りんさんの相談

カテゴリ:治療中のケア、調整

矯正後に上前歯が下方に下がってきている

こんにちは。

現在、33歳で出っ歯のため矯正中です。
治療開始から1年9ヶ月経過し、約3ヶ月前に上下左右4番目の抜歯をしました。
上の前歯が平行に下がらず、前歯が下方に垂れ下がって動いてきています。そのため、下記3点が気になりはじめました。()内は通院中の先生から相談後の回答です。

・上下の前歯の重なりが深くなり、食べものを噛むときに前歯表側が上の前歯裏側にあたる。上下左右1番のみのことです。(下顎を奥に引っ込めて噛むようにすること)

・上の歯茎がガミースマイルになってきた。(笑うときに唇の筋肉の使い方を意識して歯茎を見えないようにする)

・口紅やリップを塗って唇に伸ばす(馴染ませる)際に、人中の皮膚が伸びないので上唇と下唇を重ねにくい。上唇を伸ばした際に、鼻の下の長さが気になります。
(これは相談してないです)

歯の隙間が埋まれば、改善されるものなのでしょうか?
通院中の先生は、出来れば平行に下げたいけどしょうがないとのことでした。
申し訳ございませんがご回答いただけたら幸いです。
よろしくお願いいたします。

初めまして、マロニエ矯正歯科クリニックの栗田です。
ご質問にご回答いたします。

現在、抜歯スペースを閉鎖中に前歯が垂れ下がってきているということですね。
おそらく、担当の先生は最終的に何とかする予定かと思いますが、
矯正治療の実力・経験が伴わない、雑な治療をしている先生であれば、そのまま終わるかもしれません。

1年半もの間、抜歯せずに治療をしていたというのは少し不思議です。
一番最初に抜くか、後から抜くとしても半年〜1年後くらいに抜歯することが多いように思います。
最初は非抜歯矯正で治していたが、うまくいかない・口元を引っ込めるために抜歯矯正に変更したということでしょうか。


前歯を後退させるということは、ほぼイコールで前歯が垂れ下がる(挺出する)ということになります。
歯の抵抗中心(重心のようなもの)は歯槽骨に埋まっている部分にあります。
重心を押せば、歯は平行に移動しますが、埋まっている部分を押すことは出来ません。
生えている部分にブラケットをを装着して、ワイヤーで力をかけるため、重心とずれた位置を押すことになります。
そうすると、前歯は舌側傾斜しながら、挺出しながら、後方移動します。
なので、抜歯矯正をしている患者さんはすべて、質問者様と同じ状況になります。
もちろん、矯正歯科医師もそれを理解しているので、対策しながら治療をすることになります。

・ワイヤーにスピーカーブを付与する
ワイヤーを曲げ、前歯を唇側傾斜・圧下する力をかけ、舌側傾斜・挺出に対抗します。
前歯を後退させる前にあらかじめワイヤーを曲げておく先生もいますし、
垂れ下がってきてからワイヤーを曲げてリカバリーをする先生もいます。
前述した、ちゃんとしていない先生はこの作業を怠る(知らない)ので、どんどん過蓋咬合になります。
リカバリー中は前歯を下げられないので、担当の先生はリカバリーするタイミングを狙っているのではないかと思います。

・022ブラケットを使用する
歯に接着するブラケットは、実は大きく分けて2種類存在します。
018(オーワンエイト)ブラケットと、022(オーツーツー)ブラケットです。
この数字は、ブラケットに通せるワイヤーの太さを示しています。
018は細いワイヤーで治すことになり、022は太いワイヤーで治すことになります。
どちらのブラケットを選択するかで、治療の治し方やアプローチが全く異なります。
018の利点・欠点、022の利点・欠点があり、歯科医師の好み・考え方・流派で選択します。
022の方が、ワイヤーが硬いので、スペース閉鎖時に歯並びが崩れにくいという利点があります。
たった3ヶ月で前歯が垂れ下がってきたことを考えると使用しているブラケットは018ではないでしょうか。
018はスペース閉鎖時に咬み合わせが深くなりやすいので、前述のスピーカーブが重要になります。
垂れ下がり、リカバリーして、また垂れ下がり、またリカバリーしての繰り返しです。
018も治療初期と治療終盤が治しやすいという利点はありますが、ブラケットの特性を理解した治療が必要です。

