調と関係している可能性があるといわれています。ひょっとして慢性的な身体の不調は咬み合わせの不具合が原因かもしれません。ここでは歯並びの乱れの原因やそのリスク、「不正咬合」と呼ばれる歯並びについてご紹介しています。こちらの記事を参考に疑問や不安は歯医者さんに相談してみましょう。
公開日:2020/01/23 更新日:2021/11/18
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
- 歯並びの基礎知識!歯並びが悪くなる原因は?
- 遺伝によるもの
- 口腔習癖(こうくうしゅうへき)
- 歯を抜けたまま放置
- 歯並びが悪いと起こるリスク
- 虫歯や歯周病、口臭のリスクが高まる
- クリアな発音が難しくなる
- 消化器官への負担が増える
- 顔のゆがみや身体の不調、顎関節症を招くことも
- 口元のコンプレックスで積極的になれない
- 歯並びの種類
- 歯がずれて(重なって)生えている・・・叢生(そうせい)
- 上顎の前歯が出ている・・・出っ歯・上顎前突(じょうがくぜんとつ)
- 前歯が咬み合わない・・・開咬(かいこう)
- 下前歯が上の前歯で深く隠れてしまう・・・過蓋咬合(かがいこうごう)
- 前歯に下の歯がかぶさる・・・交叉咬合 (こうさこうごう)
- 歯の間に隙間ができている・・・すきっ歯・正中離開(せいちゅうりかい)
- まとめ
歯並びの基礎知識!歯並びが悪くなる原因は?
歯並びや咬み合わせが悪くなる原因は様々あります。一概には言えませんが、顎の大きさや歯の形などの遺伝的な要素や、子供の頃からの生活習慣、歯を抜けたまま放置しておくことなどが歯並びや咬み合わせに影響を与える原因と考えられています。また、これらいつくかの要因が複合し、歯並びや咬み合わせが悪化しているケースもあるようです。以下をご覧になり、思い当たる原因はないかチェックしてみましょう。
遺伝によるもの
目や鼻の形がご両親のどちらかと似ているように、歯の大きさや形、顎の大きさ(小ささ)歯並びも両親からの遺伝として引き継がれます。例えばご両親のどちらかが受け口の場合、お子さんも受け口になる可能性もあるのです。骨格性の出っ歯や受け口などの特徴的な顎の形のほか、歯が重なって生える「叢生(そうせい)」も遺伝しやすいといわれています。
口腔習癖(こうくうしゅうへき)
歯は一定の力が継続して加えられると、歯を支える骨の代謝により力が加えられた方向に移動する性質があります。例えば舌を前に出す「舌癖」や、「指しゃぶり」がその一例で、長期的に指や舌で歯を押し当て続けることにより、少しずつ歯が移動して出っ歯や開咬(上下の歯が咬み合わない状態)の原因となる場合があります。また、歯の生え変わりの時期になかなか永久歯が生えてこないことがきっかけで、乳歯が抜けたスペースに舌を突き出す癖がつき、歯並びに影響を与えるケースもあります。
一度身についてしまった癖を改善することは難しいもの。口元に影響を与える悪癖(口腔習癖)は子どもの精神的な問題が絡んでいるケースもあるため、できるだけ早い段階で介入・治療することが得策でしょう。特に成長期のお子さんは普段の何気ない癖が顔面の成長に影響を与えることがあります。以下のような癖がなかなかな治らない場合は歯医者さんへ相談してみましょう。
・口呼吸
・歯ぎしり
・食いしばり
・舌で歯を押す
・頬づえをつく
・指しゃぶり
・爪を咬む
歯を抜けたまま放置
虫歯、歯周病などで歯を抜けたまま放置しておくことも歯並びを悪くする要因のひとつです。「たかが1本。食事や発音に困ってないわ。」と、ブリッジや入れ歯、インプラントなどの治療を行わずそのままにしておくと、周囲の歯が移動してしまい、歯並びや咬み合わせのズレを引き起こすこともあります。
歯が抜けると咬み合う歯がなくなるため、これまで咬み合わさっていた歯が伸びてきたり、抜けている部分の周囲の歯が傾いたり、歯の移動によって咬み合わせが大きく狂ってしまうことも考えられます。また、先天的(生まれつき)に歯の数が少ないケースも、歯の数のアンバランスから歯並びや咬み合わせの乱れを起こす場合があります。
歯が抜けたまま放置している方は出来るだけ早いタイミングで歯医者さんに相談してください。手遅れになる前にどうか急いでください!
