歯並びの乱れは呼吸にあり?アデノイド顔貌の原因と治療法
口ゴボなど口元にコンプレックスがある方、その悩みは「アデノイド」が原因かもしれません。アデノイドは咽頭扁桃のことです。アデノイドが肥大していることで、特有の顔つきになることをアデノイド顔貌といいます。こちらのコラムではアデノイド顔貌と口呼吸の関係、原因や治療法について詳しく解説しています。
公開日:2019/10/01 更新日:2022/11/18
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
アデノイド顔貌について~アデノイドとは?
アデノイド組織とはアデノイド(咽頭扁桃)が肥大している人に起こりやすい、独特の顔つきをアデノイド顔貌といいますが、そもそもアデノイドとはどんな組織なのでしょうか。
アデノイドとは喉の奥になる鼻と喉が繋がっている咽頭という場所に位置しているリンパ組織のことです。一般的にアデノイドは2歳頃から自然と大きくなり5~6歳をピークに徐々に小さくなっていき、そして思春期の頃にはすっかり目立たなくなります。
しかし、何らかの原因によりアデノイドが極端に肥大し炎症が起こることがあります。アデノイド増殖症が起こると、アデノイドと隣接する耳、鼻、呼吸器に影響を与えます。例えば急性中耳炎や滲出性中耳炎、鼻づまり、いびきなどがその一例です。
この状態を「アデノイド増殖症」といいます。 アデノイドが肥大化すること(アデノイド増殖症)の問題は「鼻呼吸がしづらくなる」こと。気道が狭まり、鼻からの呼気が遮断されるため、鼻呼吸から口呼吸に変化してしまうのです。
鼻呼吸は毛や粘膜など何層もの天然のフィルターが細菌やウイルスの侵入を守ってくれています。ですが口呼吸は鼻呼吸のようなフィルターがありません。だから細菌やウイルスが体内に侵入しやすいのです。
口呼吸により細菌やウイルスが体内に侵入しやすくなると、アデノイドが炎症し肥大が繰り返され、口呼吸が定着してしまいます。
そして口呼吸の癖が抜けずにいると、やがてアデノイドが肥大したままとなりアデノイド顔貌と呼ばれる独特の顔つきに。輪郭や表情、歯並びも変わってしまいます。では、なぜ口呼吸が顔立ちに影響してくるのか、以下にて詳しく解説します。
口呼吸がアデノイド顔貌の原因となる訳とは
なぜ口呼吸がアデノイド顔貌の原因となるのか。まずはアデノイド顔貌の特徴をご覧ください。
アデノイド顔貌の特徴
・ 面長(おもなが)な顔立ち
・ 上顎、下顎の横幅が狭い
・ 上あごの前歯が前突している
・ 噛み合わせが浅い
・ 歯並びが悪い
・ 下唇がめくれて厚い、乾燥している
・ 鼻が小さく狭い、鼻孔が小さい
・ 上あごに対し下あごが後方位にある
顔の輪郭や歯並びは遺伝などの骨格的な要因のほかに、指しゃぶりや頬づえなどの生活習慣に密接した癖によっても変化します。
口呼吸も生活習慣に関連した悪癖のひとつなのです。 口呼吸が習慣化すると、唇や頬、舌などの口周囲の筋肉の付き方が弱くなり、外側から歯を抑える力が衰えることで前歯が唇側に押し出されます。
すると、徐々に前歯が前方に傾き、前歯が突出した出っ歯(上顎前突)に。
前歯が唇側に傾斜するので口が閉じにくくなり、さらに口呼吸を加速させます。無意識にお口ポカンと開けた状態となるので口周りの筋肉が発達せず、面長な「締まりのない顔つき」になってしまうのです。
反対に下顎の発達は未熟なため上顎と比較して小さく、後ろに後退。いわゆる、「顎がない」状態を作り出してしまいます。上下の顎の大きさのアンバランスから噛み合わせや歯並びも崩れてしまいます。
口元の美しさは微妙なバランスで出来ています。つまり、口呼吸によって口周りの筋肉のバランスが崩れると、顔立ちも崩れてしまうということ。 発育期の顎の骨の成長にも影響がでてきてしまうのですね。
アデノイド顔貌だけじゃない!口呼吸のリスク
口呼吸による悪影響は輪郭の崩れだけではありません。口呼吸を続けると以下のような影響を生じる可能性があります。
・虫歯や歯周病のリスクが高まる
・舌癖が出現する
・上顎前突や開口など不正咬合(歯並びや噛み合わせの乱れ)が発現する
・歯が変色する
・口臭が悪化する
・風邪やアレルギーになりやすい
★口呼吸についてこちらの記事も読まれています★
出っ歯は指しゃぶりが原因だった?子供の癖と歯並びのこと
アデノイド顔貌を治療するには?
