矯正が痛くて耐えられない!痛みの対処法

矯正が痛くて耐えられない!痛みの対処法

矯正器具を付けて歯を動かし、きれいな歯並びや整った噛み合わせにする歯列矯正。
歯に力を加えて移動させる矯正治療は、個人差はありますが痛みを伴うこともあります。

また、お口の中で器具が当たる、口内炎ができたなどで痛みが起こるケースもあり、継続して治療を続けることが難しく感じるかもしれません。

まずは痛みが起こった時にできる対処法や、痛みを起こりにくくするための方法を知って対策してみましょう。

監修医師

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

目次

  1. 矯正治療は痛みがある
  2. 痛みが生じる原因と対処法
  3. 痛みが起きにくくするためには?
  4. おまけ:矯正以外での痛み

矯正治療は痛みがある

矯正治療は、歯に持続的な弱い力を加えて、今ある位置から物理的に動かすものです。

歯は歯槽骨(しそうこつ)という骨の中に埋まっていて、矯正器具によって歯に力が加わると、押し付けられた側の歯槽骨は溶けて吸収され、反対側の歯槽骨が形成されて歯が新たな位置に少しずつ動きます。
こうした人間の骨が作られるメカニズムを利用して、歯を少しずつ動かすことができるのです。

痛みの強さは矯正力や個人の痛みの感度、歯を動かす速度など様々な要因で異なり、また歯の移動時以外にも痛みを感じることがあるでしょう。

ですが、痛みは生じるものだとはいえ、痛みはできる限り避けたいですよね。

痛みが生じる原因と対処法

歯を動かす力

ワイヤーやブラケットなどの矯正器具で歯を動かす時、歯槽骨が溶けることで、押されるような痛みや圧迫されるような痛みを感じるのです。

一般的には、矯正器具を付けてから3~6時間ほどで徐々に痛みを感じ始め、2~3日間は強い痛みを感じやすく、1週間ほどで痛みが和らぐことが多いようです。

器具を調整してから数日間の強い痛みは、痛み止めを飲んで対応することも効果的です。
痛みに耐えられない場合はワイヤーの力を緩めてゆっくりと歯を動かすよう変更すると、ある程度は痛みを緩和できるでしょう。

ですがその分動きがゆっくりになってしまうため、当初の治療計画よりも治療期間が長引くことも。

食事などの物理的刺激

食事の際に、物を噛む時と歯の周囲の神経や血管を圧迫するため痛みを感じることがあります。

歯に負担をかけないよう硬い物は避け、柔らかい物を食べることがおすすめです。
お粥や柔らかく煮込んだうどん、豆腐、スープ、スムージーなど、なるべく歯で噛まずに食べられるメニューなどだと痛みを感じにくいんです。

もちろん矯正治療中ずっと食事が制限されるわけではありません。
徐々に痛みが緩和したら他の物も食べられるようになりますよ。

知覚過敏

矯正治療では歯が移動する際、歯を刺激から守っている歯茎が下がってしまうことで刺激を感じやすくなり、飲食の際にしみてしまうことが。

また、歯を動かす力が常に神経に刺激を与えていることから歯の感覚が敏感になっており、冷たいものや熱いものの刺激を強く感じ取るケースもあります。

一時的にすき間が空いている時は知覚過敏になることがありますが、歯の移動が終わるとすき間は徐々になくなっていきます。
冷たい飲食物などは刺激を感じやすいので、避けると良いでしょう。

器具が当たる・ワイヤーが刺さる

頬の内側や舌に矯正器具が接触していたり、口内炎ができてしまうと痛みを感じます。

矯正器具の中でもワイヤーとブラケットを使った矯正治療に起こりやすいものです。

特に歯が移動したことによって余ったワイヤーが飛び出して、頬に刺さって痛みが出てしまうケースが多いようです。

この場合は、「矯正用ワックス」をもらい、飛び出してきたワイヤーや口内炎が出来てしまう器具の回りに装着することでお悩みを改善できますよ。
ワックスを装着するときは良く乾燥させてから付けることで取れにくくなります。

