顎変形症の治療は公的医療保険適用になる?高額療養費制度は?

顎変形症 公的医療保険適用

「噛み合わせのズレが大きくて困っている自分は顎変形症かもしれない」。そのような悩みを抱えていませんか?顎変形症の治療を考えているものの、公的医療保険適用で治療を受けられるのか分からず、費用負担について不安な気持ちがある方も多いのではないでしょうか。

この記事では顎変形症とはどのような病気か、公的医療保険適用になるのか、治療にかかる費用はどれくらいかなど、気になる点を解説していきます。

監修医師

歯科医師 古川雄亮先生

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

目次

  1. 顎変形症とは
  2. 顎変形症の治療は公的医療保険適用になる
  3. 顎変形症の治療にかかる費用
  4. 顎変形症の各症状に適した治療法
  5. 顎変形症の治療の流れ
  6. まとめ

顎変形症とは

顎変形症(がくへんけいしょう)とは、顎骨の発育に異常が起こっている病気です。上下の顎骨が正常に成長していない、または過度に成長している、顔が左右非対称になっている、下顎のみが突出している(受け口)、上顎のみが突出している(出っ歯)、上下の前歯が噛み合わない(開咬)などの症状が見られます。

顎変形症は見た目だけでなく、噛み合わせや発音など生活にも悪影響を及ぼします。特に噛み合わせに関しては、うまく噛めない、奥歯でしか噛めないなどの問題が起こります。また、顎変形症による見た目のコンプレックスから精神心理的障害が生じる可能性があります。

顎変形症の治療は公的医療保険適用になる

顎変形症 公的医療保険適用

顎変形症の治療は、症状が軽度であれば矯正治療のみで治療することもあります。ただし、見た目を改善したい、重度の場合には矯正治療と外科治療(顎の手術)を組み合わせる「外科矯正」が必要になります。

一般的な矯正治療は公的医療保険適用外となりますが、顎変形症の外科矯正は公的医療保険適用です。外科治療の前後で矯正治療を行うというルールがあります。また、厚生労働省指定の「顎口腔機能診断施設」で治療を受ける場合にのみ公的医療保険適用となるため注意しましょう。

なお、矯正治療を自費で行なった場合には外科治療も公的医療保険適用外となります。たとえば、矯正治療をマウスピース矯正や裏側矯正で受けたい場合は、全て自費で治療することになります。公的医療保険適用で外科矯正を行うには、表側矯正(ワイヤー矯正)を選択する必要があります。

高額療養費制度の利用で費用負担はより軽くなる

外科矯正が必要な顎変形症の場合は、高額療養費制度を利用できます。高額療養費制度とは、1ヶ月間(月の初め~末日)に支払った医療費が上限額を超えた場合に、超過分の金額が戻ってくる制度です。

顎変形症の治療は公的医療保険適用となるだけでなく、高額療養費制度を利用することで費用負担がより軽くなります。

医療費の上限額は年齢や所得などにより設定されています。また、高額療養費制度を利用する場合の手続きについては、公的医療保険により異なりますので、自身が加入している公的医療保険をチェックしてみましょう。

顎変形症の治療にかかる費用

顎変形症の治療にかかる費用は、患者さんの症状や歯科医院の料金設定により異なります。治療法別の費用目安は以下のとおりです。外科矯正を公的医療保険適用で受ける場合は、60万円~80万円程度が目安となります。

外科矯正 200万円~300万円程度
表側矯正 60万円~130万円程度
裏側矯正 100万円~170万円程度
マウスピース矯正 60万円~100万円程度


2023年12月 株式会社メディカルネット調べ

顎変形症の各症状に適した治療法

顎変形症の症状に合わせて以下の治療を行います。

矯正治療

顎骨が成長段階にある子どもの場合、矯正治療によって顎骨の成長をコントロール可能です。そのため、矯正治療のみで顎変形症を予防できる可能性があります。

大人の場合、軽度の顎変形症であれば矯正治療で噛み合わせは改善を図れます。ただし、顎骨の成長が止まっているため、矯正治療のみで改善することが難しいケースも多々あります。

外科矯正

顎変形症は、歯並びよりも顎骨の問題が大きいため、矯正治療と外科治療(顎の手術)を組み合わせる「外科矯正」を行うことがあります。

外科矯正が必要なケースとしては、骨格的な異常が著しく、顔が左右非対称になっている、下顎が突出している(受け口)、上顎が突出している(出っ歯)、常に歯茎が見えている(ガミースマイル)といった症状がみられる場合です。

顎変形症の治療の流れ

顎変形症の治療で外科矯正を行う場合、基本的には以下のような流れで進みます。

①初診相談

歯や顎骨の状態をチェックします。ご自身が気になっている症状についても歯科医師に伝えましょう。どのような問題が起こっているか、どういった治療法になりそうかなど歯科医師から説明があるでしょう。

②検査

患者さんの状態をより詳しく知るために、レントゲン・CT撮影などを行います。また、顔やお口の写真撮影や歯型採得も実施しています。顎の動きや周りの筋肉の機能も検査します。

③診断

検査結果などをもとに症状に応じた治療法が決定され、歯科医師より詳しい説明があるでしょう。治療期間や費用、治療上のリスクなどについても納得できれば顎変形症の治療を開始します。

④術前矯正治療

外科治療の前に矯正治療で歯を移動させます。手術後にきれいに噛み合うように事前に歯を移動させるため、この期間で噛み合わせが改善されるわけではありません。

⑤顎矯正手術

患者さんの症状に合わせて口腔外科にて顎矯正手術を行ないます。骨を切って金属プレートで固定するなど治療法はいくつかあります。手術では全身麻酔を使用し、入院が必要となります。

⑥術後矯正治療

より理想的な噛み合わせとなるように手術後に再度矯正治療を行ないます。治療期間の目安は個人差がありますが半年から1年程度です。④から⑥で治療期間は1年半前後です。

⑦保定

歯の移動が完了したら矯正装置を取り外します。ただし、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起こりますので、保定装置をつけてきれいな歯並びを維持します。

⑧プレート除去手術

顎骨を固定している金属プレートを除去します。顎矯正手術の治療法や患者さんの希望によっては、プレート除去手術を受けない場合もあります。

まとめ

顎変形症の治療で外科矯正が必要となる場合は、公的医療保険適用になります。また、高額療養費制度も利用できるため、顎変形症の治療は費用負担を抑えやすいです。歯並びや噛み合わせが気になっている方は、この機会に歯科医師に相談してみてはいかがでしょうか。

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