矯正歯科はデンタルローンで分割払いできる?デメリットも把握しよう
「矯正治療を受けようと思っているけれど、今は金銭的な余裕がない。歯科治療にはデンタルローンという支払い方法があるらしいけど、これっていったいどんな制度なの?」そんな疑問をお持ちの方はいませんか。
デンタルローンは歯科治療の際に利用できるローンであり、分割払いにすることで患者さんの金銭的負担を軽減できます。今回は、デンタルローンに関する基礎知識やメリット・デメリット、デンタルローン以外の支払い方法などについて、詳しく紹介します。
公開日:2024/08/22
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
矯正歯科のデンタルローンとは?
デンタルローンとは、金融機関や信販会社によって提供される歯科治療費を支払うためのローンです。住宅ローンや自動車ローンのように、借り入れた金額の使用先が特定の歯科治療に限られている点が特徴です。
具体的な内容としては、治療に必要な費用を金融機関などでいったん立て替えてもらい、患者さんが元本と利息を分割払いで支払う仕組みです。
矯正歯科のデンタルローンのメリット&デメリット
デンタルローンは歯科治療専用の支払い方法であり、メリットも多いです。一方で、デンタルローンの利用に伴うデメリットもないわけではありません。この項目では、デンタルローンにまつわるメリット・デメリットについて詳しく紹介します。
デンタルローンのメリット
デンタルローンは、金銭的な負担を軽減するための手段として少なからず利用されている支払い方法です。デンタルローンの主なメリットは以下の2種類です。
少ない負担で治療を始められる
矯正治療には多くの費用が必要になるため、患者さんにかかる金銭的な負担は大きくなります。しかし、デンタルローンを利用する際には自動車ローンのような頭金が必要にならないため、たとえ手元に資金がない状態であっても、月ごとの負担を大きく軽減しつつ、必要に応じて早急に治療を始めることが可能です。
カードローンに比べて金利が低い
デンタルローンの金利は、使用方法によっては通常のカードローンに比べて低くなります。歯科治療以外の目的でお金を借りる必要がない人の場合、デンタルローンは他の支払い方法よりも最終的な支払い額を少なく抑えられるため、メリットが大きいです。
※カードローン:年利3ー18%、デンタルローン:年利2.5-7%(提供先により異なる)
デンタルローンのデメリット
デンタルローンは経済的に治療費の支払いが難しい患者さんにとって大きな助けになる支払い方法ですが、利用するにあたってはいくつかのデメリットがあります。以下に挙げる3つは、デンタルローンの活用に伴う主要なデメリットと考えられています。
治療費の総額が増えてしまう
他のローンに比べて金利が低いとはいえ、デンタルローンを利用する際に金利が全く発生しないわけではありません(支払い方法によっては金利分を契約したクリニック側が支払ってくれることがあります)。分割の回数によっては、支払い総額が数十万円増加するケースもあるため、頭に入れておいた方がよいでしょう。
審査に通らないと利用できない
自動車や住宅のローンと同じく、デンタルローンを利用するためには、事前に審査を申し込んで合格する必要があります。審査には過去の信用情報が影響してくるため、過去にクレジットカードなどの支払いを滞納したり、収入が安定していない人の場合は、審査に通ることができず、デンタルローンを利用できない可能性がある点に注意が必要です。
どの矯正歯科でも利用できるとは限らない
デンタルローンを利用するためには、治療を受ける歯科医院がデンタルローンを提供していることが条件になります。場合によっては、歯科医院がどの会社とも提携していないケースもあり、必ずしも全ての矯正歯科でデンタルローンを利用できるわけではない点は念頭に置かなくてはなりません。
矯正歯科でのデンタルローン以外の支払い方法
矯正歯科における支払い方法は、デンタルローン以外にも複数あります。主に利用が多い支払い方法は、3つあります。
現金一括払い
現金一括払いは読んで字のごとく、治療費を現金でいっぺんに支払う方法です。分割払いを行わないため金利や手数料が発生せず、支払い総額を安く済ませることが可能です。仮に、当初の計画よりも治療期間が長引いてしまった場合であっても、後から追加費用が発生することがないことや、医療費控除を受ける際に対象となる金額が多くなる点もメリットです。
