第31回 日本顎咬合学会学術大会・総会
▲ 会場 | ▲ 東京国際フォーラム外観 |
2013年6月29日(土)・30日(日)の2日間、東京国際フォーラムにて、第31回日本顎咬合学会学術大会・総会が開催され、全国の歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士、歯科助手、臨床研修医などの歯科関係者が5,000名以上参加しました。
▲ 内観 | ▲ 会場 |
2013年の大会は、『新・顎咬合学 -その魅力と可能性-』をメインテーマに開催されました。咬合を従来の一口腔単位でとらえるだけでなく、一全身単位でとらえていくテーマが多く取り上げられました。
下記に、注目を集めたプログラムの一部を簡単にご紹介致します。
■ 注目を集めたプログラム
座長: 渡辺 隆史 先生(本大会会長)
講演者: Baldwin W. Marchack 先生
補綴臨床医として著名なBaldwin氏の講演。健康的な歯肉組織とともに、審美的で機能的なインプラント治療を一貫して行うために、歯とインプラントの生体力学と、インプラント治療で使用する機器材料の特徴、欠点、利点を理解した治療計画の必要性を強調されました。欠損本数や欠損した歯の場所、歯肉や歯槽骨などの周囲組織の状態による、上部構造(クラウン)の材料とアバットメントの選択のポイントについて解説しました。
〜お口の健康とメタボ対策で、二度おいしい極意〜
座長: 夏見 良宏 先生/講演者:北折 一 さん
一般の人も聴講できる公開フォーラムでは、NHKの生活情報番組『ためしてガッテン』の専任ディレクターの北折一氏が、健康情報を伝える側の歯科医の視点、健康情報を受け取って実践する側である患者様(一般)の視点それぞれの立場にむけて、噛めること・咬合と全身の健康との関係や、信頼できる情報に基づいたダイエットの実践方法等について講演しました。
TV番組前半の導入部分や情報の伝え方によって、視聴率が変化する事例をあげながら、日頃、患者様に指導や説明を行う歯科医師と歯科衛生士に向け、患者様が前向きに話を聞いて、能動的に行動したくなるコンサルテーションのポイントを紹介しました。伝え方を工夫して、単なる「わかりやすい説明」から患者様が共感や興味をもてるような「知りたくなる説明」への転換を勧めました。例えば、一方的に「歯磨きしましょう」「歯を大切にしましょう」と訴えるのではなく、「しっかり噛むこと、噛めること」で得られるメリット(例:食事が美味しく感じる、脳を活性化させてやる気が起きる、等)を患者様に伝えて、お得感や共感をつかみ、意欲的な行動を引き出す「指導」から「支援」型のコンサルテーションが望ましいと説明されました。
講演者:渡邊 誠先生 先生/小林 義典宣 先生/下川 公一 先生
健康的な口腔を長く保たせる「健口長寿」を目指した歯科治療を実践するために必要な概念として、各演者から、より客観的で科学的な根拠に基づいた咀嚼機能の診断方法、健康的で正常な噛み合わせの基準、咬合治療における臨床のヒントなどが紹介されました。40年以上歯科臨床に携わっている下川公一先生の講演「咬合治療と顔貌の変化」では、これまで治療を担当した症例を紹介し、治療前と治療後の口腔内の変化とともに変わっていく、顔貌、顎運動の様子を紹介し、各症例の改善のポイントを解説しました。
顎口腔機能領域をよく理解し、適正な顎位と健全な顎運動を導くことで、その人本来の持つ美しい顔貌に近づけられると述べました。治療前後の顔貌と顎の開閉運動の変化に、会場内からは驚きの声も聞こえました。
■ その他のプログラム
- 【矯正】
「一般臨床医が知っているべき矯正の基礎知識」 座長: 山地 正樹 先生
講演者:宮下 邦彦 先生「矯正治療の可能性と限界」というタイトルで、矯正歯科と他科(一般歯科、口腔外科、補綴科・義歯、補綴科・インプラント、歯周科、顎咬合科)との違いについて発表がありました。診療科ごとの治療期間やアプローチの違いについて解説されました。また、抜歯後に矯正治療を行うことでインプラント治療を減らす可能性があることを述べられました。
- 【ランチョンセミナーC】
「〜 Digital Waterfall 〜 歯科医療を取り巻く New Technology」 座長:吉竹 弘行 先生
講演者:市岡 千春 先生
協賛:シロナデンタルシステムズ株式会社臨床例をもとに、シロナ社製のCTとCAMを利用して得られるデジタル情報について紹介されました。上顎総義歯の患者様の症例を治療の流れに沿って詳しく説明されました。
- 【臨床解剖学に即した無歯顎総義歯治療】
「-高度吸収顎堤への挑戦-」 座長:深水 皓三 先生
講演者:市川 淳 先生健康へと導く義歯を作るには、審査、診断が必要であることを述べられました。若手術者へ自ら規格模型を作製することを提案し、保存不可能な歯であってもできる限り抜歯を遅らせ排列の基準とすることや、咬合床を自ら作成することについて講演されました。術者によって、機能しやすい義歯形態を付与することが重要であると強調されました。
- 【生活に密着した歯科医療
その1 歯科訪問診療】
「食べること 生きること 〜地域ではじめる食支援〜」 座長:中村 順三 先生
講演者:五島 朋幸 先生訪問診療の介護現場での気づきについてお話されました。食事ができない寝たきりの患者様の口腔ケアをしっかり行ったところ、食事ができるようになった体験談などをお話されました。訪問診療はこれからまだまだニーズがあり、食事ができる口を作るという歯科の役割を果たすことが大切であるとを強調されました。
【展示ホール】
展示ホールでは、弊社もブース出展を致しました。矯正歯科ネットの姉妹サイトである「インプラントネット」をはじめ、歯科従事者のための就職・転職サイト「Denty」、インプラント治療後の保証サービスを提供する「株式会社ガイドデント」、歯科医療従事者のための総合情報サイト「DentWave」のご紹介をしました。また、アース製薬様の歯科医院専売のモンダミン「モンダミン・プロケア」のお試し体験ができる特別コーナーを設置し、たくさんの歯科医師・歯科衛生士の皆様がお集まりくださいました。
▲ 姉妹サイト「インプラントネット」のブース |
▲ モンダミン |
今回の学会では、咬合について歯科医療という観点だけはなく、口腔医学や医療など、他科との関わりを強調してお話される講演者が多かったです。私たちが健康で豊かな生活を送る上で、咀嚼が全身の健康に影響を与える影響などを明らかにし、患者様目線に立った歯科臨床を追究する姿勢が印象的でした。
レポート:矯正歯科ネット運営部※講演の発表内容については、当サイトにおいて必ずしも保証するものではございません。