歯列矯正をしたら正中がずれてきた! 仕方のないこと?治せるの?
矯正治療に関する相談で「矯正治療をしたのに正中がずれている」「正中を揃えてほしいと言ったらできないと断られた」という内容をよく目にします。
口元の見た目を治すために矯正した患者さんにとって、正中がずれているのは受け入れがたいですよね。
ですが、実は患者さんのいう「正中」と、矯正治療における「正中」で意味が異なることが多く見られるんです。
「正中を揃えてほしい」では、患者さんの希望が歯科医師に伝わっていないかも。
患者さんの気になる点を治すためにもまず「正中」とは何なのか?ずれているのは本当に「正中」なのか?を確認してみましょう!
ずれてしまう原因や治し方もご紹介します。
公開日:2022/01/24 更新日:2022/02/28
監修医師
記事監修:古川雄亮
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
正中とは
正中とは、物事の中心や真ん中のこと。
医学的には、ヒトの身体の右半分と左半分を等しく分けるような、左右の中心を指します。
理論上は左右の目の真ん中も、「歯の正中(上左右1番目の歯の間・下左右1番目の歯の間)」も「身体の正中」とぴったりと一直線上に揃うことになります。
しかし、ヒトの身体は完全に左右対称ではありません。
ヒトの成長は、目の位置や顎の発達に左右差が出ますし、歩き方の癖などちょっとした癖による差も生じます。
そのため、歯科医師は「身体の正中」と「歯の正中」を合わせることは難しいと考えたり、身体の正中に合わせるとかえってバランスが悪く見えるケースもあることから、身体の正中に合わせず、顔全体を見た時に違和感がない・揃っているように見える位置に揃えることもあります。
また、患者さんのいう「正中」は歯並びの真ん中のことではなく、歯並びの真ん中のラインと顔の真ん中のライン(人中)のことを言っていることもあります。そのため、矯正の精密検査では正中のずれに関して精査します。
歯科医師にとっての正中と患者さんの思う正中が異なるため、トラブルを招いているのかもしれません。
いずれにせよ「正中がずれている」状態はできればきちんと治したいですよね!
患者さんが思う「正中がずれている」を歯科医師に正確に伝えるために、大きく2つに分けられる正中のずれのパターンをみていきましょう。
”正中がずれている”には2パターンある
矯正治療で言われる「正中がずれている」は大きく分けて次の2つのパターンが多いようです。
1つ目は上下の歯列の正中が合っていないこと。
上の歯の正中(上左右1番目の歯の間)と、下の歯の正中(下左右1番目の歯の間)がズレているパターンです。
2つ目は歯列の正中と顔の正中(人中)が合っていないこと。
ヒトの顔は左右非対称なため、正中と歯列の正中が合わないことはよくあることなんだとか。
どちらの「正中がずれている」パターンかを確認し、歯科医師に伝えてみましょう。
ちなみに、2~3㎜の正中のずれであれば、他人に気づかれることはほとんどないと言われています。
ただし、前歯が真っ直ぐでなく、横方向に傾斜しているなどあれば、1mmでも気づかれる可能性もあるようです。
そのため、歯科医院では数㎜のずれは治療せず終わりにすることもあるようです。
気になる場合は、担当の歯科医師とよく相談してみてくださいね。
上記2パターン以外のずれだ!と思ったら、正中がずれていると伝えるのではなく、「こことここが合っていないのが気になる」と指さしなどで具体的に伝えてみると、歯科医師とのすれ違いが解消できるかもしれません。
歯列矯正で正中がずれる原因は?
矯正治療で歯並びを整えてもなぜ正中がずれてしまうのか?
正中がずれる原因を確認していきましょう。
歯の大きさが違う
上記でも記載した通り、ヒトの身体は左右非対称です。
目の大きさや手足の大きさ、耳の形や大きさなども左右で異なりますよね。
歯も同じで、左右の歯の形や大きさは異なります。
例えば、上の2番目の歯は小さくなる傾向がありますが、片方だけ歯が小さいと真ん中のラインが歯の小さい方向にずれます。
左右の歯の本数が違う
左右どちらかの歯を失っていたり、先天性欠損によって左右の歯の本数が違う場合、左右のバランスが異なります。
矯正治療で噛み合わせを考慮
矯正治療は見た目をきれいにするために受ける患者さんも多いですが、歯並びをきれいにすることで歯磨きをしやすくして虫歯を予防したり、噛み合わせを良くすることで歯や身体への負担を軽減する治療でもあります。
そのため、特に見た目よりも噛み合わせを優先して治療をする方針の歯科医院では、噛み合わせを整えるために正中が少しずれることがあります。
顎がゆがんでいる
顎骨の形がゆがんで左右で非対称になっていると歯列にも影響して正中がずれてしまいます。
顎のゆがみには遺伝的な要因もありますが、頬杖をつく、片方の歯だけで噛むといった癖があると、顎の成長のバランスが悪くなることもありますよ。
後戻り
矯正治療をした後、移動した歯が矯正前の位置に戻ろうとする「後戻り」。
後戻りによって上下歯列の正中線がずれてしまうことがあります。
矯正でずれた正中は治せるの?
上下の歯の正中がずれることや、顔と歯の正中がずれることは珍しくなく、数㎜であれば許容範囲であり、治さないケースも多いようです。
ずれが大きい場合やどうしても患者さんが治療したいという場合は、治療をすることは可能です。その少しのずれを治すために歯列全体を動かすことになるため、長期間かかることもあります。歯列矯正では歯を抜歯するなどして、正中を整えることは可能ですが、必ずしも矯正のみで正中を治せるとは限りません。
顎のゆがみや骨格が問題の場合は外科手術が必要であったり、歯の形や大きさが問題の場合は、セラミックなど被せ物を矯正後にする必要があることも。
また、その少しのずれを治すために歯列全体を動かすことになるため、長期間かかることもあります。
正中のずれが気になる方は、担当の歯科医師とよく相談して検討してくださいね。
まとめ
インターネットで医学用語や専門用語が簡単にわかる時代ですが、誤った意味で覚えて使ってしまうと、医師との意思の疎通ができずトラブルになることもあるので要注意ですね。
また、専門用語は状況に応じて意味が変わるものもあり、患者さんが使う時はよく確認してみるといいかもしれません。
また、他人から見て気が付かない程度のずれを治すために噛み合わせを犠牲にしたり、歯を削ってセラミックにすると歯の寿命が短くなってしまうことも。
正中を整えたい理由やデメリットをよく検討してみてくださいね。
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