歯列矯正が公的医療保険適用になるには条件がある?費用を抑える方法も

歯列矯正 公的医療保険適用 条件

「歯並び(噛み合わせ)を良くしたいので、歯列矯正を受けたい。歯列矯正は公的医療保険の適用外という話を聞き、確認したい。」そんな悩みをお持ちの方はいませんか。

公的医療保険が適用されるケースはありますが、いくつかの条件があります。今回は、公的医療保険を適用して歯列矯正を受けられる3つの条件、公的医療保険適用で治療を受けられる歯科医院の探し方、公的医療保険適用外となる歯列矯正の費用を抑える3つの方法を紹介します。

監修医師

歯科医師 古川雄亮先生

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

目次

  1. 歯列矯正は基本的に公的医療保険適用外
  2. 歯列矯正が公的医療保険適用になるための条件
  3. 歯列矯正にかかる費用|公的医療保険適用と公的医療保険適用外を比較

この記事の要約

・歯列矯正は基本的に公的医療保険の適用外で、公的医療保険を適用するには特定の条件を満たす必要がある
・先天的な疾患による噛み合わせの異常がある、3本以上の歯が生えないことで噛み合わせに異常がある、顎変形症の影響で噛み合わせに異常がある場合、公的医療保険が適用できる
・公的医療保険の適用外でも、医療費控除を申請し、デンタルローンやクレジットカードの分割払いを行うと、治療費の負担を軽減できる

歯列矯正は基本的に公的医療保険適用外

基本的に歯列矯正は公的医療保険の適用外です。公的医療保険はケガや病気の治療に対する経済的負担を軽減するための保険です。矯正治療は必ずしも治療が必要なわけではなく、審美面の改善が主な目的で受けることも多いです。
矯正治療が公的医療保険の適用外となることで、矯正治療費に加え、カウンセリングや検査費用、診断料、調整料も全て自己負担となり、高額になりやすい点に注意が必要です。

歯列矯正が公的医療保険適用になるための条件

公的医療保険を適用して歯列矯正を受けるには、特定の条件を満たす必要があります。この項目では、公的医療保険を適用したうえで歯列矯正が可能になる3つのケースを詳しく解説します。

先天的な疾患による噛み合わせの異常

先天的な疾患による骨格的異常に伴う噛み合わせの異常のある患者さんは公的医療保険を適用し矯正治療を受けられます。「厚生労働大臣が定める疾患」に該当すれば、公的医療保険診療の対象です。

「厚生労働大臣が定める疾患」の詳細は、下記の通りです。

唇顎口蓋裂
ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む)
鎖骨頭蓋骨異形成
トリーチャ・コリンズ症候群
ピエール・ロバン症候群
ダウン症候群
ラッセル・シルバー症候群
ターナー症候群
ベックウィズ・ウイーデマン症候群
顔面半側萎縮症
先天性ミオパチー
筋ジストロフィー
脊髄性筋委縮症
顔面半側肥大症
エリス・ヴァンクレベルド症候群
軟骨形成不全症
外胚葉異形成症
神経線維腫症
基底細胞母斑症候群
ヌーナン症候群
マルファン症候群
プラダー・ウィリー症候群
顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む。)
大理石骨病
色素失調症
口腔・顔面・指趾症候群
メビウス症候群
歌舞伎症候群
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
ウイリアムズ症候群
ビンダー症候群
スティックラー症候群
小舌症
頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)
骨形成不全症
フリーマン・シェルドン症候群
ルビンスタイン・ティビ症候群
染色体欠失症候群
ラーセン症候群
濃化異骨症
6歯以上の先天性部分無歯症
CHARGE症候群
マーシャル症候群
成長ホルモン分泌不全性低身長症
ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群及びXXXXX症候群を含む。)
リング18症候群
リンパ管腫
全前脳胞症
クラインフェルター症候群
偽性低アルドステロン症
ソトス症候群
グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
線維性骨異形成症
スタージ・ウェーバ症候群
ケルビズム
偽性副甲状腺機能低下症
Ekman-Westborg-Julin症候群
常染色体重複症候群
巨大静脈奇形(頸部口腔咽頭びまん性病変)
毛髪・鼻・指節症候群(Tricho Rhino Phalangeal症候群)
クリッペル・ファイル症候群(先天性頸椎癒合症)
アラジール症候群
高IgE症候群
エーラス・ダンロス症候群
ガードナー症候群(家族性大腸ポリポージス)
その他顎・口腔の先天異常

引用:日本矯正歯科学会

3本以上の歯が生えないことによる噛み合わせの異常

3本以上の永久歯が生えていないと、噛み合わせに異常が生じることがあります。この状態を改善するために、歯茎を切開して埋もれている歯を引っ張り出す処置である「埋伏歯開窓術」という手術が必要であると判断された場合は、公的医療保険を適用し矯正歯科治療を受けることが可能です。

顎変形症の影響による噛み合わせの異常

「顎変形症」とは、上顎・下顎の大きさや形に異常が生じ、噛み合わせに異常が起こる病気です。顎変形症の影響によって歯の噛み合わせに問題が生じている場合、顎の骨を矯正するために手術が必要となるケースが多いです。

