矯正治療、わたしもやった方がいいんでしょうか

下の親知らずがはえてきて、前歯の歯並びが悪くなってきてるみたいなんです。歯並びが悪いと虫歯になりやすいって言いますよね。私も矯正治療した方がいいの？


26歳　女性　Aさん

　たしかに、歯並びが悪いと歯ブラシが当たりにくくなるためプラーク（歯垢）が溜まりやすく、虫歯や歯周病になる危険性が上がります。ですが、虫歯になりやすいかどうかはプラークのコントロール（いかに歯垢を綺麗に落とせるか）がどのくらいできているか、ということの重要度が高いといえます。

つまり、歯並びを改善すれば虫歯や歯周病から逃れられるということではありません。
　歯並びが少し悪くても、きちんとした口腔ケアの知識を知り、歯ブラシ以外にデンタルフロス（糸ようじ）や歯間ブラシを含めた補助的なケア用品を用いたプラークコントロールを実行していれば、虫歯や歯周病の予防に期待ができます。

ですが、同じ時間同じように磨いたとしたら、歯並びが整っている人の方がプラークコントロールは結果としてやりやすくなります。矯正治療をしたら虫歯や歯周病にならない、ということはありませんが、十分な清掃を行うため、効率的なプラークコントロール行うために歯列矯正をするのは有効な方法です。

　下の親知らずが生えてきた影響で、前歯の歯並びが乱れてきたと感じられる方もいらっしゃると思います。歯が生えてくる力によって一旦できあがっている噛み合わせが本当に変化してきているのでしょうか？

そもそも、歯はいったいどれくらいの力で生えてくるのでしょうか？

乳歯と交代して永久歯が生えてくる時、もし乳歯が抜けておらず永久歯が生えるスペースがなければ、正しい歯並びの場所とは違う場所から生えてきます。それをふまえると、図のように生え揃った永久歯列に対して親知らずが水平方向に埋まっており、親知らずの生えてくる力がすでに生えている臼歯を前方に押し出して、前歯の歯並びを悪くしてしまうということは、考えにくいと思われます。

　親知らずの影響で歯並びが悪くなったと思われる原因は、親知らずが生え始めたことによってお口の中に異和感を覚え、お口の中をよく観察するようになったということです。その時に前歯の歯並びの乱れを強く意識し始めた可能性が考えられるのではないでしょうか。

下の歯並びが悪くなる要因として、他に2つ考えられます。

①加齢による前歯の歪み（ひずみ）

加齢現象の一環として、奥歯が前に移動する動きをするため、前歯がガタガタすると言われています。

②隣の歯と接する面積が小さい

奥歯に比べて前歯は隣の歯と接触する面積が小さいです。そのため、歯の形態上、前歯の方が奥歯より互い違いになりやすくなります。

がたがたになった前歯は矯正後、リテーナーという装置を使用し、下の歯並びへの後戻りを防ぐ保定処置を行います。保定処置が矯正治療において最も重要です。取り外しのできない装置を前歯の裏側に装着するか、取り外し可能なマウスピース型の装置を患者さんご自身で装着してもらいます。

保定期間に関しては、半永久をオススメします。主な理由はどのくらいの期間保定すれば歯が後戻りしないかが不明瞭であるためです。また、加齢現象で歯が前に移動するような動きをするので、抑制するためにリテーナーは有効と考えられます。