歯列矯正中に楽器演奏はできる? 影響・痛み・矯正方法について
吹奏楽では歯の問題は非常にデリケート。
歯並びが気になるから矯正治療したいけれど、楽器が吹きにくくなると聞いて躊躇している……という方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
とりわけ管楽器の場合は演奏の際に口を使うことが要求されるため、矯正器具との関係性は、より密接なものとなります。
今回は、歯列矯正を行っている最中に楽器の演奏を行う場合に生じる影響について、具体的に紹介します!
公開日:2021/11/15
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
楽器演奏と歯並びの関係
管楽器の場合は前歯が立っているほうが、演奏が行いやすくなる傾向にあるんだとか。
そのため、出っ歯や受け口の度合いが強い人は、演奏する際にはやや不利となってしまうと考えられています。
また、歯並びが悪い場合は、息を吹き込む際に理想的な口の形が作りづらくなったり、マウスピースに真っ直ぐ口を当てられない可能性もあります。
そうなると、思い通りに息を吹き込むことが難しく、演奏の上達にも影響が出るでしょう。
具体的には、カップ型のマウスピースを用いる、トランペットやトロンボーンといった金管楽器の場合は、比較的歯並びの影響が大きくなります。
その他にも、リードを持つクラリネットやオーボエを演奏する際には唇を巻き込むため、前歯の歯並び次第では、痛みを感じることもあるようです。
一方で、弦楽器やピアノであれば基本的には演奏に口が関係しないため、矯正中でもほぼ問題なく演奏が可能です。
ただ、バイオリンやビオラの場合は、演奏中に楽器を顎で抑えるため、歯並びや嚙み合わせといった要素が、演奏に影響を及ぼす可能性はあります。
矯正中も楽器演奏はできる?
結論から言うと、矯正治療中でも楽器の演奏はできますよ。
ただし、矯正装置を付けると、矯正治療前と同じような感覚で口元の形を作ることは少し難しくなります。そのため、慣れるまでは演奏中に違和感を感じるでしょう。
個人差はありますが、矯正装置をつけての演奏に慣れるためには1ヵ月以上の時間がかかるようです。
重要な発表会や演奏会、音楽学校の受験といったイベントや、部活における大切な時期が間近に迫っているなど、タイミングを調整して矯正治療を開始することがおすすめです。
もしくは、楽器演奏に影響が出にくい矯正方法を選ぶこともおすすめです。
唇に器具が当たらない「裏側矯正」
矯正治療には、歯の表に矯正器具を設置する「表側矯正」だけでなく、歯の裏側に器具をつける「裏側矯正」という治療法があります。
矯正器具が目立つことが嫌で選ぶ患者さんが多い方法ですが、裏側矯正は楽器演奏する方にとっては大きなメリットがあります。
裏側矯正では、表側矯正とは異なり、演奏する際に楽器に矯正器具が当たる心配がないのです。
そのため、演奏中に唇が痛くなることは避けられます。
リードやマウスピースを吹く時の影響も少なくて済みますよ。
ただし、裏側矯正では演奏時に舌に矯正器具が当たることが多々あります。
場合によっては、舌の動きによって音を切るタンギング等の演奏法が行いにくくなるケースも。
また、歯を動かす痛みは表側矯正と同じため、痛みによる口の動かしにくさなどは感じてしまうかもしれません。
取り外しができる「マウスピース矯正」
マウスピース矯正であれば、演奏をするときにマウスピースを外すことができます。
マウスピースを外してしまえば、演奏への影響はなくなります。
ですが、マウスピース矯正は1日20時間以上のマウスピースを装着する方法です。
多くの場合は、食事とお口のケアなどで1~2時間はマウスピースを外してしまうので、演奏できる時間は1~2時間程度となってしまいます。
それ以上長時間外していると、マウスピース矯正の効果を得ることが難しいのです。
また、歯を動かしていると動きによっては歯と歯の間の隙間がマウスピース矯正でも発生します。
歯と歯の間の隙間からの息漏れが気になることはありそうですね。
歯列矯正が楽器演奏に与える影響とは
そもそも、なぜ歯列矯正をすると楽器演奏が難しくなるのでしょうか?
歯列矯正が楽器演奏に与えるとされる影響についてご紹介します。
①痛みが気になって吹けない
矯正治療は、持続的かつ弱い力を加えて歯を動かす治療です。
そのため、歯に加わる力が痛くて最初の数日間は食事をとるのすら辛いという患者さんも。
また、矯正器具が唇にあたって痛くて吹くことができないケースや、矯正器具によってできた唇付近の口内炎が痛むことも。
矯正期間中は、さまざまな痛みに悩まされる患者さんが多いようです。
②器具が当たる
矯正器具が唇にあたるだけではなく、楽器に当たってしまうことも。
マウスピースやリードと直接ぶつかり、思うように吹けないことがあるようです。
矯正器具があたることで、楽器に傷がついてしまう危険性もあります。
自分の身体に当たるのとは別の方向性で、違和感が生じやすい部分にもなってしまいます。
③違和感がある(高音がでにくい)
矯正装置を接着すると歯の形態も変化してしまうため、マウスピースが楽器に当たる位置や、周囲の筋肉バランス等に変化が生じる可能性もあります。
その影響で思い通りの音が出せなくなってしまうケースもあります。
④抜歯部から空気が漏れる
歯を抜いてできた隙間から空気が漏れてしまい、演奏がしにくくなることが。
また、抜歯をしなくても歯と歯の間を少し削ることで空気が漏れてしまうことがあります。
歯並びが整うにつれて隙間はなくなりますが、それまでの期間は演奏に影響が出るかもしれません。
また、隙間から息が漏れる間と歯並びが整ってからでは演奏する感覚が異なり、都度都度調整しながら演奏を続けなければいけないようです。
矯正を始めるタイミングが大切
全く違和感のない矯正治療はありません。
例えば、コンサートや音大受験といった重要な節目が控えているようであれば、それらの行事が終わってから矯正治療を始めることがおすすめです。
また、早く矯正治療を始めて早く終わらせたい、と楽器演奏中に急いで矯正治療始めても、楽器演奏に影響が出ないように進めると通常よりも期間が長くかかることも。
部活など終了する期限が決まっているのであれば、終了してから矯正治療を始めてもいいのではないでしょうか。
まとめ
矯正治療を行いながら演奏を行うためには、ある程度の慣れが必要になってきます。
また、楽器の種類や演奏方法、演奏する楽曲などによっても矯正治療で出る影響は異なるようです。
また、矯正歯科医は楽器演奏経験者でないことが多く、大丈夫と言われて始めたのに違和感や痛みが強くて耐えられないという経験をした方も目にします。
楽器演奏中に矯正治療をする場合は、まずは担当の歯科医師に楽器演奏をすること、なんの楽器を演奏しているのかなどを詳しく伝えるようにしましょう。
もしも歯科医師が楽器演奏に理解を示さない場合は、楽器演奏中の矯正治療の取り扱いのある歯科医院を選ぶのもおすすめです。
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