・弱い力で歯を動かす
最適な矯正力というものがあり、歯が動くのにちょうどいい力具合があります。
矯正力が小さすぎると歯は動きませんが、大きすぎても適切に動いてくれません。
前歯を後退させる時にかける力が強いと、反作用として前歯が垂れ下がりやすくなります。
なので、垂れ下がりにくい力具合を計算して力をかけるようにします。
力を強くすれば、早く歯は後退しますが、反作用も強く出てしまい、歯並びが崩れていきます。
そうなるとリカバリーに結局時間を取られてしまうので、結局最終的に早く治ったりはしません。
前述のちゃんとしていない先生は、とりあえず早く歯を動かそうと力をかけすぎてしまう傾向があります。

・アンカースクリューを併用する
前述しているように、重心に力をかけられれば歯は平行に動いてくれます。
臼歯部の歯茎にアンカースクリューを埋め、アンカースクリューから前歯を引っ張ります。
すると、高い位置から歯に力をかけられるため、重心近くを引っ張れるため、平行移動しやすくなります。
ネットで「アンカースクリューを併用すると治療期間が短くなる」というのをよく見かけると思いますが、
これは歯が早く動くのではなく、歯が平行移動するためにリカバリーを減少させれらることが理由です。
アンカースクリューを併用した際の歯の引っ張り方、というのがあるので、ただ併用すればいいものでもありません。

上記の何かしらの方法を駆使・組み合わせながら、前歯の垂れ下がり問題をどうにかします。
ちなみに、私は022ブラケットで、弱い力で、アンカー併用しているので、垂れ下がる人はほとんどいません。
垂れ下がる人には早期にスピーカーブを併用しますし、ガミースマイルはアンカーで圧下して治します。
あえて垂れ下がらせて治すべき人もいれば、垂れ下がらないように治すべき人もいて、状況によりけりです。


最終的に適切な歯並び・咬み合わせにするためには、すべての問題点を解決する必要があります。
もちろん、質問者様の今の状況は良い状態ではありませんが、最終的に辻褄を合わせるのが矯正歯科医師です。
崩れないように慎重に進めていく先生もいれば、ざっくり治して最後に何とかする先生もいます。
学校のマラソンで、マイペースな人もいれば、最初に全力疾走して途中で失速する人もいるのと同じです。
そもそも、矯正治療というのは、一度歯並び・咬み合わせを崩し、最後にバッチリと再構築するものです。
だんだん咬み合わせが良くなっていくものではなく、途中の咬み合わせは悪く、最後に急に良くなります。
なので、途中であまり咬み合わせが良くないのは気にしないで大丈夫です。最後に治ります。

ただ、ガミースマイルに関しては、最終的に治るかもしれませんが、治らないかもしれません。
よく、口ゴボで口が閉じにくい人が、閉じにくさゆえに力んで口を閉じるため、下唇が上唇を持ち上げてしまします。
口ゴボの人は口唇閉鎖不全ゆえに鼻の下が短くなっている状態になっている人が多いです。
そのような人が抜歯矯正を行い、前歯が後退することで口が閉じやすくなり、上唇が本来の位置に戻ります。
抜歯矯正をしたらガミースマイルになった、鼻の下が伸びた、と言っている人はそういうパターンが多いです。
歯の位置が変わっただけで唇の筋肉・皮膚・脂肪が増減するはずがありませんからね。
ただ、質問者様はまだ前歯を引っ込め始めたばかりなので、純粋に前歯が挺出しているのでしょう。
明らかなガミースマイルになってしまうレベルの挺出であるなら、前述のリカバリーで治らないかもしれません。
その場合は、アンカースクリューを前歯の情報の歯茎に植え込み、前歯を圧下する必要があるでしょう。
アンカースクリューでガミースマイルを治すというのはポピュラーな治療になりますが、
担当の先生がやっていない(出来ない)可能性があるので、一度確認してもいいかもしれません。
前歯の圧下が出来ないのなら、今以上にガミースマイルにならないような治療をすべきかと思います。