歯周病が原因で歯並びが崩れることも!
「若い頃は歯並びが良かったのに年を取ると歯並びが崩れてきた」というケースは案外多いようです。なぜなら、中高年に多い「歯周病」は歯を支えている骨を溶かす病気。歯周病が進行すると歯を支えている骨が少なくなり、歯が動きやすくなるのです。そこへ咬む力が加わるとさらに歯周病が進行してしまうばかりか歯も移動することに。咬み合わせの変化によって咬むと違和感を感じたり、痛みを生じる可能性があります。歯周病のリスクがある方は、まずはしっかり歯周病の治療を!そのうえで歯列矯正が可能か否か歯医者さんと相談しましょう。
歯並びが悪いと起こるリスク
不揃いな歯並びは見た目の問題だけでなく、身体の不調を招く場合もあります。以下にて歯並びの乱れが招くリスクについてご紹介します。
虫歯や歯周病、口臭のリスクが高まる
歯並びが悪いと、整った歯並びと比べて歯ブラシが隅々まで届きにくく歯垢が残りがちに。特にデコボコと歯が重なって生えている部分はブラシの毛先が届きにくいので磨き残しが多く、フラットな部分と比べて虫歯や歯周病のリスクが高いのです。また、歯並びが悪いと歯垢や食べカスがお口の中に留まりやすいことから細菌が増殖しやすくなり、口臭が強くなる傾向があります。
【出っ歯や開咬、口呼吸は唾液減少のリスクも!】
開口や出っ歯、口呼吸の傾向があることも虫歯や歯周病のリスクを高めます。鼻呼吸であれば平常時は口を閉じているのでお口の中は唾液で常に潤っていますが、唇が閉じにくい状態や口呼吸を続けていると口の中は常に乾燥状態に。お口の中を清潔に保つ唾液の恩恵を受けられなくなってしまいます。 唾液には口腔内の磨き残しを洗い流したり、歯の再石灰化を促進したり、傷の修復や食べ物を飲み込みやすくするなど、虫歯や歯周病の予防だけでなく、口腔内や全身の健康維持にとって大切な役割を担っています。ですが、口腔内が乾燥している状態ではこれら唾液の働きが機能しにくくなってしまいます。唾液が少なくなると細菌が停滞しやすくなることで虫歯や歯周病が進行しやすくなるばかりでなく、結果的に全身の健康にも影響を与える可能性があることを覚えておきましょう。
クリアな発音が難しくなる
歯と歯の間に隙間がある「歯間空隙(しかんくうげき)」や前歯が咬みあわない「開咬」は息が抜けやすく、発音が不明瞭になることがあります。特に「サ行」の発音に影響が出やすく、人前で話すことに抵抗を感じることがあるかもしれません。噛み合わせの状態によっては、出っ歯や受け口の場合も明瞭な発音が難しくなります。
消化器官への負担が増える
歯並びや咬みあわせが悪いと食べ物を噛み砕く効率が低下してしまいます。しっかりと噛むことが難しいため食べ物が丸のみになりやすく、結果的に胃腸への負担を増やしてしまいます。
顔のゆがみや身体の不調、顎関節症を招くことも
咬み合わせのバランスが悪いと左右の歯で均等に噛むことが難しく、一部分に負担が集中しやすくなります。その結果、口周囲の筋肉のアンバランスから顔のゆがみを生じたり、場合によっては顎関節症を招いたり、肩こりや頭痛などの全身の不調を伴う場合もあります。
「顎関節症」と呼ばれる疾患は、口が開けづらい、顎がカクカクする、音がなるなどといった症状のほか、首や肩の痛みや頭痛を伴う場合もあります。咬み合わせの悪さが直接的に顎関節症に結び付くとは限りませんが、慢性的な身体の不調が気になる方は一度かかりつけの歯医者さんまたは矯正歯科で相談すると良いかもしれません。
口元のコンプレックスで積極的になれない