また、ワイヤーが外れたり緩んだりすると、お口の中を怪我してしまう危険があるので、早急に歯科医師に直してもらいましょう。

外れていなくても、あまりにワイヤーが飛び出している場合も頬を強く傷付けてしまうので歯科医院に連絡してくださいね。

口内炎(噛んでしまう)

矯正治療を始めると、矯正器具で頬の内側などを噛んでしまうことがあります。
これは矯正器具にお口が慣れていないことなどが理由です。

矯正器具にもお口の変化にも徐々に慣れてくれば、誤って噛んでしまうことは減っていきます。

口内炎の対処法はこちらの思う存分食べたい!口内炎を治すコツをぜひご覧ください。

虫歯(矯正器具で清掃が十分にできていない)

矯正器具を装着しているために歯と歯のすき間などを十分に清掃できず、虫歯になることも。
汚れが残っていると、虫歯のほかにも歯茎が腫れて痛みが出てしまう原因です。

小さな虫歯であれば矯正器具を外さずに治療することも可能です。

虫歯の治療の際にワイヤーやブラケットが邪魔になる場合は取り外して治療を行います。
虫歯のような痛みを感じる場合は、歯科医師に相談して診てもらいましょう。

しかし矯正器具を外して虫歯治療をすると、その間歯の移動が止まってしまい、予定よりも矯正期間が長くなってしまうかも。

日頃から歯ブラシだけではなく、歯間ブラシも使用して歯磨きの徹底を心がけましょう。

噛み合わせが変わった

矯正治療中に一時的に歯が噛み合わなくなり、あごが痛いなどの症状が出る場合があります。

矯正治療中は歯が移動することで、今まで通り噛み合わなくなるのが普通であり、きちんと矯正治療が進んでいる状態です。
徐々に正しい噛み合わせになっていくので心配はありません。

痛みが強い場合は、少し歯を削って噛み合わせを調整するなどの改善ができるかもしれませんので、歯科医師に相談してみてくださいね。

矯正に必要な抜歯をしたから

矯正治療の方針で抜歯した場合、抜歯後は痛みを感じます。

一般的には数日で痛みは落ち着きますが、抜歯後数日してから痛みが強くなる場合には、ドライソケットと呼ばれる症状の可能性があるため治療を受けましょう。

マウスピース交換時

マウスピース型矯正装置で矯正治療を行っている場合、新しいマウスピースに交換すると強く痛む方もいます。

痛みが強い場合、装着時間不足などにより歯が動ききっておらず、新しいマウスピースと合っていない可能性があります。
歯科医師に相談するなど対処しましょう。

痛みが起きにくくするためには?

痛みを感じた時や期間を細かく歯科医師に伝えるようにしてみてください。

矯正の力に配慮してくれたり、セルフライゲーションブラケット装置などの痛みが起きにくい矯正器具に変更するなど、痛みが出にくくなるように調整してもらえるかもしれません。

そのほかにも、「矯正用ワックス」の処方や噛み合わせの調整、痛み止めを処方するなどによる痛みへの対処も相談して取り入れてみてください。

また、歯に力が加わっているときに血行が良くなると痛みが出ることがあります。
矯正器具の調整をした日やその翌日などは長風呂や激しい運動を避けてみてはいかがでしょうか。

ほかにも、食いしばりや硬いものの飲食を避けるなど歯への刺激となることを控えてみてくださいね。

おまけ:矯正以外での痛み

矯正治療を始めてからお口の中で何かしら痛みを感じると、全て矯正治療が引き起こす痛みであると思い込んでしまうことも。

実際は、虫歯を原因とした歯の根っこの炎症による痛み、歯ブラシがあたる向きが変わったことによる歯肉の退縮、親知らず周囲の歯周病、歯ぎしりなど、矯正治療で歯が移動している痛みとは関係のない痛みであることも多いようです。

矯正治療による痛みだと思っていたら、実は違う原因で治療が遅くなってしまった…となるとせっかく矯正治療でお口の中をきれいにしようとしているのに、もったいないですよね。

痛みの程度は診るだけではわからないことも多く、患者さんからの話が大切な情報です。
躊躇わずに、痛みがあることを担当の歯科医師に伝えてくださいね。

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