小柳さんの相談

カテゴリ:その他

前歯4本オールセラミックの抜歯矯正について

  • 投稿者 小柳 さん [32才 女性 会社員] 2021/12/19/ 15:33
  • カテゴリー 抜歯と非抜歯矯正 その他 治療前
  • お悩みの歯 上あご右1番 上あご右2番 上あご左1番 上あご左2番

5年ほど前に、前歯の大きさと突出感が気になり、上前歯4本をオールセラミックにしました。
状態は改善されましたが、やはり歯の根本が移動しない分、突出感は完全には改善されません。
全体的に歯が大きく、密集しているため、犬歯の抜歯とワイヤー矯正の必要があると考えています。最悪はセラミックが傷つくor破損しても良いので、抜歯矯正をする方法はないのでしょうか。不自由はないのですが審美的に満足できておらずずっと悩んでいます。

4本のセラミックは連結でしょうか?
連結の場合、歯の問題だけでなく脳に障害が出る場合もあります。
脳・かみ合わせ治療からの見解です。
その時にはご相談ください。
さて、矯正の事ですが、行きあたりばったりの治療をしていてはダメですね。
セラミックをしてしまった後の矯正は矯正家にとってもやりにくいものです。
前歯にでこぼこがあるから犬歯の抜歯だとか。
とんでもないことですね。
自分の意見を通すのではなく、正しいかみ合わせとは何か?を考えて、これから一生使ってゆく歯のための矯正をしてくれる先生をじっくりと探してください。


セラミックが傷つくor破損しても良いのであれば、通常どうりに抜歯矯正を行えます。歯の根本が移動しない分、突出感は完全には改善されませんから、抜歯矯正をおすすめします。
はじめまして、マロニエ矯正歯科クリニックの栗田です。
ご質問にお答えいたします。

少し長くなるので、先に答えを申し上げますと、

『今から抜歯矯正を行い、前歯をひっこめることは、可能です。
ただ、せっかく被せたオールセラミッククラウンに関しては作り直しになる可能性が高い』
と思われます。

当院にも、同じような経緯でセラミック矯正後にワイヤー矯正を希望され、
治療を行っている患者様がおりますが、前歯は作り直しすべきと判断されました。



まず、セラミック矯正と呼ばれるものについてご説明いたしますと、
ご存じかと思いますが厳密には矯正治療ではありません。
矯正治療というのは、本来「歯を動かして歯並び・咬み合わせを良くする」治療です。
対して、セラミック矯正は、「歯自体は動かさず、歯を削って被せて見た目の並びだけを治す」治療です。
焼いていないのに焼きそばと呼ばれているカップ焼きそばみたいなものですね。

矯正歯科医師ではない、一般歯科医師が行うものなので、矯正歯科医師は基本的に否定派だと思いますが、
セラミック矯正とワイヤー矯正の違いについて簡単に説明させていただきたいと思います。


あえてセラミック矯正の良さについて説明すると、とにかく早く終わることです。
セラミック矯正は数回の処置で終わるのに対し、ワイヤー矯正は2〜3年かかります。
また、本数が少なければワイヤー矯正よりも安価である可能性もあります。
ブラケットやワイヤーなどの固定式器具をつけなくて済みますし、マウスピースを自分で着脱する必要もありません。
歯自体を動かしていないので、リテーナー(歯並びをキープする装置)も必要ありません。
こう書くと、お手軽な方法と思われるでしょう。ゆえに、セラミック矯正を選ばれたのだと思います。


では、セラミック矯正の良くない点について説明していきましょう。

「歯を削らなくてはならない」というのがそもそも歯にとって良いはずがありません。
歯を削ると基本的に歯の寿命が縮みます。歯とセラミックの間には接着剤が必ず介在し、
接着剤は経年劣化を起こし、隙間が生まれ、隙間から菌が入り込んで虫歯になったり歯周炎になったりします。

「神経を抜く」のもやらない方がいいです。歯の中には歯髄といって神経と血管が入っていて、歯は生きています。
神経とともに血管が無くなると、歯には血流が無くなり、枯れた木のようにもろくなります。寿命を縮めるということです。

「セラミックはいずれ壊れてやり直しになる」点も考慮すべきでしょう。
天然歯と比較して、被せものは永続的に維持されるわけではありません。長くもっても20〜30年ほど。
セラミックの破損、接着剤の劣化、歯質の崩壊、虫歯や根尖性歯周炎の発生などで、いずれやり直しになってしまいます。
リテーナーの不使用によりワイヤー矯正後の歯並びも崩れますが、セラミック矯正もずっと良い状態ではありません。

「前歯はさほど引っ込まないし、咬み合わせの改善も難しい」点はワイヤー矯正治療と比較するべきです。
歯自体を後退できるワイヤー矯正と違い、歯自体はそのままの位置で
歯冠(生えている部分)の角度を変えるだけなので、少ししか出っ歯は治りませんし、
歯槽骨(歯茎の中の骨)も引っ込まないので突出感もあまり変わりません。この点に満足されていないようですね。
前歯しか変えないので、奥歯も含めた咬み合わせの改善もできません。
矯正治療の最大の目的は咬み合わせを良くすることであり、その点が改善されないのでは健康面ではプラスと言えません。
最初から咬み合わせが良い人であれば問題ありませんが、良くない人は咬み合わせは悪いままです。

短期的に見た目を改善できるので、セラミック矯正を選ぶ患者様もいらっしゃいますが、
長い目で見たときにセラミック矯正はいつか歯にとってマイナスになるという事実をご理解しているでしょうか。

