矯正治療で受け口は治る?受け口の種類、費用、大人の矯正とは
「下顎が大きくて目立つ」「しゃくれが気になる」「前歯で麺類を噛み切れない」などお悩みではありませんか?
それは下の前歯が上の前歯よりも飛び出ている「受け口」かもしれません。
受け口は、反対咬合とも呼ばれる悪い嚙み合わせ。
成長とともに悪化して目立つようになったり、治療が困難になるため早めの治療が効果的です。
しかし、大人になってからでも治療することは可能です。
お口元のコンプレックスを解消できるかもしれません。
ここでは、受け口の種類や治療方法、治療費用についてご紹介します。
公開日:2021/06/09 更新日:2021/09/07
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
「受け口」は3種類ある!?
通常、奥歯でかちりと嚙み合わせると上の前歯が下の前歯よりも前にありますが、反対に下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態を「受け口(歯科の専門用語で反対咬合)」といいます。
受け口とは上顎よりも下顎が前に出ている症状の総称であり、実は受け口は3つの種類に分けることができます。
この種類によって、大人の受け口治療の方法は異なってきます。
あなたはどのタイプの受け口でしょうか?
1.下顎の過度な発達(下顎前突症)
1つ目は、下顎の成長が著しく、上顎よりも大きく成長したために起こる受け口です。
骨格性反対咬合や下顎前突症などとも呼ばれ、骨格性の受け口となります。
骨格性の受け口である下顎前突症の原因の多くは遺伝が考えられていますが、子供の頃に無意識のうちに下顎を前に出していたり、長期間口呼吸をしており顎の位置が定まらなかったことなどの環境要因も原因となることがあります。
また、下顎前突症による受け口治療に外科手術が必要な場合は「顎変形症」と診断されます。
外科手術では、下顎を後ろに下げる手術を行うことが一般的です。
顎変形症と診断されると、外科手術を含めた矯正治療に公的医療保険が適用されます。
2.上顎の未熟な発達(上顎後退症)
2つ目は、上顎の形成不全(劣成長)が原因で起こる受け口です。
こちらも下顎前突症同様、骨格性の受け口です。
下顎の成長が問題なくても、上顎の成長に問題があり結果的に下顎が上顎より前に出てしまうことによって、下の前歯が上の前歯よりも前に出て受け口になるケースです。
上顎後退症などとも呼ばれ、主に口唇口蓋裂などの先天性疾患(遺伝)が原因となりえます。
下顎が前方に突出しているため、下顎前突症と区別はされないことが多いですが、外科矯正治療では上顎を前に出す治療が必要となります。上顎後退症による受け口治療に外科手術が必要な場合は、下顎前突症と同様に「顎変形症」と呼ばれることがあります。
3.歯並び
骨格性の受け口のほかに、歯並びによる受け口(歯性反対咬合)もあります。
歯は顎の骨(歯槽骨)に並ぶように生えていますが、上の前歯が内側(舌側)に傾き、下の前歯が外側(唇側)に傾くように生えていると、反対咬合になってしまいます。
下の前歯が上の前歯に引っかかってしまうため顎を下げることができず、受け口のように顎が前に出てしまうのです。
多くは、前歯の前後的な傾きに問題があり、顎の骨の成長に問題はありません。
子供の頃に舌で下の前歯を押してしまう癖などで下の前歯が前に傾斜することなどが原因として考えられます。
受け口を治す大人の矯正治療とは?
大人になってから受け口の治療を開始する場合は、受け口の種類によって矯正治療の内容が異なってきます。
基本的には、ワイヤーとブラケットを用いた一般的な歯列矯正治療を行うことで、上下の前歯が正しい位置関係になるように歯を移動させます。
歯列矯正では治療ができない骨格性の受け口の場合は、外科手術によって下顎の顎の骨を後ろへ下げるいわゆる「セットバック」や、上顎骨体移動術という上顎の骨を前に出す手術によって受け口治療を行います。
上顎後退症と下顎前突症は区別されないこともありますが、外科手術によって受け口を治す場合に、上顎を前に出すのか、下顎を後ろに下げるのか、手術の内容が大きく異なることがポイントです。
手術による横顔の改善や噛み合わせを上手く作るために上下顎両方の手術を行うこともあります。
受け口は歯列矯正治療だけで治る?
