顎のしゃくれを治す方法はある?原因と4つのリスクもチェック!
顎がしゃくれていると横から見られたときに目立ってしまい、なかにはコンプレックスに感じている方もいるのではないでしょうか。顎がしゃくれてしまう原因は、歯並びや顎変形症が挙げられます。どちらが原因の場合も歯科医院で診療を受けることができ、治療によって改善する方法もあります。
公開日:2024/11/28
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
この記事の要約
・軽度のしゃくれであれば、セルフケアで改善する可能性も
・歯列の乱れや骨格の成長発育が原因の場合は、歯科医院で相談を
・顎のしゃくれを放置すると虫歯や歯周病のリスクが高く、発音などにも影響が
顎がしゃくれる原因は2つ
どうしても気になる顎のしゃくれの原因は、主に2つあると考えられます。
①歯並び(噛み合わせ)が乱れている
通常の噛み合わせとは反対に、下の歯が上の歯より外向き(前)に生える噛み合わせを「反対咬合」(受け口)といいます。もし骨格にほとんど問題がなかったとしても、反対咬合により下顎が前に出てきてしゃくれになる可能性があります。
②顎変形症適応の下顎前突症(かがくぜんとつしょう)になっている
下側の顎の位置や大きさに問題があり、下顎の骨が前方に突き出るケースがあります。これを「下顎前突症(かがくぜんとつしょう)」といい、かみ合わせも全体的に前へずれます。顎骨に骨格的な問題が見られる「顎変形症」によるしゃくれは、遺伝的要因も考えられます。
顎がしゃくれていることで生じる4つのリスク
顎がしゃくれていると、見た目だけでなく健康面のリスクがあります。
①虫歯や歯周病になりやすくなる
顎がしゃくれるとお口が閉じにくくなります。放置していると口呼吸の癖がつき、お口を潤している唾液が乾燥してドライマウスになりやすいです。口腔内環境が崩れて悪い細菌が増殖し虫歯や歯周病のリスクが上がります。
②噛み砕くときの効率が悪くなる
顎がしゃくれる状態は噛み合わせが悪く、食べ物をしっかり噛めない状態が多いです。噛むのに時間がかかり、食べ物が上手く砕けないまま飲み込むことになってしまいます。
大きな食べ物が体内に入ると、消化器官に負担がかかります。腹痛や胃もたれ、便秘などの原因となり、体全体の不調にもつながります。
③発音や飲み込みに悪影響が及ぶ
反対咬合のような不正咬合があると、ある決まった音が発音しにくくなる場合があります。さらに、食べ物を飲み込む動きがうまくできなくなります。もし、飲み込むときに舌が上下の歯の隙間から出てくるようであれば、噛み合わせが原因となっていることが多いです。
④顎関節症を発症しやすくなる
顎の成長発育や歯並び(噛み合わせ)が崩れている場合、顎関節への負担が大きくなり顎関節症になることがあります。
顎関節症になると、顎の痛み、関節から音がする、お口が開きにくくなるといった症状があり、硬い食べ物を噛みにくいなどの弊害が出る可能性があります。
顎のしゃくれを治す方法
顎のしゃくれの度合いにより、改善する方法は異なります。
しゃくれが軽度の場合
しゃくれが軽度であれば、セルフケアで改善できる場合があります。
悪い癖を直す
日頃から無意識にしている癖が、しゃくれの原因になることがあります。以下のような癖を直すことで、しゃくれが改善する可能性があります。
・口呼吸になっている
・下の前歯の裏側を舌で押している
・頬杖をつく
・姿勢が猫背だ
舌のトレーニング(ミューイング)を行う
何気なく動かしている舌ですが、実は歯並びにも大きな影響を与えています。舌はそもそも筋肉であり、力が低下すると本来の舌の位置(上の前歯の裏側)に置かれず、歯並びにも影響を及ぼします。
そこで、舌を鍛えて舌の位置を正しくするのが、ミューイングとよばれるトレーニングです。トレーニングの方法は、まず姿勢を正しくし、舌を上顎の前歯の裏側にぴったりくっつくようにします。そのまま舌を後ろに引いて、上顎のくぼんでいる位置に舌先が当たったところで止めます。そのままゆっくりと鼻呼吸をする、というのが一連の流れです。習慣化して何度も繰り返すと、舌が持ち上がるようになります。
⇒ミューイングのメリットや具体的なやり方については『ミューイングは本当に効果があるのか?やり方や舌を鍛えるメリットも』をご覧ください。
歯科医院での治療が必要な場合
しゃくれが強い場合には、歯科医院での治療が必要となります。
⇒顎のしゃくれを歯科医院で治療するケースについて相談については「歯列矯正ネット」で歯科医師が回答している『歯列矯正後の顎のしゃくれ』の相談室ページをご覧ください。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は全症例に対応できますが、歯の表面に接着した装置が目立ちやすく、装置を外せないため汚れが溜まりやすいデメリットがあります。
治療期間は1年~3年で、費用は約60万円~150万円で、基本的に自費診療です。反対咬合(受け口)になっている方、噛み合わせが悪いためにしゃくれている方におすすめです。
2024年10月 株式会社メディカルネット調べ
マウスピース矯正
透明なマウスピースを装着し歯並びを整える治療方法です。装置を装着しても目立ちにくいうえ、取り外しができるので食事や歯磨きをいつもどおり行なえ、お口の中を清潔に保てます。症例によっては適応できないことがあり、1日20時間以上の装着が必要で、自己管理が必要です。
治療期間は約1年~3年、費用は約30万円~100万円で基本的に自費診療です。治療中の見た目が気になる方に適しているでしょう。
2024年10月 株式会社メディカルネット調べ
外科手術を伴う矯正治療
全身麻酔をともなう手術をして下顎の骨を切って動かす矯正治療です。一般的に手術前後に矯正治療を併用します。骨格を整えることで顔全体のバランスが良くなり、無理な力を加えずにしゃくれが改善します。
手術なので体への負担が大きく、1週間~2週間入院することになります。治療期間は約1年~3年で、費用は自費診療の場合は100万円ほどですが、顎変形症の場合は公的医療保険適用の診療になり、70万円~100万円で治療できます(手術や入院も3割負担です)。
下顎が過剰に発達している、または上顎が未発達な方、矯正治療だけでは改善が難しい方に適しています。
2024年10月 株式会社メディカルネット調べ
顎のしゃくれについてよくある質問
顎のしゃくれについてよく寄せられる質問と回答を紹介します。
どこからがしゃくれ?基準はある?
美しい横顔の条件として、よく基準とされるのが「Eライン」です。Eラインとは審美線で、鼻先と下顎の先を結んだ線と上下の唇との位置関係を矯正歯科でしばしばチェックします。骨格的なしゃくれた状態の場合、Eラインよりも上唇がかなり内側に位置します。
しゃくれは自力で治せる?
軽度であればセルフケアで改善する可能性はありますが、しゃくれた顎自体を自力で治すのは基本的に難しいといえます。大きくしゃくれた顎は多くの場合、歯並びや骨格に問題がありますので、歯科医院での治療を受けましょう。
まとめ
顎がしゃくれる原因として、反対咬合や顎変形症が考えられます。軽度のしゃくれであればミューイングなどによって改善するかもしれませんが、しゃくれは基本的に歯科医院で治療することになります。
矯正治療や外科手術が選択肢となり、しゃくれの状態に合った治療を選ぶことになります。顎のしゃくれを放置すると見た目だけでなく健康面のリスクがあるため、早めに歯科医院で相談しましょう。
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