矯正治療の際に治療費を一括で支払う余裕がある患者さんにとっては、最もメリットが大きい選択肢です。まとまった金額を用意できない患者さんにとっては利用したくてもできない選択肢なのは否めません。
クレジットカード払い
クレジットカード払いはその名の通り、クレジットカードを使用して治療費を支払う方法です。一括払いであれば金利や手数料が発生しないため、現金一括払いに近いメリットがあり、クレジットカードのポイントを貯めることができます。設定により分割払いやリボ払いを利用することも可能です。
ただし、分割払いやリボ払いを利用する場合は、支払い額がデンタルローンよりも高くなってしまうことがある点には注意が必要です。また、歯科医院によっては、患者さんが使用しているクレジットカードのブランドに対応しておらず、支払いが行えないことがあります。一括払いや分割払いの限度額にも注意が必要です。
院内分割
場合によっては、金融機関やクレジットカード会社を介さず、歯科医院の側で分割払いに対応してくれるケースもあります。医院の分割払いでは利息や手数料が生じないため、治療費の負担が抑えられます。学生のようなデンタルローンやクレジットカードの審査が通りにくい立場の患者さんでも利用できる点も大きなメリットです。
しかし、分割払いに対応している歯科医院はあくまで一部であり、全ての歯科医院が分割に応じてくれるわけではありません。また、分割払いによって一回の支払い額が小さくなることで、年度をまたいで支払う場合は医療費控除の対象にならなくなってしまうため、注意が必要です。
矯正歯科での費用の目安
歯科矯正に必要な費用の相場は歯科医院の治療費設定、治療方法、お口の中の状態などによって異なります。300,000~1,500,000円など大きく異なります。矯正治療前のカウンセリングや精密検査で30,000円以上の費用がかかる可能性があるだけでなく、場合によっては抜歯が必要で追加で5,000円~30,000円ほどが必要になるケースもあります。
治療費において最も大きな割合を占めるのは、矯正治療の装置です。安い場合は200,000円、高いものでは1,700,000円ほどが必要になります。さらに、治療修了後も歯の後戻りを防ぐリテーナーという装置の作製に30,000~60,000円がかかり、経過観察時の通院費も3,000~4,000円が必要になります。
2024年7月 株式会社メディカルネット調べ
矯正歯科での費用が高額になる理由
歯列矯正は見た目の改善が目的とみなされることが多く、原則として公的医療保険が適用されません。患者さんが治療費を原則全額自己負担することになるため、治療費も高額になります。
ただし、厚生労働大臣が定める先天性疾患に起因する咬合異常がある、前歯および小臼歯で生えない永久歯が3本以上ある、外科手術を要する顎変形症である場合などは、例外的に公的医療保険の適用が可能となり、治療費の負担を軽減することができます。
デンタルローンで支払った費用は医療費控除の対象になる
医療費控除とは、1年間に支払った医療費の総額が100,000円を上回った場合、確定申告の際に所得税が還付される制度のことです。歯科治療の治療費は、公的医療保険適用の診療と自由診療のどちらも医療費控除の対象となります。歯科矯正は治療費が高額になりやすいこともあり、金銭的な負担を減らしたい患者さんにとっては、医療費控除は絶対に利用したい制度です。
さらに、歯科矯正の治療費をデンタルローンで支払った場合も、費用が医療費控除の対象となります。
参考:医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
まとめ
デンタルローンは歯科治療専用のローンであり、少ない負担で治療を始められることに加えて、クレジットカードローン(リボ払いなど)に比べて金利が低い点が大きなメリットになります。一方で、治療費の総額が増えてしまったり、審査に通らないと利用できないといったデメリットは注意が必要です。
また、歯科医院によってはそもそもデンタルローンの使用ができないケースもあるため、デンタルローンの使用を検討している場合は、治療を始める前に可否を確認しましょう。矯正治療は費用が高額になりがちなため、金銭的な負担を減らしたいのであれば、デンタルローンの利用も積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
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