骨格に問題がなく、歯並びによる受け口の場合は歯列矯正だけで治療が完了することが多いです。
しかし、上記でご紹介した骨格性の受け口である「下顎前突症」および「上顎後退症」の場合は、歯並びを整える矯正治療だけでは受け口は治らないケースも多くあります。
また、大人の受け口治療は、お口の中の状態や骨格を精密に検査することで歯や顎の骨の位置関係を整える治療方法を決定することができますが、歯や顎の骨の位置関係が正常になれば、理想の口元になると限りません。
歯や顎を正常な位置関係に治療しても「まだ顎が突出している」と感じる方も、「引っ込みすぎてしまった」と感じるかもしれません。
歯や顎が正常な位置関係にあったとしても、患者さんが良いと感じるかは異なるということですね。
そのため、歯列矯正のみで治るかどうか、外科手術を併用するべきかどうかは患者さんの意志によってある程度変わると言えるでしょう。
外科手術に公的医療保険が適用されるかどうかは顎変形症の診断によって異なりますが、歯列矯正のみで歯や顎の位置関係を改善できる受け口でも、患者さんが希望すれば自由診療として外科手術を受けることは可能です。
また、近年ではマウスピース矯正で受け口治療ができると言われるケースが増えているようです。
しかし、マウスピース矯正は適用範囲が狭く、大幅に歯並びを治す必要がある場合や、骨格性の受け口の場合は治療は難しいでしょう。
受け口の治療の場合、患者さんが理想とする口元を担当の歯科医師と共有し、歯列矯正のみか外科矯正かを選択することが、少しでも理想に近付く上で必要と言えます。
受け口は早めの矯正治療が大切!
受け口は成長するにつれて治療が難しくなるといわれています。
子供の頃に上顎を前に引っ張って前歯の噛み合わせを改善する治療を開始していれば、矯正装置によって顎の発達を促すことができるため、将来的に外科手術を避けられる可能性が高まります。
子供の受け口治療は、顎の骨の成長が終わるまで長期間にわたる治療が必要となりますが早く始めるメリットも多いのです。
また、子供の受け口には、食べ物が食べにくい、発音がしづらい、顎が痛む、歯に強い負担がかかってしまうなどのさまざまなデメリットがあります。
年齢が上がるにつれて、口元がコンプレックスになってしまうことも。
お子さんの健康のためにも、受け口は子供のころから治療しておくとよいでしょう。
受け口の治療費はどのくらい?
受け口の治療は、基本的には自由診療です。
しかし、骨格性の受け口であり、顎口腔機能診断施設といわれる歯科医院で「顎変形症」と診断された場合には、歯列矯正と外科手術に公的医療保険が適用されます。
一般的な歯科医院や、顎口腔機能診断施設に認定されていない矯正歯科医院では、顎変形症と診断されても公的医療保険は適用されないので注意してくださいね。
また、公的医療保険が適用される場合の矯正治療は、見た目をきれいにするための矯正治療ではなく、お口の機能を回復させるための矯正治療とされるため、プラスチックブラケットやセラミックブラケットなどの目立ちにくい矯正器具や、裏側矯正は原則使用することができません。
治療内容も、見た目をきれいにするための治療よりも「歯並びや噛み合わせを正常にするための治療」が優先されますので、より審美的な矯正治療をお求めの方は、公的医療保険を適用して治療ができない可能性もあります。
公的医療保険が適用されない矯正治療の場合、80万円~120万円が費用相場とされています。また、裏側矯正やブラケットをオーダーメイドにするなどのオプションを付ける場合はおよそ100万~150万円とされています。(2019年11月 弊社調べ)
矯正費用の相場について詳しくは「矯正治療の費用相場と医療費控除のポイントを解説」をご覧ください。
公的医療保険が適用される場合はそのうちの3割が患者さん負担となりますので、30万~40万円程度でしょう。
外科手術を伴う場合は、もう少し費用が高額になります。
上記でも述べたとおり、公的医療保険を適用するかどうかで見た目を重視した矯正治療を行えるかどうかや、使用する矯正器具などが異なります。
費用だけで考えてしまわずに、受けたい治療を明確にしてから矯正治療を始めることで、矯正治療によるトラブルを避けることができますよ。
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