子供のマウスピース矯正(小児矯正) 4つのメリット・2つのデメリット
「子供の歯並びの悪さが気になるので、マウスピース矯正(小児矯正)を受けさせようと考えている。ただ、自分は矯正治療を受けたことがないから、本当にこの治療法でいいのかわからない…」
子供のマウスピース矯正は装置が取り外せるなど多くのメリットがありますが、当然デメリットもあります。今回は、子供のマウスピース矯正の概要や、具体的なメリット・デメリット、治療にあたって注意すべき点などについて、詳しく解説します。
公開日:2024/11/24
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
- 子供のマウスピース矯正とは
- 子供のマウスピース矯正の4つのメリット
- 1. 口呼吸を鼻呼吸に変えられる可能性がある
- 2. 顎の骨の成長を整える
- 3. 矯正後に後戻りしにくい
- 4. ワイヤー矯正よりも目立ちにくい
- 子供のマウスピース矯正の2つのデメリット
- 1. 親が装着時間に気を配る必要がある
- 2. 再び矯正が必要になる場合もある
- 子供のマウスピース矯正の開始時期
- 子供のマウスピース矯正にかかる期間と費用
- 子供のマウスピース矯正が必要な6つの歯並びや噛み合わせ
- 1. 受け口
- 2. 過蓋咬合(かがいこうごう)
- 3. 交叉咬合(こうさこうごう)
- 4. 叢生(そうせい)
- 5. 上顎前突(じょうがくぜんとつ)
- 6. 開咬(かいこう)
- 子供のマウスピース矯正についてよくある質問
- マウスピースの装着を嫌がるときはどうすれば良い?
- 公的医療保険はきかないの?
- まとめ
子供のマウスピース矯正とは
子供のマウスピース矯正の目的は、骨格の成長をコントロールしながら歯を理想的な位置に移動させることです。大人の矯正治療の場合は骨格の成長を活用できないですが、子供の矯正では骨がまだ成長段階にあるため、成長を利用して矯正治療を受けられるが特徴です。
子供のマウスピース矯正の4つのメリット
子供のうちにマウスピース矯正を始めることで、様々なメリットがあります。具体的なメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
1. 口呼吸を鼻呼吸に変えられる可能性がある
マウスピース矯正の中にはお口周りの筋肉を鍛える働きがあります。鍛えることによって自然とお口を閉じやすくなるため、口呼吸が癖になっている人であっても、マウスピース矯正をきっかけに鼻呼吸になる可能性があります。
口呼吸は、虫歯、口内炎、口臭に加えて、風邪やインフルエンザになりやすいなどのデメリットがあります。
2. 顎の骨の成長を整える
普段から軟らかいものばかり食べていると、お口周りの筋肉が鍛えられず、顎の骨が発達しにくくなってしまいます。そうなると、顎の発達が未熟になり、歯が綺麗に生えてくるためのスペースも足りなくなるため、歯並びや噛み合わせの悪化につながってしまいます。
マウスピース矯正では顎骨の成長を正しい方向に促すものもあります。結果、歯が生えてくるためのスペースを確保することにもつながり、永久歯が綺麗に生えそろう可能性を高めます。
3. 矯正後に後戻りしにくい
矯正による歯並びの改善ができたとしても、「舌癖」と呼ばれる、舌を正しくない位置に置いたり、舌を前に押し出したりする癖が残っていると、歯並びが徐々に矯正前の状態に戻ってしまうことがあります。
マウスピース矯正を行う際のトレーニングによって舌癖を改善することが期待できます。子供にとってマイナスになる舌癖を解消することができるだけでなく、矯正後に歯が後戻りする事態を防ぐ機会にもつながります。
4. ワイヤー矯正よりも目立ちにくい
ワイヤー矯正では、金属のワイヤーやブラケットを用いるため、矯正装置が目立ちがちです。子供の矯正は往々にして多感な時期に始めることもあり、同級生にからかわれるのが嫌だ、などの不安が働きます。
一方で、マウスピースは透明で目立ちにくいため、矯正中であることに気づかれにくくなります。多感な時期であっても矯正治療を継続しやすい、という点は大きなメリットです。
子供のマウスピース矯正の2つのデメリット
子供の時期のマウスピース矯正には、メリットだけでなく、デメリットも存在します。
メリットだけではなく、デメリットも知ったうえでマウスピース矯正を検討しましょう。
1. 親が装着時間に気を配る必要がある
マウスピース矯正ではマウスピースを一定時間装着することが必要です。大人になって矯正を始める場合に比べて装着時間が短いことが多いとはいえ、決められた装着時間を守らなかった場合は、矯正の効果が小さくなってしまいます。
また、治療が長期にわたることもあり、患者さんがマウスピースの装着をさぼってしまうと、治療計画通りに矯正が進まなく延期します。子供に装着を任せきりにするのではなく、親も管理しなければなりません。
2. 再び矯正が必要になる場合もある
顎の成長度合いには個人差があります。子供のマウスピース矯正だけで治療を完了する一方で、大人になってから再び矯正治療が必要になってしまうケースもあります。
ただし、子供のうちに矯正治療を受けていれば、大人になってからの治療期間が短く済むことも多く、抜歯を行う必要性も低くなります。つまり、子供の時期に治療を始めることによって、将来的なメリットが得られる可能性は高くなります。
子供のマウスピース矯正の開始時期
矯正治療は、「1期治療」と「2期治療」という2つの段階に分かれています。1期治療は、乳歯が生えている時期、あるいは乳歯と永久歯が両方とも生えている時期に行い、2期治療は永久歯が生えそろってから行いきます。
1期治療では、顎が成長する力を利用し矯正装置を使って顎骨を広げ、永久歯が正常な位置に生えそろうための土台作りや噛み合わせを作ります。1期治療は、早いケースでは3歳ごろから開始することが可能で、3歳から12歳ごろまで治療を受けるのが一般的です。
