矯正トラブルと応急処置 帰省や旅行前に知っておきたいこと
もし、矯正装置が急に外れてしまったら…。焦ったり不安な気持ちになりますよね。特に年末年始の帰省時や旅行先では、すぐにかかりつけの歯医者さんに相談することも、駆けつけることも難しくなってしまいます。そんな時に自分で出来る応急処置を知っておけば一先ず安心。万が一の事態に備えて事前に知識を得ておきましょう。
公開日:2020/01/10 更新日:2020/05/11
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性についてを公開。
目次
矯正中のよくあるトラブル
ワイヤーとブラケットを用いた矯正装置の場合、強い力や衝撃を受けるとブラケットが外れたり、ワイヤーが折れてしまうことがあります。装置に関するトラブルは、治療中のクリニックに相談することがベストですが休日や年末年始など、すぐに連絡が取れない場合もあるでしょう。そんな時に役立つのが「自分でできる応急処置」。これからご紹介する対処法はあくまでも緊急時の応急処置として捉え、後日歯医者さんで適切な処置を受けてください。
矯正器具(ブラケット)が外れた
固いものを食べた時や強い衝撃を受けた時に、歯の表面に付いている「ブラケット」と呼ばれる器具が外れることがあります。
咬み合わせの状態や噛む場所、口の動かし方などによってブラケットが外れる原因はまちまちですが、特に銀歯やセラミックなどの被せ物、治療済みの歯は、天然歯と比べて外れやすい傾向があるようです。
ブラケットが外れるとお口の中でブラケットが回転し宙ぶらりんな状態に。奥歯のブラケットが外れた場合は飛び出したワイヤーが粘膜に刺さりチクチクと痛みます。
→対処法
矯正用WAXを使って刺激の原因となっている部分を覆いましょう。WAXを米粒大くらいのサイズにちぎって丸め、気になる部分をガードしてください。一時的な応急処置ですが、ワイヤーの痛みや不快感を軽減させてくれます。ティッシュなどで使いたい部分を乾燥させると、矯正用WAXがくっつきやすいです。
また、WAXはかかりつけの歯医者さんで無料でもらえることがほとんどですが、使いきってしまい、手元にない場合は通販サイトで購入することもできます。心配な方はお守り代わりにポーチに入れて持ち歩くと安心ですよ。購入したい場合は“ソフトワックス 矯正”というキーワードで検索してみてください。
矯正器具(ワイヤー)が折れた
矯正装置に強い衝撃を受けた場合、ワイヤーそのものが折れてしまうことがあります。一概には言えませんが、歯ぎしりや噛み合わせの強さ、食いしばりなどの強い力が影響している場合もあるようです。
痛みがなく、ワイヤーが粘膜に刺さったり動いたりしていなければ、ワイヤーがずれないようにWAXで止めておくだけでOKです。ただし、折れたワイヤーの先が飛び出しているようなケースは、口の中を傷つけてしまう可能性があり大変危険です。状況に応じた対処が必要です。
→対処法
短い方のワイヤーをそっと引き抜き、口の中に残っているワイヤーとブラケットをワックスで固定して浮かないようにします。ワイヤーを引き抜くことが難しい場合は、ペンチなどで飛び出した部分をカットしWAXで固定しましょう。ご自身でワイヤーをカットする際は口の中を切らないように慎重に対処してください。ご自身で切るのは非常に危険な行為なので、難しいようであれば近くの歯科医院を受診しましょう。
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矯正器具(パワーチェーン)が外れた
パワーチェーンとはゴムの輪を連結させたもの。主に歯やブラケットに引っ掛けて、歯と歯のスペースを閉じる際に使います。
パワーチェーンは治療の際に歯並びや歯と歯のスペースの広さに応じて適宜取り換えていくもの。だからこそ、強く固定されておらず、歯磨き時に引っ掛かって外れてしまうことも珍しくありません。もし、パワーチェーンが外れてもゴム製なので強く痛むことは考えにくのですが、口を動かすたびにプラプラ動くのは気持ちが良いものではありません。
→対処法
パワーチェーンが外れて口の中で動いてしまう場合はハサミでカットしましょう。暗い口腔内の中でも操作しやすい小型のハサミがおすすめです。ハサミで切る際はティッシュやガーゼで周りの水分をふき取り、手元が滑って怪我をしないように気をつけてください。
口内炎のトラブル
口内炎は「食事がとりづらい」「しゃべりづらい」など、生活に不便を感じてしまう厄介な症状。「口内炎が気になって集中できない!」なんてことにならないように、普段から緊急時の対策を学んでおきましょう。
→対処法
こちらもWAXを使った応急処置が有効です。粘膜に触れる装置をWAXで覆い、物理的な刺激から粘膜を守りましょう。
