歯列矯正で歯が動きやすい人とは? 歯が動かないケースも
歯列矯正を始めたくても、治療期間の長さが気になりますよね。
歯に矯正器具を付けている期間は器具が目立ってしまったり、食べ物が挟まってしまうなど不便なことも多く、できるだけ早く矯正が終わるプランを探している方も多いでしょう。
ですが、いくらスピーディーな歯列矯正プランを選んでも、歯が動かないケースや動きにくいケースもあるんです。
歯が動きやすい人と動きにくい人、全く動かない人にはどのような違いがあるのでしょうか。
公開日:2022/07/11
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目次
矯正治療の平均期間
歯列矯正は、いわゆるブラケットやワイヤーを付けて行う「ワイヤー矯正」、マウスピース型の矯正装置を付けて行う「マウスピース矯正」、ワイヤー矯正に加えて外科手術を伴う「外科矯正」など様々な種類があります。
古くから行われており、長い歴史を持つ矯正方法が「ワイヤー矯正」です。
歯にブラケットと呼ばれる器具を装着し、ブラケット同士をワイヤーでつないで力を加えて歯を動かしていくスタンダードな矯正治療ですね。
前歯から奥歯まで、全部の歯にブラケットを装着してワイヤー矯正を行う場合に治療にかかる平均期間は、およそ2年程といわれています。
早ければ1年半、長ければ3年以上かかる患者さんもいます。
歯並びの悪さの程度や噛み合わせの悪さの程度、歯の動きやすさなどで患者さんによって期間は異なりますよ。
歯並びが整った後も、まだ矯正治療は終わりません。
歯の後戻り(きれいな歯並びから歯列矯正前の歯並びに戻ろうとすること)を防ぐための保定期間があります。
保定装置を24時間使用するのを1年程度続け、その後も就寝時には毎日保定装置を使用することが一般的です。
歯を動かす期間は終わりがありますが、保定期間があるため矯正治療は一生続くと言っても過言ではないのです。
歯列矯正で歯が動きやすい人の特徴は
歯列矯正は、長く計画的に続けることが基本です。
ですが、少しでも早く矯正器具を外したい気持ちはとてもよくわかります。
そのために、歯列矯正で歯が動きやすい人の特徴をご紹介します。
歯が早く動けば、その分治療の終わりが早くなるかもしれません。
矯正器具を指示通りに使えている
第一に、基本的なことですが、歯科医師の指示通りに歯列矯正を進めることができているかどうかがとても大切です。
患者さん自身で付け外しをする矯正器具を装着している場合には、歯科医師に指示された通りにしっかり使いましょう。
患者さんの自己判断で使う時間や方法を変えてしまうと、矯正器具の効果が薄れてしまうかもしれません。
また、歯の噛み合わせの調整に用いるゴムかけの指示が出ている場合なども同様です。
歯科医師の指示を守ることで矯正装置の効果が十分に発揮され、治療が進みやすくなります。
指示に疑問がある場合も、何か意図があってその指示が出ているのかもしれません。
担当の歯科医師によく確認して、疑問をなくしてからきちんと使いましょう。
お口の癖が無い
矯正治療は、歯に力をかけて動かしていきます。
食いしばりや歯ぎしり、舌で前歯を押す癖があったり、頬杖をつく癖がある場合、歯列矯正によって歯にかけている力とは異なる力が歯に加わるため、矯正治療が計画通りに進まなくなることが。
お口周りの癖をなくしておくことで、矯正治療がよりスムーズに進むようになるかもしれません。
頬杖やうつ伏せ寝をしないように心掛けてみたり、食いしばりや歯ぎしり、舌の癖を無くすよう歯科で相談してみてくださいね。
歯並びがそこまで悪くない
もともとの歯並びがそこまで悪くない場合、歯を動かす範囲が少しですむので治療期間が短くなります。
ただし、患者さんから見たらそこまで悪くない歯並びでも、矯正歯科医から見たら治療が難しい歯並びであったり、噛み合わせが悪かったりすることもあります。
骨の代謝がよい
歯列矯正では、歯に力を加えて歯を支えている骨に吸収・造成を繰り返させることによって、歯の位置を少しずつ動かしていきます。
この骨の吸収・造成、それぞれの速度が速ければ、歯が動く速度が速くなります。
骨の代謝を良くするには、質の良い睡眠やバランスの取れた食事など、全身の代謝を良くすることがポイントとされています。
歯が動きやすいかどうかは事前にわかる?
