アンカースクリュー矯正って?
より精密に、効率よく! 非抜歯矯正の可能性を広げた治療
「アンカースクリュー矯正」は、顎の骨に小さなネジ(ミニスクリュー)やミニプレートを一時的に埋め入れて、歯列矯正で歯を動かす力の支点(固定源)にして、歯を効率的に動かす方法です。1990年代後半より、矯正歯科で行われはじめた治療です。まずは普通の矯正治療とアンカースクリュー矯正治療の違いについて見てみましょう。
【従来からの矯正法】 図1
従来法
図1 通常の矯正法
通常の矯正治療は、歯と歯に装置を付けてお互いに引っ張り合いをさせます。前歯と奥歯がお互いに近づいて、歯並び・かみ合わせを改善していきます。これは氷の上で人がお互いに綱を引っ張り合っているのと同じです。「ここで止まりたい」と思っても、うまく止まれません。前歯だけを動かしたくても、奥歯も引っ張り合う力の影響を受けて動いてしまいます。
矯正治療は歯のコントロールが非常に難しく、いかに精密に歯を動かせるかが、治療結果を左右します。
【アンカースクリュー矯正】 図2、図3
歯と歯が装置の力でお互いに引っ張り合って歯を動かしていく従来の矯正法に対して、アンカースクリュー矯正は、ミニスクリュー(図2)やミニプレート(図3)の小さなアンカースクリューを使って歯を引っ張ります。
たとえば、氷の上に杭を打ち、ロープを手繰り寄せていけば、その場所にぴったりと移動することができます。この杭の役割がアンカースクリューなのです。
想定した位置にしっかりと歯を動かすことができます。これを「予知性の高い治療」といい、精密でより良い治療結果が出せる方法です。アンカースクリュー矯正の出現により、従来法では治療が難しかった症例や、非抜歯で治療できる可能性が大きく広がり、治療期間が短縮されました。
アンカースクリュー矯正( Temporaly Anchorage Device : TAD )
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図2 ミニスクリューアンカースクリュー
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図3 ミニプレートアンカースクリュー
【治療例】 叢生をアンカースクリュー矯正で治療した症例
[症状] 開咬、著しい叢生、受け口 [装置・治療法] 裏側(舌側)矯正装置、ミニスクリュー [治療期間] 1年7ヵ月
上下の歯列の凸凹がひどく、受け口の患者様の治療例。
奥歯でかむと、前歯がかめない開咬もあります。
このような難易度の高い症例は、通常の矯正治療では、3年を越えるくらいの治療期間が必要です。
患者様は「できるだけ早く、キレイな歯並びになりたい」と希望され、アンカースクリュー矯正を行いました。
周囲の人から見えない「裏側(舌側)矯正」+「アンカースクリュー矯正」で、1年7ヵ月という短い期間で治療が完了し、とても喜ばれました。
※治療結果・効果は患者様によって個人差があります。
より進化したアンカースクリュー矯正とは
アンカースクリュー矯正の欠点を改善した矯正装置
アンカースクリュー矯正が普及しはじめた頃は、顎の骨折時に骨を繋ぐための固定用アンカースクリューなどをアンカースクリュー矯正に使用していました。現在では、より効率的で負担の少ない治療ができる装置・治療法の研究・開発が進んでいます。
アンカースクリュー矯正の今について、矯正治療用のアンカースクリュー装置を開発した、神宮前矯正歯科・iwi矯正歯科の斉宮康寛院長に解説いただきました。
【これまでのアンカースクリュー矯正のデメリット】
実はアンカースクリュー矯正は、一方向しか動かせないという欠点がありました。
上下・左右・斜め方向など、複雑で3次元的に歯を動かさなければいけない場合は、たくさんの矯正用アンカースクリューを植える必要がありました。
また、ネジ型のミニスクリューは、植える骨の位置や骨質などによって抜けてしまうケースもあります。
「少数のアンカースクリューで、どのような歯の動かし方でもできるようになることは、私たちが長く待ち焦がれた治療法なのです。」と斉宮院長。
【改良が進むアンカースクリュー矯正 i-stationの例】
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3次元で歯を動かすi-station
このようなデメリットを改善するため、アンカースクリュー矯正の治療法や補助装置の開発が進んでいます。
