リテーナーの装着をさぼった場合に起こる4つの問題と対処法
「矯正治療が無事に終了したが、その後に渡されたリテーナーの装着をさぼってしまっている。リテーナーをきちんと装着しないと、どんな影響が出てくるの?」そのような疑問をお持ちの方はいませんか。
リテーナーの使用を怠ると、歯の後戻りをはじめとした、さまざまなリスクが生じることになります。今回は、リテーナーに関する基礎知識に加えて、装着をさぼった場合に生じる4つの問題や、リテーナーに関してよくある3つの質問とその回答、対処法などを紹介します。
公開日:2024/07/01
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
リテーナーとは?
歯列矯正は歯並び(噛み合わせ)が整ったら終わり、というわけではありません。治療終了から「保定期間」と呼ばれる、動かした歯の後戻りを予防する時期に入ります。リテーナーは、この保定期間に装着し歯列が元に戻るのを防いでくれる装置です。
リテーナーの役割は後戻りを防ぐこと
歯列矯正を終えたとしても、そのまま何もせずに放置すると、歯が後戻りして治療前の状態に戻っていきます。そうなると、長期間にわたった矯正治療が無駄になるだけでなく、再び矯正治療を受ける必要が生じることにより、経済的負担がより大きくなってしまいます。
リテーナーは歯列の状態を維持するための装置であり、治療後の後戻りを防ぐうえで重要な役割を果たします。
リテーナーの種類
リテーナーにはさまざまな種類があり、患者さんの状態や要望に応じて選択されます。主に用いられている3つのリテーナーを紹介します。
マウスピース型
マウスピース型はその名の通り、マウスピースの形をしたリテーナーです。使用中に着脱が可能なため、歯磨きの際に装置が邪魔することがなく、衛生面を良好に保ちやすくなります。色が透明なため見た目が気になることも少なく、発音を妨げる心配もほぼありません。ただし、強い力が加わると破損する可能性がある点には注意が必要です。
プレート型
プレート型は、歯の表面をワイヤーで囲み、裏面はプラスチックで覆って後戻りを防ぐタイプのリテーナーです。マウスピース型と同じく着脱が可能で衛生面に優れており、他のリテーナーに比べて耐久性が高い点が特徴です。しかし、ワイヤーが歯の表面を覆うため見栄えが悪く、慣れるまでお口の中に違和感を感じるかもしれません。
ワイヤー型
ワイヤー型は、前歯の裏にワイヤーを装着することで歯の後戻りを防ぐリテーナーです。着脱できないため自己管理の必要がなく、ワイヤーを歯の裏側に付けるため目立たず、使用中の違和感も少なくなります。ですが、歯磨きの際に装置が邪魔をして磨き残しが発生しやすく、定期的な歯科医院でのクリーニングも必要になります。
リテーナーの1日あたりの装着時間
着脱が可能なタイプのリテーナーの装着時間は、1日あたり約20時間が目安となります。治療初期においては、食事と歯磨きのタイミング以外の全ての時間帯において、リテーナーを装着する必要があります。ただし、期間が経って歯が徐々に安定してきたらリテーナーの使用頻度を少なくし、就寝時のみ、あるいは数日に一度の装着でも良いでしょう。
リテーナーの装着が必要な期間
リテーナーを装着しなければならない期間は具体的に決まっていません。少なくとも、矯正治療に費やした期間と同程度の長さにわたって、リテーナーをしっかりと装着することが一般的です。歯科医院への通院が終了した後も、リテーナーの使用を継続することを勧められることが多いです。
リテーナーの装着をさぼった場合に起こる4つの問題
リテーナーの装着をさぼってしまうと、さまざまなリスクが発生する可能性があります。以下の4つです。
後戻りしてしまう
担当医の指示通りにリテーナーを使用しなかったり、リテーナーの使用をさぼってしまった場合は、歯が後戻りしやすくなってしまいます。とりわけ、矯正治療が終わった直後は歯を支える骨がまだ安定していないため、後戻りが起こりやすい状態になっている点には注意が必要です。
再び装着したときに痛くなる
