矯正装置の種類を解説!特徴やメリットデメリットとは

矯正 装置 種類

「矯正治療を受けようと思ったものの、どの矯正装置を選んだらいいか分からない」「矯正装置にはいろいろな種類があるみたいだけど、自分に合う装置はいったいどれなんだろう?」そんな悩みをお持ちの方は多いでしょう。

矯正装置には多くの種類がありますが、患者さんの年齢や症状によって、選択すべき矯正装置は変わります。今回は、患者さんを「大人」と「子供」に分けて、よく用いられる7種類の矯正装置の概要と、メリット・デメリットを紹介します。

監修医師

歯科医師 古川雄亮先生

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

目次

  1. 大人の矯正装置の種類
  2. 子供の矯正装置の種類
  3. まとめ

大人の矯正装置の種類

大人になってからの矯正では、使用できる矯正装置の選択肢が子供に比べて少なくなります使用できる矯正装置としては、以下の3種類です。

マルチブラケット装置

マルチブラケット装置は、「ブラケット」と呼ばれる矯正器具を歯に装着した後でワイヤーを通し、歯を動かしていく矯正治療です。単に「ワイヤー矯正」と呼ばれることも多く、歯列矯正の中で最も多く用いられています。

マルチブラケット装置のメリット

マルチブラケット装置は歯を3次元的に動かし、、幅広い症例に対応できます。他の矯正装置が適応できない症例であっても、マルチブラケットであれば矯正治療が可能になる点は大きなメリットです。

マルチブラケット装置のデメリット

マルチブラケットを装着したら、矯正治療中は自分で取り外すことができません。食事や歯磨きの際に装置が邪魔になり支障をきたします。加えて、お口の中に汚れがたまると虫歯や歯周病の原因となるため、しっかりとしたセルフケアが必要になります。

また、人によっては矯正装置によって、お口の中に痛みや違和感が生じたり、お口の中が傷ついてしまうこともあります。他にも、ブラケットが表側にある場合は、外から見て目立ちやすくなるため、見た目を気にする方にとってはマイナスです。

マウスピース型矯正装置

矯正装置

マウスピース型矯正装置は、その名の通り透明なマウスピースの形をした矯正装置です。1つのマウスピースを使い続けるわけではなく、定期的にマウスピースを新しいものに変更し、理想的な歯並びを実現するために歯を動かしていく点が特徴です。

マウスピース型矯正装置のメリット

マウスピース型矯正装置は取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際に邪魔になることがありません。また、取り外した後に装置自体のお手入れを行うことも容易なため、お口の中の汚れ(プラーク)による虫歯や歯周病の発生リスクを減らすことができます。

また、矯正治療には透明な素材を用いるため、矯正装置が目立ちにくい点も特徴です。材質に金属が含まれないため、金属アレルギーを持っている人でも矯正治療が可能で、矯正治療に伴う痛みや違和感が比較的少ないといわれてます。

マウスピース型矯正装置のデメリット

マウスピース型矯正装置は、歯を動かす力がマルチブラケット装置に比べて弱いため、症例によっては対応できないものがあります。マルチブラケット装置と比べると、歯の動くスピードが遅く、治療にかかる期間も長くなってしまうことが多いです。

取り外しがいつでも可能であるとはいえ、矯正治療中は1日約20~22時間程度の装着時間を守る必要があります。さらに、食事のたびに取り外す手間があったり、定期的にお手入れを行う必要があるため、患者さんには高い自己管理能力が求められます。

歯科矯正用アンカースクリュー

歯科矯正用アンカースクリューとは、「アンカースクリュー」と呼ばれるチタン製の小さなネジを歯茎の中の骨に埋め込んで、埋め込んだネジを土台にして歯を引っ張り歯を動かしていく矯正治療のことを指します。

歯科矯正用アンカースクリューのメリット

歯科矯正用アンカースクリューを使って顎骨に土台を作ることにより、動かしたい歯だけを移動させることができます。また、抜歯が必要になる歯並びに対しても、抜歯せずに矯正治療を受けることができるケースもあります。

上下左右の全ての方向から歯を引っ張ることができるため、スクリュー無しでは難しい方向に歯を移動させることができます。難易度の高い症例に対しても治療が可能である点もアンカースクリューのメリットです。

歯科矯正用アンカースクリューのデメリット

歯科矯正用アンカースクリューを埋め込むためには、簡単な外科手術が必要になります。場合によっては歯科矯正用アンカースクリューが緩んできたり、脱落してしまうこともあるため、その場合は再び埋入する処置が必要です。

埋入後に適切なケアを行わなかった場合は、歯科矯正用アンカースクリューの周りで腫れや痛みが発生することがあります。一時的なものであれば自然と症状は治まりますが、術後の処置が適切でなかった場合は、感染症を引き起こしてしまう可能性もあります。

子供の矯正装置の種類

子供は大人に比べて歯を動かすことが比較的容易になります。以下の4種類の治療法を紹介します。

ムーシールド

ムーシールドは、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている「受け口」を改善するために用いられるマウスピース型の矯正装置です。歯が生え変わる前の時期に利用され、就寝時に装着することによって、適切な歯並び、顎の位置へ誘導します。

ムーシールドのメリット

ムーシールドを用いる治療では、外科治療や抜歯の必要がありません。また、治療中の痛みもほとんどないため、幼児期の子供であっても安心して使用することができます。治療費が比較的安価で済む点もメリットの一つです。