担当の先生の、歯茎を見えないように笑え、という発言はかなり気になります。
矯正歯科医師であれば、最終的に治ります、アンカーで圧下できます、と言うと思います。
矯正治療は顔立ちを大きく変えます。見た目が良くなることもあれば下手をすると悪くなることもあります。
悪くならないようにどうすべきかを常に考えて治療するものなので、治療でガミースマイルにしていいはずはありません。
説明が面倒なだけで最後にどうにかするつもりかもしれませんが、治すつもりがないかもしれません。
不適切な矯正治療を行えば、ガミースマイルはさらに悪化し、最終的にもうまく咬み合いません。
抜歯までの治療期間が長いのも気になる点ですので、しっかりと担当の先生と話し合っておいた方がいいでしょう。

以上を、ご質問への回答といたします。よろしくお願いいたします。
  • りん(33歳 女性 )
  • 2022年09月22日23時39分
ご丁寧に本当に自分ありがとうございます。
ここまでの説明をしていただけなかったので感謝いたします。

初期は非抜歯治療でしたがより口元を引っ込めたかったために抜歯矯正に変更しました。
このまま前歯が垂れ下がり過ぎるのは困りますと伝えたところひどくなってきたら辞めると言われました。
私も知識が無いので先生を信じてお任せすることしかできません。
まだ前歯を引っ込め始めたばかりなので、純粋に前歯が挺出しているとのことでしたら不安ですがもう少し様子をみてみようと思います。

出来れば栗田先生の所で治療できれば良かったなと思いました。
詳しく教えて下さり知識が増えた分少しだけ不安がなくなりました。
本当にありがとうございました。
追加でご返答いたします。

前歯が垂れ下がり過ぎたらやめる、というのは矯正治療をやめるということでしょうか。
隙間も閉じきらず、まともに咬み合わずに治療を中断していいはずがありません。
治療を開始した時点で、抜歯治療に切り替えた時点で、矯正歯科医師は治療を全うする責任があります。
患者さんの都合・希望で治療を中断する場合以外で、歯科医師側から治療を放棄するのはあまりに無責任でしょう。
このペースでスペースクローズするとより垂れ下がるため、一度リカバリーをしましょう、という意味ならわかります。

また、非抜歯矯正では前歯が下がらず、口元が飛び出すことは最初から分かっていたはずです。
セファロ分析を用いて診断し、導き出された治療プランについての適切な説明はあったでしょうか。
抜歯すべき人と抜歯すべきでない人がいて、質問者様は最初から抜歯すべき人だったと思われます。
抜歯ケースでありながら、非抜歯矯正していたのは質問者様が抜歯矯正を拒んだからでしょうか。
非抜歯矯正の方が簡単だから、抜歯矯正は難しいから、という理由で非抜歯を推奨する歯科医師もいます。

質問者様への説明・対応・治療の流れをみると、あまりちゃんとした先生でないように思います。
矯正治療は、多少治療がブレてもすぐに軌道修正すれば何とか仕上がります。
しかし、誤った方向に進みすぎると、軌道修正が不可能になり、治療が「詰み」ます。
矯正治療は適切に行えば咬み合わせが改善しますが、適切でなければ咬み合わせが一生悪くなります。
せっかく感じた違和感を誤魔化し、「とりあえず信じる」というように思考停止していいものでしょうか。
この判断が、質問者様の咬み合わせを、人生をめちゃくちゃにしてしまう可能性もあります。
日常の矯正相談でも、この相談室でも、矯正治療を失敗されて苦悩している人がたくさんいます。
嘆かわしいことですが、世の中には真っ当でない矯正歯科医師もいて、矯正被害者を量産しています。
担当の先生から納得いく回答が得られるまで話し合うべきで、場合によっては転院なども必要かもしれません。
セカンドオピニオンなどで、他の矯正歯科医師に直接意見を仰いでもいいでしょう。
取り返しのつかない結果になり、後悔せぬように行動した方がいいかもしれません。
ただただぶっきらぼうなだけで、ちゃんと実力のある先生だと何も問題はないのですが。

相談を投稿する