一概には言えませんが、口内炎は矯正器具が粘膜に接触する刺激で起こりやすいと言われており、特に歯が大きく移動する「矯正治療の初期の段階」で頻発しやすいようです。2~3日経過すれば、口の筋肉の動きが矯正装置と調和して自然と口内炎ができにくくなり、放置していても自然と改善されることが多いのですが、一旦治っても歯の移動に伴ってほかの部分に出現することもあるので、油断できません。口の粘膜や唇と装置が擦れるような機械的な刺激以外に栄養不足や疲れ、ストレス、睡眠不足なども口内炎を引き起こす原因となるため、体調を整えることも口内炎の予防と治癒促進に期待できます。
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歯茎が腫れ出血するトラブル
一概には言えませんが、歯茎の腫れや出血は「歯磨き不足」が主な原因です。細菌の増殖によって歯茎が炎症を起こしている可能性があります。
「歯磨きをすると歯茎が痛い」「血が出ちゃう」などの理由から、歯磨きを疎かにしていると更に症状が深刻化してしまうことも。歯茎の回復も遅くなる可能性もあるので、気がついた時の早めの対処が望ましいといえます。
→対処法
まずは丁寧に歯を磨きましょう。歯ブラシや歯間ブラシ、タフトブラシ、フロスを活用して気になる部分を集中ケアしましょう。炎症が強いうちは歯ブラシをあてると多少の出血や痛みもありますが、炎症の原因となっている細菌を取り除けば腫れや出血、痛みは自然と引いていくでしょう。
矯正治療中は複雑な装置がお口の中に入っているため、普段よりも積極的なケアが必要です。普段から口腔内を清潔に保ち、丁寧な歯磨きを意識しましょう。また、歯磨きだけで解決しない場合は、できるだけ早い段階で歯医者さんに相談しましょう。
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矯正器具(マウスピース)を失くした、壊れた
マウスピース矯正で用いる装置は薄くて透明なことが特徴です。
そのため、
・うっかりレストランに置き忘れてきた
・踏んづけて壊してしまった
・ティッシュに包んだまま誤って捨ててしまった
などのうっかりミスによるトラブルをよく聞きます。マウスピース矯正の種類にもよりますが、1日に必要な着用時間は17~20時間程度。外している時間が長ければ長いほど歯が動き、後戻りが起きやすいといえるでしょう。後戻りが起きると、治療計画通りに治療が進まくなり、治療期間そのものが長引く可能性もあります。歯が大きく戻る前に、一刻も早く解決したいトラブルです。
→対処法
まずはかかりつけの歯医者さんへ連絡し、アドバイスを受けることがベストですが、休祭日や年末年始は歯医者さんも休診中。連絡が取れないこともあると思いますが、基本的に連絡が取れるまで待ちましょう。どうしても連絡が取れない場合は、予期せぬ歯の動きを防ぐため、ひとつ前のマウスピースを装着しましょう。
なお、マウスピースは万が一失くしても作り直しは可能です。マウスピースを作成した際の型取りのデータが保管されているため、簡単に作り直しができるでしょう。ただし、新しいマウスピースが仕上がるまで1週間~10日程度の時間を要します。ましてや、年末年始のお休み期間と重なると手元に届くのは更に先。その間の歯の移動を避けるためにも、ひとつ前のマウスウピースで歯並びをキープするのも一つの手段です。紛失時の対応については、基本的に担当医の指示に従ってください。
マウスピースを使用しない時は専用のケースに保管しましょう。心がけ次第でマウスピースの紛失や破損を回避することができます。長期の旅行に出かける方は予備として、ひとつ前のマウスピースを持ち歩くと安心ですね。
急なトラブルや応急処置が必要な場合でも受け入れ可能!歯医者さんを頼って!
上記にて矯正治療中のよくあるトラブルとその解決法についてご紹介してきましたが、なかにはご自身では解決できない歯の痛みやトラブルもあります。また、歯の痛みは矯正器具が直接的な痛みの原因ではない可能性もあるため、自己判断に迷ったら救急外来を頼ってみてはいかがでしょうか。
例えば全国の歯科医師会は休日(日曜・祭日・年末年始等)の急な歯のトラブルにも対応できる診療体制を整えているそうです。そのほか、各市町村のホームページ上でも休日夜間に対応可能な救急医療機関の案内を公開していますよ。詳しくはお住まいの地域の各市町村ホームページまたは、歯科医師会ホームページをご確認ください。
矯正治療中に起こるトラブルのまとめ
今回は矯正治療のよくあるトラブルとその対処法についてご紹介しましたが、後日歯医者さんで診察してもらうことを前提としています。装置やワイヤーが外れたままの状態が長く続くと、治療がうまく進みません。できるだけ早い段階で歯医者さんに連絡し、次回の診察の予定を立ててくださいね。
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