矯正を途中でやめたい。途中でやめるリスクとその後とは
矯正治療をいざ始めてみたら思っていたのと違った、痛みが強くて耐えられない、やっぱり矯正しなくてもよかった、と思い始めた…など、矯正治療をやめたくなることもあります。
矯正治療を途中でやめるとどうなるのでしょうか。
やめたいからとすぐにやめることができるのでしょうか。
矯正を途中でやめるのには、大きなリスクが伴います。
リスクを知り、それでもやめるかを考えてみてください。
公開日:2023/05/29
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
矯正を途中でやめるリスク
矯正治療を途中でやめてしまうと、お口の中に大きなリスクが伴います。
まずはリスクをみていきましょう。
抜歯した部分が埋まらない
抜歯で歯を動かすためのスペースを作っている場合、矯正治療を途中でやめてしまうとその隙間は残ったままになります。
抜歯した部位にもよりますが、お口を大きく開けたときに隙間が見えてしまったり、空気が漏れているような話し方になることもあります。
歯と歯の間を削って隙間を作るIPR(ディスキング)をした場合は、抜歯による隙間ほどではありませんが、矯正中断で歯と歯の間の隙間が残ってしまうことになります。
歯並び・噛み合わせがより悪くなる
矯正治療では少しずつ歯を動かしており、正しい噛み合わせになることを最終地点として計画的に治療していきます。
矯正途中では目的の噛み合わせに歯を動かす段階で一時的に噛み合わせが悪い状態になっていることもあります。その時点でやめてしまうと噛み合わせが悪いままです。
また、歯がない部分に歯は傾きやすいので、抜歯した部分の両隣の歯が傾いて噛み合わせが悪くなったりと、矯正前より歯並びや噛み合わせが悪化する可能性があります。
残った隙間を埋めるためにインプラントや被せ物での処置が必要となり、費用が多くかかったり、被せ物のために健康な歯を削らなければならないかもしれません。
矯正治療を途中でやめても、その時点での歯並びをキープできるとは限らないことを覚えておきましょう。
治療費が無駄になる
矯正治療を自己都合で途中でやめる場合、返金されない可能性が高いでしょう。
治療には問題がなく、歯科医院との関係性にも問題がない場合は「患者さんの自己都合」での中断です。
患者さんの自己都合による治療の中断では費用の返金は難しく、高額な治療費を支払っただけになってしまいます。
また、抜歯をしている場合は被せ物やインプラントの費用が追加でかかり、想定以上の費用がかかることもあります。
治療を途中でやめると費用はどうなる?
矯正治療は自費診療であり、高額な治療費がかかります。
治療を途中でやめた場合、費用はどうなるのでしょうか。
返金されるのか、支払っていない分を支払う必要性はあるのか、など気になるポイントをご紹介します。
全額払い終わっている場合
一括で治療費を支払っている場合、契約に治療を中断したケースに関する記載があれば、それに準じて返金の取り扱いが決まります。
記載がなければ、歯科医院の判断にもよりますが多くの場合は返金されないと考えておきましょう。
また、契約内容に「治療を中断しても返金しない」という旨が書かれていれば、一切返金されません。
ですが、全額治療費を支払ったものの、一切の検査や診断、治療を受けていないというのであれば、返金される可能性は十分にあります。
その場合は患者さんはまだ一切の対価を受け取っていないためです。
では、精密検査や診断は受けたが矯正器具を装着していない場合はどうなるのでしょうか。
検査や診断を受け、治療を受けますと同意した時点で、矯正歯科側はあなたのために治療をする準備を始めています。
矯正器具をまだ付けていなくても、器具の注文や検査結果の精査など準備を始めたした時点で歯科医院には費用が発生していることが多いでしょう。
そのため、検査・診断の費用と矯正器具の費用を差し引いての返金になる可能性が高くなります。
分割払いをしている場合
分割払いの場合も同様に、まずは契約書の内容に従って返金対応がされます。
返金不可の場合は、治療を中断したあとも全額支払い終わるまで費用の支払いを続ける必要があります。
分割払いだからといって支払わなくていいことにはなりません。
支払いを勝手にやめれば、契約不履行ということで訴えられる可能性も考えられます。
矯正治療を中断して歯科医院へ行きづらい場合は振り込みにしてもらうなどして、最後まで支払いましょう。
一部返金の場合は、支払いが必要な金額とこれまで払った金額を確認してください。
支払わなくてよくなった額を確認し、支払いが足りていない場合は支払います。
逆に、支払うべき金額を既に支払った金額が超えている場合は、歯科医院から返金してもらいましょう。
医療ローンを使っている場合
医療ローンは、初めにローン会社が全額を歯科医院に支払っている仕組みです。
つまり、契約した時点で医療ローン会社から全額分の治療費を借りている状態です。
借りた分は返済が必要、よって歯科医院からの返金の有無に関わらずローン会社への支払いはなくなりません。
歯科医院からの返金がある場合は、歯科医院から直接患者さんへ返金されます。
ローン会社への返金ではない、という部分は要注意。
歯科医院から直接返金されたお金は、そのまま医療ローン会社へ支払ってしまいましょう。
矯正をやめた後はどうしたらいい?