口元を手で隠して笑ったり、歯を見せないスマイルで写真を取ったり、人前で話すことに抵抗を感じたりなど、歯並びのせいで上手く笑えないという方は多いようです。口元のコンプレックスが原因で自分に自信をなくしてしまい「積極的になれない」「人前で話せない」などコミュニケーションが難しく感じられることもあります。
歯並びの種類
歯並びには様々なタイプがあり、それぞれに特徴があります。歯並びの乱れは見た目だけの問題ではなく健康面にも影響を及ぼします。以下にて代表的な歯並びと咬み合わせをご紹介します。
歯がずれて(重なって)生えている・・・叢生(そうせい)
歯が互い違いに重なり合って生えている状態を「叢生」といいます。顎の大きさと歯の大きさのアンバランスが原因となって起こることが多く、小さな顎のスペース内に入りきらなかった歯がはみ出している状態です。
上顎の前歯が出ている・・・出っ歯・上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上顎前突は上の前歯が前方に傾斜し飛び出ている状態です。日常では「出っ歯」と呼ばれています。 上顎の前歯が前方に飛び出ているタイプと、下顎が小さく後ろに下がっていることで「出っ歯に見える」タイプがあります。早期に治療を開始することで顎骨の成長をコントロールし、上下の顎のバランスを整えることができます。
前歯が咬み合わない・・・開咬(かいこう)
開咬とは奥歯を咬み合わせても前歯が噛み合わず、上下の前歯に隙間がある状態です。前歯で上手に食べ物が咬み切れないばかりでなく、息が漏れやすく「さしすせそ」が上手に発音できません。
下前歯が上の前歯で深く隠れてしまう・・・過蓋咬合(かがいこうごう)
奥歯で咬むと前歯が深く咬み込み、下の前歯がほとんど見えなくなるくらい閉じてしまう状態です。これを放置しておくと、やがて下の前歯が上の前歯の裏側の歯茎に食い込むようになり、歯茎を傷めてしまうこともあります。また、上の前歯が下の前歯に突き上げられることで徐々に出っ歯になる可能性もあります(専門用語でフレーアウトとも言います)。
前歯に下の歯がかぶさる・・・交叉咬合 (こうさこうごう)
正常な咬み合わせであれば、奥歯を咬み合わせた時に上の歯は外側に、下の歯は内側に収まります。ところが交叉咬合はこれが逆になり、咬み合わせが左右に大きく崩れるため、顎や顔が曲がったように見えます。片側だけにズレが生じている場合と、左右両側にずれが生じている場合がありますが、いずれの場合も奥歯で物が噛みにくく、力を入れて食いしばることができません。幼児期の指しゃぶりや片側だけで咬む癖、頬杖などが原因として挙げられます。
歯の間に隙間ができている・・・すきっ歯・正中離開(せいちゅうりかい)
歯の間に隙間ができた状態です。常に息が抜ける事から、特にサ行やタ行の発音が不明瞭になることがあります。上の前歯の間に過剰な歯が生えていたり、左右の歯の大きさのアンバランスがあることなどから隙間ができることがあります。
このように不正咬合にも複数の種類があり、それぞれリスクが異なっています。自分の歯並びを把握して、リスクを理解しましょう。
まとめ
上記にて、歯並びが悪くなる原因やそのリスク、代表的な歯並びの種類についてご紹介してきました。「ご両親からの遺伝」など、避けては通れない先天性が原因の歯並びもありますが、日常的な癖の改善や適切な口腔ケアで歯並びの乱れを未然に防ぐことができることもご理解いただけたかと思います。
上記にてご紹介した歯並び・咬み合わせをヒントに口元を見てみましょう。少しでも、疑問や不安がある場合は歯医者さんに相談してください。歯列矯正の必要性についても教えてくれるはずです。
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