神宮前矯正歯科の斉宮院長を中心に開発されたi-stationもその一つです。
従来のアンカースクリュー矯正が一方向にしか動かせなかったのに対し、i-stationは3次元的に歯を動かすことを可能にしました。
これまで動かせなかった歯の動きが可能になり、治療の幅を大いに広げることができました。
- あらゆる方向に歯を動かせるので顎の骨を手術する
外科矯正をしないで矯正できる可能性が広がる - 2本のアンカースクリュー埋入本数で済む
- 骨が安定している口蓋(口の裏)にアンカースクリューを
植えることで、抜ける確率を大きく減らす - 治療途中にアンカースクリューを植え直さないでよい
- 裏側(舌側)矯正でも表側矯正でも使用できる構造
i-stationは日本だけでなく、アメリカ、中国、韓国で特許を取得しました。
世界のスタンダードとして、日本の技術を普及していきたいと考えています。
「アンカースクリュー矯正は、今後も、より患者様が快適に矯正できる治療法として発展が期待される治療法でしょう。」と斉宮院長はいいます。
アンカースクリュー矯正をお考えの方へ
歯科医院によっては、アンカースクリュー矯正の方法や治療計画が異なる場合があります。いくつかの医院のカウンセリングを受けて、ご自身が納得された方法で治療しましょう。
わからないことがあれば、積極的に歯科医院で聞きましょう。
治療の流れ・症例写真
治療方法や装置が改善されるのと同じように、検査・診断も、日々変化しています。
ここでは、CTと3次元シミュレーション診断を使った、神宮前矯正歯科の治療の流れをご紹介します。
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1. 初診・相談
歯並びを良くしたいと思ったら、まずはカウンセリングを受けてください。
悩んでいるならまずは相談しましょう。
矯正治療の流れや患者様の歯並びについてアドバイスいたします。
無料カウンセリングを行っている矯正歯科医院もありますので、受けてみてください。
きっと希望の光が見えるはずでしょう。 -
2. 検査
レントゲン、歯型、写真を撮り、総合的に診断を行い、治療計画を立てます。
【CT検査の役割】神宮前矯正歯科では、すべての患者様の精密検査でCT検査を行っています。2次元のデジタルレントゲンでは平面的に現像されるため歯と歯の像が重なっていて、細かいところまで把握できません。
CTでは立体的に把握でき、とても精密な診断ができるので、より納得された治療結果に結びつきます。 -
3. 診断
検査結果をもとに、お口の中の状態や、写真、治療方針が書かれた診断書をご用意して、患者様のお口の中の問題点やきれいに改善する治療方法をご説明いたします。
【CT検査の役割】患者様の歯型をコンピュータで3D画像で書き出し、矯正治療による歯の動きを再現したものを「3次元シミュレーション」といいます。
【参考】 抜歯矯正の3次元シミュレーション動画
治療中の歯の動き方をわかりやすく説明することができて、精密な治療計画が必要なアンカースクリュー矯正や裏側(舌側)矯正の診断に役立ちます。-
▲ 上顎の3Dシミュレーション
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▲ 正面の3Dシミュレーション
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▲ 下顎の3Dシミュレーション
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▲ 平行模型の3Dシミュレーション
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4. 契約・治療スタート
患者様が治療後のきれいな歯並びの状態を想像できて、ご提案した治療計画に納得されたら契約、治療の開始です。
治療中も、装置や歯磨き方法について、丁寧にご説明します。
何よりも大切なのは、ご心配なことはお話いただき、解消していただくことです。治療が始まってからも、何かあったら、いつでも相談できる矯正歯科医院であることを心がけています。
【治療例】 叢生をアンカースクリュー矯正で治療した症例
[症状]正中のズレ・開咬・受け口 [装置・治療法] 裏側(舌側)矯正、アンカースクリュー矯正(i-station) [治療期間] 1年半