手術をしなければ矯正できない場合、手術前後に矯正治療が必要になります。顎変形症を改善するための手術前後の矯正治療に公的医療保険の適用が可能です。

→顎変形症の手術をわかりやすく説明しているこちらの動画、【顎変形症の手術がよくわかる】サージェリーファースト(受け口編)もご覧ください。

歯列矯正を公的医療保険適用で受ける場合の歯科クリニックの条件

歯列矯正 公的医療保険適用 条件

公的医療保険適用の矯正治療は、全ての歯科医院で受けられるわけではありません。厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生(支)局長に届け出た公的医療保険医療機関のみが行えます。

探す手順ですが、地方厚生局の公式サイトにアクセスし、患者さんの居住地にある地方厚生(支)局を選択します。そこからサイト内検索で「施設基準届出受理医療機関名簿」と入力し、該当する地域の「届出受理医療機関名簿」を開いて、咬合異常の公的医療保険治療に対応できる「矯診(きょうしん)」、顎変形症の公的医療保険治療に対応できる「顎診(がくしん)」という記載のある医療機関を探してみましょう。

歯列矯正にかかる費用|公的医療保険適用と公的医療保険適用外を比較

歯列矯正の費用は、矯正治療の種類で大きく変わります。全体矯正の場合の相場は、ワイヤー矯正(表側矯正)が60~130万円、裏側矯正が100~170万円、ハーフリンガル矯正が80~150万円、マウスピース矯正が60~100万円です。

公的医療保険を適用したうえで矯正治療を受けられる状況であれば、必要な費用を大きく抑えられます。公的医療保険適用時の治療費の相場は、ワイヤー矯正(表側矯正)が基本的に選択でき、手術や入院を含めて60~80万円かかります。マウスピース矯正は公的医療保険の適用外となるので注意しましょう。

2024年11月 株式会社メディカルネット調べ

公的医療保険適用外の歯列矯正の費用を抑える方法

矯正治療が公的医療保険の適用外となった場合、治療費は高額になりがちです。公的医療保険の適用外でも、歯列矯正の費用を抑える方法はあります。支払いの負担を減らす具体的な手段は、以下の3種類です。

医療費控除

医療費控除とは、1年間で支払った医療費が一定以上の額に達した場合、確定申告の際に所得税の還付を受けることができる制度です。総所得が200万円以上の人は10万円以上、総所得が200万円未満の人は総所得の5%にあたる金額まで医療費控除が受けられます。

医療費控除の対象には歯列矯正も含まれるため、医療費控除によって、矯正時の金銭的負担を軽減できます。*矯正治療の目的が審美面の改善なら、医療費控除の対象にはならない点に注意が必要です。

デンタルローン

デンタルローンは歯科治療用のローンです。歯列矯正を含めた歯科治療の費用は高額になりがちですが、デンタルローンを利用することで、治療費の分割払いを行うことができます。さらに、クレジットカードでの支払いやカードローンに比べて、デンタルローンは金利が低いことが多いのも大きな特徴です。

デンタルローン利用時に審査を受ける必要があり、審査に合格しないと利用できません。歯科医院によってデンタルローンが使えないケースがあることも注意しましょう。

クレジットカードの分割払い

クレジットカードの分割払いで月々の支払い負担を減らせます。クレジットカードを所持している場合、支払いにあたってデンタルローンのような追加の審査は必要ありません。場合によってはクリニックで支払いを行った後、分割払いに切り替えることができる点もポイントです。

クレジットカードの場合はポイントが貯まることも多く、高額な支払いが必要な歯列矯正では多くのポイントを獲得できるでしょう。
クレジットカードの利用の時、金利や手数料が発生し、最終的な支払い額は一括で支払った場合よりも多くなることに留意しましょう。

まとめ

歯列矯正は、基本的に公的医療保険の適用外です。ただし、先天的な疾患による噛み合わせの異常、3本以上の歯が生えないことによる噛み合わせの異常、顎変形症の骨格的な影響による噛み合わせの異常にに関しては、例外的に公的医療保険を適用したうえで矯正治療を受けられます。

公的医療保険適用で治療を受けられない場合も、医療費控除、デンタルローン、クレジットカードの分割払いなどを利用して、治療費の負担を抑えられます。

公的医療保険が適用されるか否かも含め、歯列矯正の費用についてわからないことがあれば、矯正歯科クリニックの無料カウンセリングを活用したり、矯正歯科ネットの相談室などを利用し、専門医の意見を参照することをおすすめします。

【PR】フィリップス ソニッケアー
歯科専門家使用率NO.1

フィリップス・ジャパン

あわせて読みたい記事

メディア運用会社について

メディカルネット

株式会社メディカルネット(東証グロース上場)は、より良い歯科医療環境の実現を目指し、インターネットを活用したサービスの提供にとどまらず、歯科医療を取り巻く全ての需要に対して課題解決を行っています。

当サイト「矯正歯科ネット」を通して生活者に有益な医療情報を歯科治療の「理解」と「普及」をテーマに、自分に最適な歯科医院についての情報や、歯の基礎知識、矯正歯科などの専門治療の説明など、生活者にとって有益な情報の提供を目指しています。

矯正歯科歯科医院を探すなら「矯正歯科ネット」

矯正歯科治療を行なっている歯科医院を、全国から簡単に検索できます。お近くの矯正歯科歯科医院をお探しの場合にもぜひご活用ください。