監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
歯並びをきれいに整えたいと考えていても、矯正治療は時間がかかる点が気になりますよね。治療期間が長いことで仕事にも支障をきたす可能性を考えると、なかなか治療に踏み切れない方も多いのではないでしょうか。
治療期間の短縮を図りたい方に知っておきたいのが、「コルチコトミー」という矯正治療法です。コルチコトミーの概要、メリット・デメリット、費用なども解説します。
公開日:2025/02/17
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
コルチコトミーとは矯正治療法の一つで、別名を「歯槽骨皮質骨切除術(しそうこつひしつこつせつじょじゅつ)」といいます。傷ついた骨が回復するときに歯が早く動きやすくなる考え方を活用した治療法で、矯正治療と併用することがあります。
歯槽骨(歯を支える骨)の表面には皮質骨というものがあります。コルチコトミーでは、皮質骨の一部を外科手術で除去したり削ったりして、その箇所が自然治癒するタイミングで歯を動かします。コルチコトミーによって、通常の矯正よりも歯が移動しやすくなります。
コルチコトミーはいわゆるスピード矯正と呼ばれるもので、光加速装置を使う方法など他にもさまざまな治療法があります。
医療法人社団 銀座矯正歯科がスピード矯正をした患者さんに行ったアンケートによると、治療法にコルチコトミーを選んだ人の割合が「43.1%」と最も多くなりました。また、2位以下は「オーソパルス(39.8%)」「アクセルデント(14.0%」と続きました。
参考:医療法人社団 銀座矯正歯科のプレスリリース
通常の矯正治療よりもコルチコトミーが優れているといえる点を3つ紹介します。
コルチコトミーによって歯の移動が促進されることは、大学の研究などでも報告されています。すでに多数の臨床報告もあり、通常の矯正治療よりも治療期間を短縮できる可能性があります。
矯正治療完了後は、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起きます。コルチコトミーの術後は、元の状態よりも骨の強度が高まることにより、後戻りの防止が期待できるという報告があります。
コルチコトミーでは皮質骨の一部を除去したり削ったりして、その箇所が自然治癒する力を利用するため、単に矯正だけを行なうよりも歯を大きく動かしやすいことが特徴です。通常の矯正治療では抜歯が必要なケースでも、非抜歯で矯正治療を進められる場合があると考えられています。
魅力的なメリットがあるコルチコトミーですが、以下のデメリットも理解したうえで治療を選択することが大切です。
皮質骨除去の手術が必要で、術後は細菌感染に注意しなければなりません。手術箇所に腫れや痛みが生じる場合があります。
全ての症例に適応できるわけではなく、患者さんの歯並びや健康状態などによっては、コルチコトミーを併用した矯正治療は行えないとされています。
基本的に、コルチコトミーは通常の矯正治療とは分けて扱われます。そのため、通常の矯正治療の費用に加えて、コルチコトミーの費用がかかります。
コルチコトミーは高い技術力が必要です。そのため、全ての歯科医院がコルチコトミーに対応しているわけではありません。事前に対応している歯科医院を探す必要があります。
実際の治療は以下のような流れで行なわれます。
歯並びや健康状態などを考慮し、レントゲン撮影などの検査も行なったうえで、コルチコトミーが適応できるかを診断します。適応できる場合には、治療計画や注意点などの説明があり、患者さんが納得したうえで治療開始となります。
コルチコトミーでは局所麻酔をするため、手術中の痛みは心配いりません。また、入院の必要がない日帰り手術です。
術後の状態を十分に考慮したうえで矯正装置を装着し、歯を動かしていきます。
はじめのうちは週1回程度の頻度で通院し、歯の動きやお口の状態をチェックします。
歯が計画した位置に動いたことを確認し、矯正装置を除去します。また、後戻りを防ぐために保定装置を装着します。
歯科医院や患者さんの歯の状態によって変わりますが、片顎10万円~40万円が目安となります。
矯正治療のデメリットの一つは治療期間が長いことです。しかし、コルチコトミーを併用した矯正治療であれば、通常よりも治療期間を短縮できる可能性があります。
通常の矯正治療よりも費用が高く、外科手術が必要などのデメリットがあるものの、「早く矯正治療を終わらせたい」という方に適した治療法といえます。矯正装置の装着期間をできるだけ短くしたい方は、コルチコトミーを併用した矯正治療を検討してみてはいかがでしょうか。