そして、ムーシールドは取り外しが可能な矯正装置であり、装着する必要があるのは就寝中だけです。食事や歯磨きを行う時や、人前に出るタイミングではムーシールドは外すことができるため、日常生活を送る上で悪影響がない点も大きな特徴となっています。

ムーシールドのデメリット

ムーシールドで対応できるのは受け口のみで、それ以外は対応できません。また、永久歯が生え揃う前にしか受けられない治療であるため、適応期間も限られます。加えて、治療後に成長によって再治療が必要になる場合もあります。

虫歯菌の働きが活発になりやすい就寝中にマウスピースの装着が必要になるため、お口の中が不衛生になりやすくなります。虫歯や歯周病のリスクが高まりやすい点もデメリットとなります。

リンガルアーチ

リンガルアーチは、歯の裏側から金具を装着し、アーチ状に内接された太い金属ワイヤーの弾力を用いて、特定の歯の位置を動かしていく矯正装置です。リンガルアーチを単体で利用するケースに加えて、マルチブラケット装置の補助装置として併用することもあります。

リンガルアーチのメリット

リンガルアーチを使用する場合は、矯正装置を装着したまま日常生活を送るため、治療効果が期待できます。

リンガルアーチは微調整が容易な矯正治療法であり、歯科医院での調整が短時間で済みます。歯科医院に対して苦手意識を持つ子供は少なくないため、歯科医院への滞在が短くなる点は、子供にとっては大きなメリットです。

リンガルアーチのデメリット

リンガルアーチは基本的には固定式の矯正装置であり、自分で取り外すことができません。その影響で歯磨きも少し難しくなるため、お口の中の衛生状態を保つためには、丁寧なブラッシングが必要になります。

また、お口の中に入っているリンガルアーチに舌で触れる癖ができてしまうと、装置が外れたり、壊れたりする原因になります。お口の中の違和感が原因でついつい触る可能性もあるため、お子さんの癖には日ごろから気を配る必要があります。

バイオネーター

バイオネーターは、取り外しが可能なマウスピース型の矯正装置です。ワイヤーの力で歯を動かしていくのではなく、患者さんの成長に合わせた筋肉の動きを利用することによって矯正治療を進めていくのが特徴で、成長期の子供の矯正治療に特化した装置となっています。

バイオネーターのメリット

バイオネーターは1日の装着時間が10時間程度と、一般的な矯正装置の半分以下です。装着時間が比較的短いだけでなく、お口の中の違和感が少なく、日中の取り外しも可能となっているため、日常生活における影響が他の矯正装置に比べて少ない点は大きなメリットです。

患者さん自身の筋肉の動きを使って歯を動かしていく特性上、矯正治療に伴う痛みもほとんど発生しません。加えて、通常の矯正治療よりも矯正治療後の後戻りが起きにくく、矯正治療が終わった後にリテーナーを使用する期間も短く済ませることができます。

バイオネーターのデメリット

バイオネーターは毎日装置を使用しなければ効果が小さくなるため、患者さんには担当医の指示を守ってさぼらずに装置を使用し続ける自己管理能力が求められます。患者さんの成長に依存する特性上、治療の効果には個人差が出ます。

状態によってはバイオネーターで対応することができず、他の治療法でなければ解決できないケースがあります。加えて、細かい歯並びの調整もできないため、場合によっては治療終了後に他の矯正治療が必要になることもあります。

拡大床

拡大床とは、一般的な入れ歯のようなプラスチックの「床」の部分を持つ矯正装置です。顎や歯並びの横幅を拡げてスペースを作っていく矯正治療です。患者さんの歯並びが狭く、歯を綺麗に並べるためのスペースが不足している場合に用いられます。

拡大床のメリット

拡大床を使用して横幅を拡げることができれば、抜歯せずに歯列矯正できる可能性があります。個々の歯に強い力がかからないため、治療に伴う痛みも感じにくいです。さらに、装着中でも外からはほとんど見えないため、矯正装置が目立ちにくい点も特徴です。

そして、拡大床は装置によっては矯正治療中の取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際に邪魔になることもありません。それによって治療中のお手入れも簡単になるため、お口の中の汚れや細菌が起因となる、虫歯・歯周病のリスクを上げることなく矯正治療を受けられます。

拡大床のデメリット

拡大床を用いた治療では、歯を大きく移動させたり、細かい歯並びの調整を行うことはできません。対応できる歯並びが限られてくる点には注意が必要です。さらに、装着時間を守らないと効果を得にくくなるため、患者さんには自己管理能力が必要となります。

また、治療に伴う痛みこそ少ないものの、装置のサイズ自体は大きいため、装着時の違和感や異物感があります。特に、矯正治療開始から1週間程度で慣れてくるまでは発音が難しいといわれており、場合によっては日常生活に影響が出るかもしれません。

まとめ

矯正装置には多くの種類があり、異なるメリット・デメリットがあります。患者さんの歯並びや噛み合わせの状態や、患者さん自身が矯正治療に求めるものによって、選択すべき矯正装置の種類は変わってきます。

矯正治療を始める前に歯科医院に足を運び、カウンセリングを受けることをお勧めします。自分一人で判断することなく、歯科医師と事前によく相談したうえで、さまざまな選択肢の中からベストな矯正装置を見つけていきましょう。

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