上記のコラムをご覧になり「今すぐアデノイド顔貌を治療したい!」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
アデノイド顔貌を治療するには、まずはその原因を明らかにすることが大切です。アデノイドの肥大が原因であれば、手術によってアデノイドの肥大を取り除き、口呼吸から鼻呼吸に誘導することが肝要です。
正しい呼吸を行わなければ、根本的な解決にはなりません。
アデノイド顔貌のさらなる治療には矯正治療が有効です。上顎と下顎の顎のバランスを整え、歯並びと噛み合わせを整えることで見た目と機能(噛み合わせ)が改善します。
ただし、上下の顎のサイズのずれが大きい場合は歯列矯正だけでは治療が難しいことがあります。このような難症例には歯列矯正と並行して外科的矯正治療を行うことで顎を動かして噛み合わせを改善することがあります。
顎の大きさや噛み合わせは人それぞれ異なるため、精密検査を行ったうえで担当医と相談してください。
思春期以降になってもアデノイド肥大が鼻呼吸を阻害している場合や、重度の急性中耳炎や滲出性中耳炎、鼻づまり、いびきなどの症状がある場合はやはり手術による改善が有効です。
口呼吸の元凶である肥大した咽頭扁桃を摘出・切除することで、アデノイド顔貌を早期に改善することが可能でしょう。
ただし、こちらの治療は耳鼻咽喉科の専門領域です。歯医者さんでは対応できないため専門の先生に相談しましょう。
まとめ
口呼吸は百害あって一利なし。口呼吸が定着すると歯並びや表情、顔の輪郭まで変化してしまいます。
ですから、矯正治療で見た目を整えても口呼吸を続けていると後戻りを起こしやすいのです。口呼吸の身近な改善策として、口を閉じてよく噛むことや就寝時に口にテープを張ることが良いとされています。
また、舌や口周りの筋肉を鍛える「口腔筋機能療法(MFT)」や「あいうべ体操」を取り入れることも呼吸の改善に期待できるでしょう。
歯並びの乱れは呼吸が関係しているのかもしれません。歯並びや噛み合わせが少しでも気になる方は歯医者さんへ相談してみましょう。
【PR】フィリップス ソニッケアー
歯科専門家使用率NO.1
あわせて読みたい記事
メディア運用会社について
株式会社メディカルネット(東証グロース上場)は、より良い歯科医療環境の実現を目指し、インターネットを活用したサービスの提供にとどまらず、歯科医療を取り巻く全ての需要に対して課題解決を行っています。
当サイト「矯正歯科ネット」を通して生活者に有益な医療情報を歯科治療の「理解」と「普及」をテーマに、自分に最適な歯科医院についての情報や、歯の基礎知識、矯正歯科などの専門治療の説明など、生活者にとって有益な情報の提供を目指しています。
矯正歯科歯科医院を探すなら「矯正歯科ネット」
矯正歯科治療を行なっている歯科医院を、全国から簡単に検索できます。お近くの矯正歯科歯科医院をお探しの場合にもぜひご活用ください。