リテーナーの装着を怠ると、その期間に歯が動いてしまいます。治療終了時に製作したリテーナーが歯に合わなくなるかもしれません。再びリテーナーを装着した際に痛みが生じたり、場合によっては痛みで装着できなく再矯正になる可能性も出てきます。
リテーナーの作り直しが必要になる
リテーナーが歯と合わなくなった場合、歯の痛みや装置の浮きを解消するために、リテーナーの再調整が必要です。歯並びの状態によっては、リテーナーを新たに作り直す必要が出てくるケースもあります。リテーナーの製作には追加料金がかかるため、患者さんの金銭的な負担も増すことになります。
矯正治療のやり直しが必要になる
後戻りが大きく進んでしまうと、リテーナーだけでは状態を改善しきれなくなることがあります。そのような場合は、矯正治療をやり直す必要が出てきます。再治療には多額の費用と長い治療期間が再度必要になるかもしれません。
リテーナーの装着をさぼった後の対処法
リテーナーの装着をさぼってしまった後でも、場合によっては状態を改善することが可能かもしれません。状況に応じた具体的な対処法を紹介します。
以前と同じように装着できる場合
リテーナーの締め付けが少し強くなったと感じる程度で、以前と同じようにリテーナーをきちんと装着することが可能であれば、そのままリテーナーを使用しても良いケースは多いです。多少の後戻りであればリテーナーの装着だけでカバーできますが、全く歯にはまらなくなっているのに無理やり装着するのは控えましょう。
痛くて装着できない場合
リテーナーを装着した際の痛みが強かったり、装着時に浮いてしまう場合は、リテーナー装着で対応しきれないところまで後戻りが進んでいると考えられます。矯正の再治療の必要が出てくるので、できる限り早く歯科医院に足を運び、お口の中の状態を確認してもらわなくてはなりません。
リテーナーに関するよくある質問
リテーナーは矯正治療の終了後に初めて使う装置となるため、使用する際に何らかの疑問が生じることは少なくありません。リテーナーの使用に際して患者さんから寄せられることが多い質問としては、以下の3種類が挙げられます。
食事の際はどうするの?
取り外しが可能なタイプのリテーナーであれば、食事の際に基本的に装置を外す必要があります。リテーナーをつけたまま食事すると、食べ残しや糖分などがリテーナーと歯の隙間に残り、口臭や虫歯の原因となります。さらに、食事中の使用はリテーナーの変形や破損を招く可能性もあるため、食事の際に必ず外すようにしましょう。
お手入れ方法は?
リテーナーのお手入れを行う際には、中性洗剤と毛先がやわらかい歯ブラシを使って毎日磨くとよいでしょう。さらに、コップに水かぬるま湯を注いで矯正器具用の洗浄液を加え、その後にリテーナーを入れてつけ置きにして、最後によくすすぐという手順を週に1回程度行うことによって、より大きな殺菌効果が見込めるようになります。超音波洗浄器などもお勧めです。
費用はどのくらいかかるの?
リテーナー作製に必要な費用は歯科医院や装置のタイプによって異なりますが、一般的に上下で10,000~60,000円です。歯科医院によっては、矯正治療の治療費の中にリテーナーの費用が含まれていることもあるため、気になる方は治療前に、担当医に相談するとよいでしょう。
2024年5月 株式会社メディカルネット調べ
まとめ
リテーナーの装着をさぼってしまうと、歯の後戻りが生じたり、再びリテーナーを装着したときに痛みを感じる恐れがあります。以前と同じようにリテーナーを装着できる場合はそのまま使用を継続しても良いですが、痛みが強くて装着できなくなっている場合は、歯科医院でリテーナーの調整や作り直しが必要になります。
場合によっては、リテーナーを作り直すだけでなく、矯正治療自体をやり直す必要が出てくる可能性もあります。装着をさぼってしまうことによって費用や治療期間も増えてしまうため担当医の指示を守ったうえで、さぼることなくリテーナーを使用し続けることをお勧めします。
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