矯正装置の種類|固定式装置編
【イラストで見る】歯列矯正を検討している方に向けて、矯正装置(固定式)の種類や特徴を紹介します。
公開日:2020/01/14 更新日:2021/11/16
監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
固定式装置の種類と特徴
ワイヤーとブラケットの矯正装置(マルチブラケット装置)以外の様々な装置
長期間、一定の弱い力をかけて少しずつ歯を動かす治療です。年齢や所見によって様々な種類の中から適した装置が使用されます。その中でも、患者様自身では外せない仕組みになっている「固定式装置」は、より計画的で効率的な治療を行うために、よく使用されています。
代表的なものとして、歯に接着させたブラケットに針金(ワイヤー)を通して動かしたい歯に力をかけるマルチブラケット装置があります。この他、歯並びやお口の状態によって、いろいろなタイプの固定式装置を使用する場合があります。
なお、矯正装置の中には、自分で取り外しができる装置もあり、これを「可撒式装置(かてつしきそうち)」といいます。代表的なものは、矯正治療で使用する「マウスピース」や、歯列矯正後の後戻りを防ぐ「保定装置(リテーナー)」、小児矯正で使用する一部の装置などがあります。
ここでは、固定式装置の種類や特徴をイラストとともにご紹介します。
マルチブラケット装置
歯に接着させたブラケットと呼ばれる小さな装置にアーチワイヤー(アーチ状のワイヤー)を通し、矯正力により少しずつ歯を動かして、歯並びを整える装置で、現在の歯列矯正で最も多く使用されるベーシックな装置です。
最近は金属製だけではなく、セラミック製や、プラスチック製など様々な種類の材料でできたブラケットが出ています。いろいろなタイプが開発されていて、セルフライゲーションシステムや舌側矯正装置もこの一種です。
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ナンスのホールディングアーチ(ホールディングアーチ)
永久歯を抜歯する歯列矯正の症例でよく使用される装置です。前から数えて4番または5番目の小臼歯を抜歯して歯を並べるスペースを確保する場合に、抜歯によりできた隙間に奥歯が移動してしまうことで、歯が予定通りに並ばなくなることを防ぎます。
左右それぞれの奥歯(大臼歯)に薄い金属の板を巻きつけて装着するバンドと、太い針金、上顎の歯の天井部「=口蓋部(こうがいぶ)」を抑えるプラスチックのプレート(レジンパッド)からなる構造によって、奥歯が必要以上に前方に移動してくるのを防ぐストッパーの役割として使用します。
パラタルバー(パラタルアーチ)
左右それぞれの奥歯(大臼歯)に薄い金属の板を巻きつけて装着するバンドと、太めの針金から構成された装置です。バンドと針金は一体化していて、針金は上顎の歯の天井部「=口蓋部(こうがいぶ)」を通る構造で、奥歯が内側に倒れることを防ぐために使用されることもあります。
また、歯を動かす力の支点となる固定源を補強する働きもあり、歯並びや目的によって針金の形は様々です。
リンガルアーチ (舌側弧線装置)
上記のパラタルバーと同じように、左右それぞれの奥歯(大臼歯)に薄い金属の板を巻きつけて装着するバンドと、針金で構成された装置です。歯列の拡大や、前歯の移動などに使用されます。
針金は、上顎の裏側の歯列のアーチに合わせ少し接触するように曲げられていて、針金の形状によって様々な用途があります。また、針金に細い針金(補助線)を付けることにより、部分的に歯を動かすことも可能です。
クワドヘリックス・バイヘリックス(緩徐拡大装置:固定式)
緩徐拡大装置は、患者様自身で取り外しができない「固定式」と取り外しができる「可撤式」の2タイプあります。
固定タイプは、左右それぞれの奥歯(大臼歯)に薄い金属の板を巻きつけて装着するバンドと、針金で作られた装置です。コイルのように曲げた針金を広げて調整した時に生じる力によって、歯列に横方向に弱い力を与えて、歯列の幅をゆっくりと押し広げます。一般的には、上顎用にクワドへリックス、下顎用にバイヘリックスという名称の装置が使用されます。
歯の生えるスペースが列が狭いためにおきた叢生(デコボコの歯並び)や、内側への傾斜、歯のねじれを改善するために使用され、緩徐拡大装置で歯列を広げた後にマルチブラケット装置を使うケースもあります。
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急速拡大装置
左右それぞれの奥歯(大臼歯)に薄い金属の板であるバンドと、太い針金、歯列の幅を押し広げる力を調節する拡大ネジから構成された装置です。装置の中央にある拡大ネジを回し、強い力をかけることにより、約2週間という短期間で顎の幅・歯列の幅を広げます。
まだ顎の骨が成長過程にある成長期(12歳前後まで)が主な対象年齢ですが、症例によって成長期以降も使用することがあります。小児矯正では、永久歯が生えそろう前に、急速拡大装置で顎の幅を拡大し、数か月保定してからマルチブラケット装置で歯列を矯正する治療方法が行われています。
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いくつかの注意点
(1) 違和感や痛みが出る
装置を付けることにより違和感や痛みを伴いますが1週間程度で慣れてきますので、最初は忍耐が必要です。お口の中が傷つき口内炎ができて痛みがある場合は、装置が当たって痛みが出ている箇所を調整してもらったり、ソフトワックスでコーティングを施すことで対処できます。また、矯正力による歯の痛みが強い場合、痛み止めを処方してもらうことができるので、必要に応じて服用しましょう。
(2) 食べ物にも注意が必要
基本的には普段通り食事をしても問題ないのですが、おせんべいのように硬い食べ物や、ガムやキャラメルなどのおやつは装置が外れたり、破損したりしてしまう可能性がありますので、できるだけ避けましょう。
(3) 歯磨きもしっかり
歯と装置の間や歯の裏側など、歯ブラシが届かず磨き残しが原因で虫歯になってしまうことがあります。虫歯の状態によっては矯正治療を中断し、虫歯の治療をしないといけなくなり、治療期間が長引くことになります。鏡を見ながら、歯の一本一本時間をかけて丁寧に磨き、同時に歯科医院で定期的にしっかりとしたケアを習慣づけるとよいでしょう。
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