歯が動きやすい人の特徴がわかっても、それに自分自身が当てはまるかは判断がしづらいですよね。
患者さん自身は当てはまっていると思っていても、医学的に見たら当てはまっていないことも。
歯科医院では
・お口の癖があるかないか
・歯並びの悪さの程度
の2つについて、事前の検査やカウンセリングの時点で確認してもらうことができますよ。
お口の癖が、実際にどの程度治療期間に影響を及ぼすかを明確に診断することは難しいものの、癖があることを事前に知っているだけでも大きな違いがあります。
患者さんのお口の癖を治すための治療やアドバイスをしたり、お口の癖の影響を最小限に抑える治療計画を立てることができるかもしれません。
元々の歯並びの悪さの程度を知っておくことで、どのように歯を動かしていく計画なのか、どれくらいの期間がかかりそうか、といったことを事前に歯科医師に確認することも可能です。
・骨の代謝のよさ
・患者さんが治療器具を指示通りに使えているか
の2点は、矯正治療開始前ではわからないことがほとんどです。
特に、患者さんの治療器具の使用については、患者さん自身でしっかりと意識して頑張るしかありません。
どうしても自分自身で管理する自信がない!という方は、できるだけ付け外しの必要がない治療器具を選んでほしいと伝えてみてくださいね。
骨の代謝は、実際に歯を動かしてみないとわからない部分です。
代謝の良さによる矯正期間の短縮は過度に期待せず、そうだったらいいな、くらいで考えておくといいかもしれません。
歯列矯正で動かない歯
ここまで歯が動きやすい人の特徴をご紹介しましたが、実はそれに当てはまっていても、歯が全く動かないことがあるんです。
全く動かない歯は、「アンキローシス(骨性癒着)」という状態だと考えられます。
アンキローシス(骨性癒着)とは、字の通り、歯と歯を支えている骨(歯槽骨)がくっついている状態です。
通常は、歯根と歯槽骨の間に歯根膜という組織があり、歯と骨が直接くっついているわけではありません。
この歯根膜は歯を守るクッションのような役割を持ち、一定の分厚さであろうとする性質があります。
矯正の力が加わって歯が押し付けられた歯根膜は、分厚さを確保するために骨を溶かします。
そこにまた力を加えて歯を動かして歯根膜が骨を溶かし歯が動いて…と続いていくのです。
ところが、歯を強くぶつけたり、歯と歯槽骨の間で炎症が起きたりすると、歯根膜が損傷・喪失することがあります。
歯根膜を失った歯は直接骨とくっつき、矯正の力を加えても動かないのです。
アンキローシスの診断は難しく、検査や診断を受けていても事前に発見できないケースは多くあります。
歯科用CTの導入などで以前よりもアンキローシスを見つけやすくなったといわれていますが、歯を動かしてみるまでわからないことも多々あるのです。
特に、患者さんが歯をぶつけたり、炎症を起こした記憶がない場合、事前のカウンセリングや問診でアンキローシスを疑わないため、発見できない可能性が高まります。
ぶつけた記憶やお口周りをケガした記憶がある場合は、事前に歯科医師に伝えておきましょう。
アンキローシスがある場合の矯正治療
アンキローシスはそのままでは歯を動かすことができません。
ですが、矯正治療を諦める必要はありません。
矯正期間は長くなりますが、矯正治療を行うことはできますよ。
まず、アンキローシスしている歯を動かすことを諦めて、その歯を中心にできる限り歯並びを整える方法です。
歯全体を理想の位置に動かすことができないため、患者さんが理想とする口元から少し異なったり、正中がややズレている状態になることもあります。
この方法の場合は、治療期間はそれほど長くならずにすむでしょう。
歯の大部分が骨とくっついている場合や、強固にくっついている場合はできる限り歯並びを整える方法をとることになります。
歯の一部分だけアンキローシスしている場合は、歯を一度歯槽骨から脱臼させ、歯を動かしていく方法もあります。
歯と骨を無理矢理剥がし、動かせる状態にして歯を移動させていきます。
一度アンキローシスした歯は歯根膜が戻ることはなく、時間が経つと再び骨とくっついてしまうので、素早く歯に力を加えて歯を動かす必要があります。
矯正治療が完了するまで繰り返し脱臼させて歯を動かすため、歯の寿命が短くなるといわれることも。
アンキローシスがある場合の矯正治療は、スピードを求めるよりも、治療内容を慎重に、よく相談して行うことをおすすめします。
まとめ
歯列矯正の治療期間の長さは、患者さん個々によって異なります。
インターネットで調べた自分で似ていると思う症例よりも、もっと治療期間がかかると言われた、なんてことも珍しくありません。
お口の中は意外と複雑で、自分自身では判断・診断しづらいものです。
患者さんが思ってもいなかったお口の問題点や矯正治療の問題点が実はあるのかもしれません。
もしも、治療期間に納得がいかない場合は、なぜ期間がかかるのか、どのくらいの期間がかかるのか、などをよく確認してみてくださいね。
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