治療前
どの矯正歯科医院や大学病院に相談に行かれても、「外科矯正が必要で、治療期間は3年以上かかる」と言われ、当クリニックに来院されました。
上の歯の真ん中が顔に対して左手側(向かって右側)へ、下の歯の真ん中が顔に対して右手側(向かって左側)へずれていました。(合計7ミリのズレ)開咬(上の前歯と下の前歯が噛み合わない)と、受け口があり、特に下の歯の左手側が、歯1本分前に出ていました。
また、右手側の奥歯のかみ合わせが反対でした。
患者様は入院が必要な外科手術をする治療法を望まなかったので、アンカースクリュー矯正(i-station)を用い、外科手術なしで矯正治療を行いました。
治療後
裏側(舌側)矯正、アンカースクリュー矯正で、1年半で矯正装置を外すことができました。
従来の矯正治療であれば、前歯の正中(真ん中の線)ズレを動かすのは、2~3ミリが限界ですが、アンカースクリュー矯正(i-station)では、7ミリのズレも解消することが可能です。
【症状の改善】
上の歯の中心と下の歯の中心が合いました。
開咬(上の前歯と下の前歯がかみ合わない)が改善し、受け口も改善しました。
また、右手側(向かって左側)の奥歯の噛み合わせ、左手側(向かって右側)の犬歯(前から3番目の歯)の位置のズレも改善されました。
※治療結果・効果は患者様によって個人差があります。
症例で使用した裏側(舌側)矯正「インダイレクト法」
▲ 神宮前矯正歯科オリジナルブラケットと従来のブラケットとの大きさの比較。
右、神宮前矯正歯科オリジナルブラケット
人に気づかれずに治療したい患者様が選択される「裏側(舌側)矯正」は、「治すのが難しい」、「表側矯正よりも綺麗にならない」と言われることがあります。
しかし、それは誤解です。そのような問題を解決するために、裏側(舌側)矯正の開発が進められてきました。
例えば、患者様の歯の模型上に矯正装置を着けた状態を作りあげ、それを患者様のお口の中へ装着するオーダーメイドの裏側(舌側)矯正「インダイレクト法」もその一つです。
これにより、精密に装置を装着でき、治療結果が向上しました。さらに神宮前矯正歯科ではオリジナルインダイレクト法を開発し、より精度を高くして、予知された治療結果の向上、治療期間の短縮に成功しました。
また、アンカースクリュー矯正と併用することで裏側(舌側)矯正は、症例を選ばず、綺麗に早く治療できるようになりました。
患者様に対する信念
「ともに歩み、素敵なハーモニーを」
斉宮康寛(いつきやすひろ)先生
歯学博士 歯科医師
山口県出身。東北大学歯学部卒業。
2001年医療法人社団スマイルクリエート「神宮前矯正歯科」、2010年「iwi矯正歯科(アイウィ矯正歯科)」を開業。
>>詳しいプロフィールはこちら
患者様に対する信念
私たちの治療目標は素敵な笑顔を作ることです。素敵な笑顔は患者様だけでなく、周りの方をも幸せにします。
そして、きちんとかみ合ったかみ合わせを作ることで、一生自分の歯でおいしく食事をしてもらいたいと願っています。
矯正治療とは、私たちと患者様とが共に作り上げるハーモニーのようなものだと思います。同じステージに立って、テンポを合わせなければうまくいきません。
苦しい時も楽しい時も一緒に歩んでいくことで、最後に素晴らしいハーモニーが生まれるのです。
笑顔という素敵なハーモニーです。ぜひ一緒に笑顔のハーモニーを創りませんか。
斉宮先生のアンカースクリュー矯正・裏側(舌側)矯正の開発・研究
日本では、「見えない矯正」「早くキレイになれる矯正」「歯を抜かない矯正」を希望される大人の患者様の要望がとても多いです。
そんな患者様の気持ちに応えた装置を開発して、世界に向けて革新を起こしたい―。その思いで7年の歳月を掛け、矯正用アンカースクリューやオリジナルの裏側(舌側)矯正装置、「オリジナルインダイレクト法」を開発し、これからも新しいことに挑み続けます。
オリジナルの矯正用アンカースクリューや、 裏側(舌側)矯正のインダイレクト法などについて、国内外の学会・研究会で発表しています。
>学会・発表の詳細はこちら
治療技術・院内環境・おもてなしへのこだわり
「ここに通ってよかった」と思っていただきたい
より快適な「矯正ライフ」を実現するため、外から見えない裏側(舌側)矯正(舌側矯正・見えにくい矯正)やアンカースクリュー矯正などの治療をご提供いたします。
ステキな環境で心地よい時間をお過ごしください。