金属アレルギーの人も矯正治療はできる?

金属アレルギーの人も矯正治療はできる?

矯正歯科治療に使用されるブラケットやワイヤーを始め、その他の矯正器具にも、金属アレルギーの症状を起こす可能性があるニッケルやクロム、コバルトなどの金属が使用されています。

では、金属アレルギーを持っている場合は矯正歯科治療を受けることはできるのでしょうか?

金属アレルギーの方も、矯正器具や矯正方法を選べば矯正治療を受けることができる可能性があります。
金属アレルギーをお持ちの方が矯正治療を受けるためのポイントについてご紹介します。

監修医師

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

目次

  1. 金属アレルギーの方が矯正治療を受ける方法
  2. 矯正器具は金属製が多い
  3. 金属アレルギー検査が必要かも
  4. 重度金属アレルギーの場合の矯正治療方法
  5. 矯正治療で金属アレルギーになった?

金属アレルギーの方が矯正治療を受ける方法

金属を使用する矯正器具は多々あり、金属アレルギーを持つ方が使用すると、器具と口腔粘膜が接触して痛み、腫れや赤く炎症を起こす可能性があります。
早く症状が現れる場合もあれば、後になって慢性的に症状が続く場合も。

では、金属アレルギーの人は矯正治療が受けられないのでしょうか?

残念ながら、全ての人が矯正治療を受けることができるとは言えませんが、矯正治療を諦める必要はありません。

治療方法や器具を選ぶことで、矯正治療を受けることができる可能性があります。
近年は矯正器具の中でも、金属アレルギーを起こしにくい素材や、金属以外の素材でできたものも多くあるのです。

例えば、ブラケットとワイヤーを使う矯正治療でも、セラミックやプラスチック素材のブラケットがあります。
そして、金属アレルギーの原因となりにくいチタン製のワイヤーなどを使用することも可能です。

その他にも、ワイヤーやブラケットを使わず、ウレタン樹脂などプラスチック製のマウスピースを用いて矯正治療をする「マウスピース矯正」もメジャーになってきていますね。

ただし、セラミック製やプラスチック製のブラケットなどは審美的に目立ちにくいことから、金属製の矯正器具よりも費用が高くなってしまいます。

また、マウスピース矯正は適用症例が少なく、患者さんの歯並びや咬み合わせによってはマウスピース矯正では矯正治療ができないケースもあります。

矯正器具は金属製が多い

矯正治療でよく使われるのが、ブラケットとワイヤーです。これは、歯一本一本の表側または裏側にブラケットという器具を歯にくっつけて、そこにワイヤーを通して少しずつ歯に力を加えて移動させるという使い方をします。

矯正器具と聞いて、まず最初にこのワイヤーやブラケットをイメージする方が多いでしょう。
また、ブラケットなどを外したりワイヤーを曲げたりするときには、プライヤーという器具を使います。

これらはいずれも金属製のものが多いのです。

そのほかにも、輪っか状の金属製のバンドを奥歯に取り付けてワイヤーを通すこともあります。
矯正後の歯の後戻りを防ぐ固定式のリテーナー(保定装置)も金属製のものがあります。

これらの矯正器具にはニッケルやクロム、コバルトなどの金属が含まれている場合があるのです。

金属アレルギー検査が必要かも

アレルギーが出にくいと言われる金属を使用して矯正治療を行う場合でも、金属アレルギーが起こらないと言い切ることはできません。

重度の金属アレルギーを持っている方や、自分がどの金属アレルギーに当てはまるのか不明な方は、まずパッチテストなどの検査を受けることをおすすめします。

また、今は症状が出ていなくても急に金属アレルギーを発症する場合もあるため、身体への影響が心配な方は事前に皮膚科などで調べると良いでしょう。

重度金属アレルギーの場合の矯正治療方法

チタンや金属アレルギーの炎症が起こるリスクが低い金属を使ってもアレルギーが出る場合は、ブラケット・ワイヤー・バンドなどの矯正装置を使用しての矯正治療は難しいでしょう。

この場合、近年流行している「マウスピース型矯正装置」での治療を検討してみてはいかがでしょうか。

マウスピースを使う矯正治療は、金属を全く用いない透明なマウスピースを装着して、少しずつ歯を移動させます。
一定期間装着して歯が移動できたら、新しいマウスピースに交換してまた徐々に歯を動かしていくという方法です。

ワイヤーなどによる矯正治療に比べてマウスピースの交換の手間や時間はかかりますが、きちんと装着し続けることで歯を整えていくことができます。

ただし、マウスピース型矯正装置は、適用症例が限られています。
叢生(そうせい)という歯がデコボコに生えている状態では、歯の移動距離が大きいために、マウスピースでは対応できない場合もあるのです。

また、矯正治療に際して抜歯が必要な場合、抜いたスペース分歯を動かす必要があり、マウスピースでは歯を上手く移動させるのが難しいといわれています。

マウスピース矯正で問題なく治療できますと言われたのにも関わらず、治療終了時に理想の歯並びになっておらず、隙間があいたままだった、噛み合わせがあっていなかったなどというトラブルも報告されています。

マウスピース型矯正装置を適応できるかどうかは歯科医師とよく相談しましょう。

矯正治療で金属アレルギーになった?

今まで金属アレルギーの症状が出ていない方でも、金属を含む矯正器具を装着することで、金属アレルギーが誘発されることは実際にあるとされています。

ただし、必ずしも「矯正器具を付けたから発症した」とは言い切れません。

金属アレルギーは、年々金属が体内に蓄積することで発症すると言われており、普段身に付けているピアス・ネックレスなどのアクセサリーや、虫歯治療などを行った際に用いた歯科金属が原因のこともあるのです。

金属アレルギーを持つ方も、矯正治療による金属アレルギーの発症を心配する方も、自分にとって最適な矯正治療を見つけられるよう、まずはしっかりと歯科医師のカウンセリングを受けましょう。

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