監修医師
歯科医師 古川雄亮先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
歯列矯正を受ける多くの方が心配していることが「抜歯が必要か?」についてです。できれば抜歯せずに治療したい方が大半です。非抜歯の治療のデメリットには何があるのでしょうか。
非抜歯の治療により口元が突出する「ゴリラ顔」になるのでは、という話を聞くケースもあるようです。非抜歯の矯正治療によってゴリラ顔になると言われる理由を解説します。
公開日:2025/04/07
歯科医師 古川雄亮先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
・お口の中の状態によって、非抜歯矯正によって口元が突出する可能性がある。
・非抜歯矯正適応外のケースでの矯正も、ゴリラ顔の原因になることがある。
・狭いスペースで無理に歯を並べようとすることがゴリラ顔の原因になり得る。
顎のスペースと歯の大きさが合わず、きれいに歯が並んでいないことが多いです。歯を抜かず無理に並べて矯正しようとすると、歯が出て口元も突出したりします。結果、口元が出て盛り上がるゴリラ顔になる可能性があります。
矯正治療で抜歯することがあるのは、顎の大きさが小さい場合があるなどが理由です。歯を抜かずに小さい顎の隙間にすべての歯を並べようとすると、歯が前に押し出されて口元が突出してしまいます。
口元の見た目が悪くなるだけでなく、噛み合わせにも無理が出て健康面(機能面)にも悪影響を及ぼす可能性があります。
抜歯をせず前歯だけの矯正を無理にしたり、非抜歯適応外のケースで矯正することも、ゴリラ顔の原因になる可能性があります。
→詳しくは、現役の歯科医師が回答している「矯正歯科ネット」の相談室『歯科矯正ネット ゴリラっぽい口元になった気がします』をご覧ください。
非抜歯矯正のデメリットとして、よく誤解されているポイントがあります。「後戻りのしやすさ」と「治療期間の長期化」です。
無理な非抜歯矯正によって歯が後戻りしやすくなることも考えられます。ただし、抜歯や非抜歯にかかわらず、矯正治療直後の歯列は後戻りしやすい状態です。保定装置(リテーナー)を装着していない場合、後戻りして歯並びが動いてしまう可能性が非常に高くなります。
「抜歯矯正よりも治療期間が長い」と誤解されることもあるようですが、抜歯・非抜歯という条件だけで治療期間が変わるわけではありません。歯列全体の状態、歯並びの乱れ方、個人で異なる歯の動くスピードなど、さまざまな条件により治療期間が変わってきます。
顎が小さい方、歯の幅が顎に対して大きい方は、歯をきれいに並べるためにスペースを確保する必要があります。そのための手段として、抜歯も検討されます。
矯正治療において抜歯をするかどうかの決め手となるポイントは何でしょうか。解説します。
歯列模型やレントゲン画像などで、歯がどれくらいデコボコしているかを確認します。デコボコの度合いが大きいようであれば、抜歯を検討する可能性が高くなります。
また、審美的な観点で抜歯か非抜歯かを判断する場合があります。
顎の大きさが不十分だと、無理に歯を並べて噛み合わせが悪くなる可能性があります。歯を抜かずに噛み合わない歯が多くなってしまうよりも、歯の本数を減らしたとしても正しく噛み合う方が、健康に寄与するでしょう。
セファログラムは頭部X線規格写真ともよばれるもので、横顔や正面のレントゲン写真を撮影できます。上下の顎の大きさ、ズレ具合、顎の形態、前歯の傾きなどがわかります。矯正治療では、必須の検査と言えるでしょう。
矯正治療にはさまざまな知識が必要なばかりでなく、多様な経験と高い技術をもっていることも大切です。歯科医院を選ぶ際は、常勤の矯正歯科医師がいることや、矯正の知識をしっかりともっていること、日本矯正歯科学会の認定医の在籍していること、治療実績があることなどの情報を確認しましょう。
患者さんにとって大切なのは、抜歯の有無により治療結果がどのように変わるのか理解することです。非抜歯によるメリットやデメリットを伝える歯科医師であれば、患者さんが正しい判断材料を得ることになり、納得したうえで治療を受けられます。メリットだけでなく、デメリットも教えてくれる歯科医院を選ぶと良いでしょう。
矯正治療は費用が高く、治療が長期間にわたることが多いです。治療内容などに納得したうえで治療を受けるためにも、わからないことを放置せず歯科医師に確認しましょう。
質問するのが苦手な方は、相談内容を事前に整理しておくようにしたり、大切なことをメモをしましょう。わからないことを何度質問しても構いません。歯科医師とより良い関係を築きながら、治療への理解を深めましょう。
顎のスペースが少ないにもかかわらず非抜歯矯正を無理にすると、ゴリラ顔になる可能性はあります。ただし、非抜歯矯正が原因とは限りません。現在の歯並びの状態を詳しく知り、非抜歯矯正のメリットやデメリットを正しく理解するために、歯科医院を慎重に選び、わからないことは積極的に質問をするようにしましょう。