虫歯などで致し方なく歯を削る、神経を抜くのであれば医療行為として適切と思われますが、
やらなくて良い治療により歯の寿命を縮めてしまうのは歯科医師として望ましくはありません。
矯正治療にもリスクや不利益はありますが、セラミック矯正も同様です。
多くの一般歯科がセラミック矯正を行っていないということは、多くの歯科医師が良しとしていないからでしょう。


大切なのは、
「セラミック矯正を行うことによるリスクを事前に説明されていたか」
「ワイヤー矯正という選択肢もあることを事前に説明されていたか」
という点です。
ご納得済みでセラミック矯正をしていたなら、このようにネットで質問していないのではないかと思います。
期間的に、費用的に、見た目的に、ワイヤー矯正を選ぶことが出来ない方もいらっしゃるので、
セラミック矯正は一概に良くないものとは思いませんが、後悔されている方が多いように思います。



前置きが長くなりましたが、現状のお話をいたします。


「歯並びが密集して、歯が大きく、口元が突出している状態を前歯のみセラミックで突出感を減らした状態」
ということでしたら、前歯の歯軸を変えてしまっていることが予想されます。また、前歯も咬みあっていないのではないでしょうか。


歯は基本的にまっすぐです。釘と同じです。垂直的な力に強くなるように、骨の中に埋まっています。
本来の前歯は前方に傾斜していたと思いますが、歯を削って歯冠部分だけを角度を変えて出っ歯を治したのでしょう。
歯根軸と歯冠軸がずれている(歯の本体と生えている部分の角度が違っている)のは、歯としてはよくありません。
歯の根っこと頭がブーメランのように屈曲しており、曲がった釘と同じで、垂直的な力に弱くなっているはずです。
また、今の曲がったままの状態でワイヤー矯正を行うと、仕上がった時の歯茎の出っ張り具合も良くないと思います。

ちゃんと矯正治療を行うのであれば、もう一度本来の角度に歯を治すことが理想的と考えられます。
つまり、またセラミックを一から作り直し、また昔の歯並びに戻してから治療を行うということです。
せっかくセラミック矯正を行ったのに、またお金をかけて、また出っ歯に戻らなければならない、
ということを受け入れられないかもしれません。セラミック矯正を行ったことが完全に無駄になってしまいますから。
今のセラミックを被せたままの歯で治療をすることも可能ですが、理想的な仕上がりにならない可能性が高いということをご承知ください。


前歯や口元の突出感を改善するとした場合、抜歯矯正が効果的です。
抜歯する場合は上下4本抜歯したり、上だけ2本抜歯したりと色々なパターンがありますが、
多くの場合、第一小臼歯か第二小臼歯を抜歯します。状況やプランニンングで抜歯する歯や本数は変わります。
犬歯抜歯もありえますが、犬歯は重要な歯なので、よほどのことが無い限りは抜歯しないでしょう。
八重歯で犬歯が飛び出していたとしても、ほかの歯を抜いて移動させれば八重歯は改善されます。


セラミックを作り直す、もしくはそのままで矯正治療を行うとした場合、天然の歯ではないので、ブラケットが接着しにくくなります。
ブラケットを接着するため、セラミックの表面を傷つけてざらざらにする先生もいるでしょうし、
一度レジンという樹脂製の仮の歯に作り直しすべきという先生もいると思います。
セラミックを装着した歯では矯正治療自体無理だと断る先生もいるかもしれません。
サンドブラストという処置によって接着性を向上させれば、セラミック表面にブラケットを装着することは可能です。
天然歯と比較すると圧倒的に接着性が悪いので、ブラケットが外れやすくなってしまうとは思いますが。

現在はマウスピース矯正という手法があり、取り外し式のマウスピースを装着して治す方法です。
この方法なら、セラミックの歯に何もくっつけずに矯正治療を行うことも可能なので、やりやすいかもしれませんね。


崩れた歯並びに対して強引に見た目が治るようにセラミックが装着されているので、
ワイヤー矯正治療後の歯並びには見た目的にも現状のセラミックは調和しないと思います。
なので、理想はやはりセラミックを被せなおすことですが、時期としては矯正治療後がベストです。
咬み合わせが確定した状態で被せものを作製した方が、断然良い状態の被せものが入るからです。
「ワイヤー矯正治療中は歯をまっすぐにするために一度仮歯に作り替え、治療完了後に改めてセラミックを被せる。」
というのが、セラミック矯正後のワイヤー矯正を行う手順として、一般的なのではないかと思います。
セラミックを作り直すかどうか、仮歯をはめるかどうか、というのは、担当してくれる矯正歯科医師と相談して決めると良いと思います。


セラミック矯正を行ったが、審美的に満足していない、というのは、
セラミックを装着した先生との事前の話し合いが不足していたように思います。
ご本人の希望と、セラミックでできることの説明に齟齬があったわけですから。

きれいになりたくて、コンプレックスを払拭したくてセラミックをやったのに、良い結果を得られなかった。
この点についての患者様の葛藤や後悔、想像に難くありません。

ワイヤー矯正も利点・欠点は様々あります。セラミック矯正に劣るポイントもあるでしょう。
費用をかけ、時間をかけ、もう一度治療を行っていくわけです。
今度こそやってよかったと思えるように、矯正治療を進めていく際は、
信頼できる先生を見つけ、適切な説明のもとに、納得して治療を進めることができれば幸いであると思います。


かなりの長文となってしまいましたが、ご質問の回答とさせていただきます。

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