矯正をやめた場合、やめっぱなしにしていいのでしょうか?
何か処置をうけたほうがよいのでしょうか。
抜歯している場合
矯正治療に伴って抜歯をしている場合は、歯を抜いたスペースが空いています。
このままにしていると、隣の歯が倒れてきたり寄ってきたりして、歯並びや噛み合わせが悪くなってしまいます。
また、歯列に隙間ができたままだと空気が漏れて発音が悪くなり、滑舌に影響することもあるのです。
そのため、抜歯をした箇所を人工歯などで補わなければなりません。
入れ歯やブリッジなどのほか、自費診療となりますがインプラントもあります。
矯正治療で適切な噛み合わせ、きれいな歯並びにしていれば、自分自身の歯を長持ちさせられる可能性が高いのに対し、歯を削ったりすると寿命が短くなる可能性もあることを理解しておきましょう。
抜歯していない場合
抜歯をせずに治療をしていた場合でも、矯正装置を外すと歯列が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起きることが想定されます。
それによって大きな歯並びや噛み合わせの乱れが起きて思わぬトラブルに発展する可能性もあります。
また、矯正治療の進捗次第では噛み合わせが悪い状態になっており、噛み合わせを調整するために歯を削る必要があるかもしれません。
矯正をやめる前にやってほしいこと
矯正治療に不満がありやめたいと思った場合、すぐに治療をやめるのではなくまずは以下のことを冷静に考えてみてください。
なぜやめたいのかを整理する
なぜ矯正治療をやめたいと思ったのか、その理由を整理してみましょう。
「口元の見た目が気になる」「毎月の支払いが多いと感じる」「毎日痛みがあって辛い」など、さまざまな理由があると思います。
次に、そのやめたい理由は治療を全部受けた後に解消できることかできないことか、なぜ気になるのか、など理由を深堀してみましょう。
よく考えてみたら今だけ我慢すればよいことで、今すぐにやめる必要はないかも…と感じる理由かもしれませんし、やっぱりどうしても我慢できない!と思うかもしれません。
どうしてもやめたい!と思うかどうか、やめたあとのリスクを考えてもやめたいかどうか、よく考えてみてくださいね。
歯科医師に相談する
次に、やめたい理由をはっきりと歯科医師に伝えて相談しましょう。
やめたいとは言いづらいかもしれません。
ですが、実はこの「相談する」というのは意外と大事なんです。
痛みが強いという理由であれば、ワイヤーの太さを調整することで解消できるかもしれません。
矯正器具の見た目が気になる場合は、器具の種類を変えることを提案してもらえることもあります。
お口の見た目の場合は、治療方針を変えることでより理想に近付ける治療ができる可能性もあるのです。
支払いが多い場合は、医療ローンの紹介や歯科医院独自の分割払いの提案など、毎月の支払いを安くできる方法を一緒に考えてもらえるかもしれません。
やめたい理由を解決できる提案をしてもらえたら、矯正治療を続けてもいいかな、続けられるかもな、と思うかも。
転院を考える
矯正治療を止めたい理由が「歯科医師とあわない」「予約が取れない」「歯科医院が嫌だ」というものであれば、治療をやめるのではなく歯科医院を変えてみてはいかがでしょうか。
転院先でさらに治療費の支払いが必要であったり、転院を受け入れてくれる歯科医院を探すのは大変かもしれませんが、治療を途中でやめるよりも最終的に良い結果が得られる可能性が高いでしょう。
また、矯正歯科医が複数在籍する歯科医院であれば、転院しなくても担当医を変更してもらうことで解決できる場合もあります。
矯正器具を外す
矯正装置を付けたまま治療を止めてしまい通院しなくなると、歯に矯正力がかかっているままのため、歯並びや噛み合わせがより悪くなってしまう可能性があります。
また、矯正装置で歯磨きもしにくいので虫歯や歯周病のリスクも高まります。
もう通院もしたくない、担当医の顔も見たくない!と思って矯正を中断するとしても、矯正器具は外してもらいましょう。
まとめ
矯正治療を途中でやめることはできます。
でも、そのときの健康上のリスクや、返金されない可能性などを考えると、可能であれば矯正治療を完了したほうがいいかもしれません。
やめたい理由と治療を最後まで受けたときのメリット、治療を中断するリスクを比較し、より自分自身のためになる方法を選択してみてくださいね。
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