インプラント矯正とは? 治療法・メリットデメリット
従来よりも早く歯を動かせる、大きく歯を動かせるなどといわれるインプラント矯正。
新しい治療方法と言われたり、アンカースクリューやインプラントアンカーなど別の呼び方をされることも多く、わかりにくいですよね。
インプラント矯正とは何か?
メリットデメリットはあるのか、希望すれば誰でもできる治療なのか、などインプラント矯正の基礎についてまとめました!
公開日:2022/01/11
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
インプラント矯正とは?
インプラント矯正は、インプラントアンカーという小さなネジを顎の骨に埋め込み、土台として歯を動かしていく矯正方法です。
従来のワイヤー矯正では歯の表面にブラケットを装着し、ワイヤーを通します。
ワイヤーのしなりや元に戻ろうとする力で引っ張ったり、圧力をかけたりすることで歯を動かしています。
ワイヤーとブラケットでは大きな力を歯に加えることはできず、少しずつ時間をかけて歯を動かしていました。
インプラント矯正では、顎の骨に小さなネジを埋め込んで固定。
アンカースクリューとブラケットにゴムをかけてつなぐことで一方向に力を加えることができるようになりました。
目標の歯並び・噛み合わせに到達させやすく、インプラントを使わないワイヤー矯正よりも早く歯の移動ができるんだそう。
「インプラント」というと、失った歯を補うためのデンタルインプラントが思い浮かびますが、矯正のインプラントはデンタルインプラントとは異なるものです。
歯を補うことはなく、矯正治療が終了したら埋め込んだ小さなネジは取り除きます。
もちろん、きれいに並んでいない歯を抜いて、正しい位置にインプラントを埋め込み歯並びをきれいに見せる方法とも異なりますよ。
インプラント矯正=アンカースクリュー
インプラント矯正は、歯科医院や歯科医師によって様々な呼び方がされています。
・インプラント矯正
・アンカースクリューを用いた矯正
・インプラントアンカーを用いた矯正
これらはどれも上記でご紹介した、矯正歯科治療用の小さなネジを顎の骨に埋め込み、土台として歯を動かす矯正治療方法のことです。
歯科医院のホームページや治療相談の際に、知っている呼び方と異なる呼び方をしていてもあまり心配になる必要はありません。
違う名前で呼んでいて不安に感じる時は、治療内容を聞いてみてくださいね。
稀に、「インプラント矯正をしたい」など患者さんから歯科医院に伝えるときに、呼び方が違うと伝わらないこともあるようです。
上の3つの呼び方を使っている歯科医院が多いので、伝わらない場合はほかの2つの呼び方を使ってみるといいかもしれませんよ。
インプラント矯正が適応されるケース
インプラント矯正は、「前歯だけを大きく後ろに移動させたい」「歯茎を目立たなくさせたい」といった治療の場合に適応されます。
上記でご紹介した通り、顎の骨に小さなネジを埋め込み土台とすることで、前歯だけに力を加えることができ、治療計画通りに歯を移動させやすいと言われています。
また、前歯の歯茎に埋め込むことで歯を歯茎側に引き上げることができ、歯茎が目立つガミースマイルの治療に用いられることもあります。
従来の方法では奥歯と前歯のワイヤー間の力の作用・反作用の法則で抜歯したスペースに動かしたくない奥歯が移動してきてしまうことがありましたが、インプラント矯正を適応することによって、奥歯が移動するのを防ぐことも可能に。
さらに、一番奥の奥歯をさらに奥に下げることもできるようになりました。
さまざまなお悩みを解決し、メリットが多く見えるインプラント矯正ですが、希望すれば誰もが受けることができる方法ではありません。
患者さんのお口の中の状態や治療計画によっては適応できないケースもあります。
例えば、アレルギー反応や埋め入れた後の痛みなどで顎の骨に小さなネジがうまく埋められない場合はインプラント矯正は適応されません。
歯科医院によっては、どうしてもインプラント矯正でなければ治療が難しい患者さん以外には使用しないことも。インプラント矯正には上記のようなデメリットもあるためです。
インプラント矯正のメリット・デメリットについては、下記でご紹介していますのでそちらを参考にしてみてくださいね。
治療期間が短くなるケースもある
インプラント矯正に惹かれる理由の多くは「治療期間が短縮されるから」という患者さんが多いようです。
たしかに、従来よりも力が加えられるため歯の効率的な移動が可能で、治療期間がトータルとして短くなると目にします。
実際に治療期間が早まるケースもありますが、歯を圧下したい・抜歯せずに奥歯を後ろに大きく下げたいなどの場合治療期間は短くならないこともあるので注意してくださいね。
インプラント矯正のメリット
さまざまなケースに対応できる
歯を早く動かすことができたり、大きく移動させることができるなどのメリットがあります。
また、従来のワイヤー矯正では解決できなかったお悩み(例:抜歯せずに前歯を後ろに下げたい、など)を解決できるケースも多いようです。
抜歯しなくて良い
ネジを埋め込む位置を調整すれば、前後・左右・上下のさまざまな方向から力を加えることができるため、従来では抜歯していたケースでも抜歯せずに治療できることがあるようです。
ピンポイントで歯を動かせる
従来の矯正治療では、奥歯と前歯で相互に力を加え合っていましたが、インプラント矯正にすることでネジから動かしたい歯にのみ力を加えることができるようになりました。
インプラント矯正のデメリット
一見メリットしかないようにみえるインプラント矯正ですが、実はデメリットも多くあります。
デメリットについてもよく検討し、インプラント矯正をするかどうか決断しましょう!
スクリューが安定しないことがある
歯茎や顎の骨の厚みによっては埋め込んだネジが安定せず、緩んだり抜けたりすることがあります(約3割の頻度で脱落するといわれています)。
何度もネジを埋め込んだり取り除いたりしなければならないことや、途中でインプラント矯正を諦めなければいけなくなることもあります。
歯根吸収する可能性がある
早く・大きく歯を動かせるのがインプラント矯正のメリットですが、適切な力以上を加えてしまうと、歯の根が吸収してしまったり、意図していない部分へと歯が移動してしまうことがあります。
ネジが目立つ・違和感がある
インプラント矯正のネジは顎の骨に埋め込みます。
奥歯の場合の多くは、頬側の歯茎の部分に打ちますが、場合によってはお口の中の天井部分(口蓋)に打つことも。
食べたり飲んだりするときに舌が当たり、違和感を感じることがあるようです。
また、ガミースマイルの改善のためには前歯の歯茎部分に打つこともあり、口角を上げて笑うとネジが見えてしまうこともあるようです。
衛生的に保たないと炎症を起こすことも
ネジの周りに歯垢や汚れがたまると細菌が繁殖し、歯茎が腫れたり出血することがあります。炎症によってインプラントが抜け落ちるリスクも。
インプラント矯正の際は、ネジの周りも念入りにきれいにしておく必要があります。
費用がかかる
インプラント矯正は、別途費用がかかる歯科医院がほとんどです。
小さなネジを埋め込むためのオペ代などが必要になることもありますので、インプラント矯正を行いたい場合は事前に確認しておきましょう。
まとめ
インプラント矯正は抜歯をせずに矯正ができる、治療が早く終わるなど矯正治療の幅が広がりメリットも多くある治療ですが、脱落時の埋め直しや治療計画の変更などのデメリットも多くあります。
治療が早く終わる、というメリットだけでインプラント矯正を検討している方は、ぜひデメリットも知って検討してみてください。
また、患者さんがインプラント矯正を希望しても、お口の中の状態や治療方針によっては適応されないことも。
まずは担当の歯科医師とよく相談してみてくださいね。
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