2期治療では、大人の矯正治療と同じように、永久歯を動かして歯並びを整えていきます。1期治療によって事前に顎のバランスを整えておくことで、永久歯が不正な位置から生えてくることを防ぎ、抜歯を避けられる可能性が高くなります。永久歯が生えそろってからの治療となるため、一般的には13歳以降(中学生以降)に治療を受けていくことになります。
*こちらは大人の矯正治療とほぼ同じ治療内容です。
子供のマウスピース矯正にかかる期間と費用
子供のマウスピース矯正にかかる期間に個人差がありますが、一般的には1~3年ほどです。子供のマウスピース矯正にかかる治療費治療については、ばらつきが多くおよそ5~50万円程度が相場です。
2023年9月 株式会社メディカルネット調べ
子供のマウスピース矯正が必要な6つの歯並びや噛み合わせ
歯並びや噛み合わせの悪さにはさまざまな分類があり、矯正での改善が必要です。以下の6種類が挙げられます。
1. 受け口
受け口は、上の歯と下の歯の前後的な噛み合わせが逆になっている状態です。放置すると噛み合わせが悪化して見た目のコンプレックスを抱きかねないことに加え、ものを噛む力が低下し、顎への負担も増えます。加えて、サ行やタ行が発音しにくくなるような発音障害を引き起こすこともあります。
2. 過蓋咬合(かがいこうごう)
過蓋咬合は、噛み合わせが深すぎて、下の歯がほぼ見えなくなる状態です。下の歯が上の歯を突き上げることになるため、前歯や奥歯に対して徐々にダメージが溜まっていき、歯が摩耗して短くなったり、歯が破損する可能性があります。また、下顎が動かしづらくなるため、顎への負担も増大してしまいます。
3. 交叉咬合(こうさこうごう)
交叉咬合は、上の歯と下の歯の噛み合わせに横のズレがある状態です。顎全体がズレているケースだけではなく、前歯だけが横に交叉して中心がズレている場合や、奥歯だけが交叉して噛み合わせが悪くなるようなケースもあります。放置すると、顎の骨格が歪んで顔が変形し、顔の左右が非対称になる可能性があります。
4. 叢生(そうせい)
叢生は、歯並びが乱れたことによって、歯が部分的に重なってしまう状態です。歯が重なり合っている部分が多いため、歯磨きの際に歯の間をブラッシングすることが難しく、虫歯や歯周病、口臭などのリスクを高めてしまいます。また、治療を受けるためには抜歯が必要になってしまうこともあります。
5. 上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上顎前突はいわゆる「出っ歯」のことで、上の歯が下の歯よりも前に出すぎている状態です。口が閉じにくくなることでお口の中が乾きやすくなり、その影響で唾液の分泌量が低下するため、口臭、虫歯、歯周病などが発生しやすくなります。さらに、前歯の傾き方が特に大きい場合は、何かにぶつけた際に前歯を打撲する(折る)可能性が高まってしまいます。
6. 開咬(かいこう)
開咬は、奥歯は噛み合っているのに前歯は噛み合っていないという状態を指します。歯に隙間が存在する影響で、前歯で食べ物を噛み切れなくなり、食べ物が大きな塊のまま胃や腸に送られるため、消化器の負担が増大します。さらに、症状が進むと、矯正治療単独での改善が難しく、顎の骨を切る手術が必要になる場合もあるため、早い段階で治療を始めていく必要があります。
子供のマウスピース矯正についてよくある質問
子供のマウスピース矯正を行う際には、特に注意すべきポイントが存在します。
マウスピースの装着を嫌がるときはどうすれば良い?
マウスピース矯正には子供の協力が不可欠ですが、場合によっては子供が装置の装着を嫌がってしまうことがあります。そういったケースに陥った場合は、矯正が失敗して歯並びが悪いままではどうなってしまうのか、という点を具体的に説明するといいでしょう。
矯正治療が失敗すると、食べ物を噛み切れなくてお腹が痛くなりやすくなってしまうかもしれない、顔の形が変わってしまうかもしれない、喋りにくくなる、虫歯になりやすくなって歯医者に通う回数が増えてしまう、などのリスクがあります。それに加えて、マウスピース矯正を行うことで得られるメリットも教えてあげながら、根気強く説明し治療を励ましていきましょう。
公的医療保険はきかないの?
基本的には、子供のマウスピース矯正に公的医療保険は適用されません。ただし、治療において骨格からの改善が必要な症状であったり、お口に先天的な異常が存在する場合は、それらの症状を治療するための矯正治療に対して、公的医療保険が適用されることになります。
また、子供の矯正治療はほとんどが医療費控除の対象になるため、確定申告の際に所得税の還付を受けることが可能です。具体的には、患者さんが支払った治療費、歯科医院までの通院費、治療に必要な医薬品の費用などに対して、医療費控除を申告することもできます。
まとめ
子供のマウスピース矯正(小児矯正)は、幼少期ならではの骨格の成長を利用しながら、顎と歯を理想的な位置に誘導するものです。歯並びを整えられるのはもちろん、口呼吸を鼻呼吸に変えられる、大人に比べて痛みが少ないなど、、さまざまなメリットが存在します。
マウスピースの装着時間について親が気を配る必要があったり、場合によっては大人になってから再び矯正が必要になる点には注意が必要です。また、マウスピース矯正でより良い効果を得るためには、子供のモチベーションも大事です。
治療を始めるべき時期は患者さんによって異なるため、適切な開始時期の見極めは歯科医師でなければ難しいです。そのため、子供のマウスピース矯正をお考えの方は、早めに歯科医院に足を運んで相談してみることをお勧めします。
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