監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
自分の歯並びを気にしたことがない方も、「もしかしたら歯並びが悪いのかも?」と疑問に思ってしまうと「歯列矯正を受けた方がいいのかな?」と心配になるでしょう。そもそも、どのような人が歯列矯正を受けるべきなのでしょうか。歯列矯正が必要なケースや、止めた方が良いケースなどについて解説します。
公開日:2024/12/27
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
・「顔や歯並びが左右対称である」「歯が重なっていない」といった場合は、歯列矯正の必要がない
・叢生(デコボコの歯並び)や空隙歯列など、不正咬合がみられる場合は歯列矯正が必要な可能性もあり
・定期的で長期的な通院が難しい方、自己管理が苦手な方は歯列矯正に向いていない
次に挙げるような歯のお悩みは、歯列矯正を検討するポイントになります。
歯並びの悪さがコンプレックスになり、口元を手で隠して笑う癖がつく人がいます。特に思春期にコンプレックスを抱く人が多く、自分の表情に自信がもてず、本来の明るい表情を出せないケースもあります。
歯並びが乱れてデコボコになっていると、丁寧に磨いても汚れを落とし切れないことがあります。食べ物も挟まりやすい状態になります。虫歯や歯周病が起こりやすいでしょう。
歯並びが悪いと、上下の歯が噛みにくくなります。すると、食べ物を噛む機能が低下し、咀嚼(そしゃく)の効率が悪くなります。
また、不正咬合の種類によっては特定の音が明瞭に発音できなくなります。飲み込む動作がうまくできない場合もあるなど、歯並びの悪さはお口の機能にも影響を及ぼします。
顎関節症という病気にかかると、お口を開けにくくなったり、お口を開けたときに音が出たりします。顎関節症はさまざまな原因で起こるとされています。
そのひとつが噛み合わせの悪さです。悪い歯並びは顎の関節へ大きな負担をかける場合があります。
歯列矯正が必要ない人の特徴をチェックしましょう。
前歯を中心に左右対称になっていれば、噛み合わせに大きな問題がない可能性が高いです。一方、上下の歯を噛み合わせたときに、顔の中心の「正中(せいちゅう)」が前歯の中心からズレていた場合は、噛み合わせが正しくない場合があります。
歯がまっすぐに生えていれば、噛み合わせも正しいケースが多いです。重なり合うように歯が捻れて生えていたりすると、歯列矯正の必要性があります。
歯が重なって生えるような不正咬合は、汚れが残って歯垢が形成されやすい状態です。歯が重ならずきれいに生えていれば、歯列矯正を受ける必要がないでしょう。
「不正咬合(ふせいこうごう)」には種類があります。歯列矯正を検討した方が良い不正咬合を解説します。
歯が重なり合うように生えている状態です。重なったところは歯ブラシが届きにくく、汚れが残って虫歯や歯周病にかかりやすくなります。歯を並べるスペースが不足しているために起こるもので、日本人に多くみられる不正咬合です。
歯と歯の間に大きな隙間ができている状態です。「すきっ歯」とよばれています。叢生とは反対に、スペースに対して歯のサイズが小さいと、隙間ができてしまいます。また、舌で押し出そうとする癖(舌突出癖)が原因となる場合もあります。
上の歯が下の歯よりも大きく前に出ている状態で、いわゆる「出っ歯」になります。原因としては歯の位置に問題があるものと、上下の顎のサイズがアンバランスであるものが挙げられます。指しゃぶりや唇を歯で噛む、口呼吸の癖があると、上顎前突になるリスクを高めます。
「受け口」とよばれ、下の前歯が上の前歯より前方に出ている状態です。上顎前突と同じように、原因としては歯の位置関係と顎骨のアンバランスの2つがあります。
奥歯をしっかり噛んだとき、上下の歯の間に隙間ができる状態が開咬です。長い顔立ちの人に多く、食べ物を噛む力が弱い傾向です。遺伝以外に舌突出癖や指しゃぶりなどが原因となる場合があります。
噛み合わせたときに上下の歯が左右に交叉(こうさ)する状態になるもので、「クロスバイト」とよばれることもあります。同じ側で頬杖をつく、同じ側を下にして寝る、といった日常的な癖によって交叉咬合につながる可能性があります。
奥歯で噛むと、上の前歯が下の前歯を覆うほど深く噛み込んでいる状態です。歯ぎしりや食いしばりなどの悪癖や、奥歯を失ったまま放置する、といったことにより過蓋咬合が出現します。
次のようなケースに当てはまる方は、歯列矯正に向いていない可能性があります。
歯列矯正の治療期間は、2~3年かかることもあります。この間に学校の卒業や入学、就職にともない、引っ越しを予定されている場合は、治療の継続が難しくなります。
また、異動が起こる可能性がある方も、同様に治療を受けにくいでしょう。また、定期的に通院するのが難しい方も歯列矯正を受けにくいでしょう。
現在、虫歯や歯周病の方は、そのままでは歯列矯正を受けることができません。歯列矯正を希望される場合は、虫歯や歯周病を先に治療して歯列矯正を開始することになります。
歯列矯正では自己管理が必要です。固定式のワイヤー(ブラケット)を使った治療では、虫歯にならないように丁寧に歯を磨く必要があります。取り外しができるマウスピース型の矯正装置もありますが、1日20時間以上の装着時間を厳守するなどの自己管理を徹底しなければなりません。
歯列矯正が必要か判断する材料としては、歯並びの悪さに対するコンプレックスの有無や、歯並びが悪く虫歯や歯周病にかかりやすいなどです。
反対に、歯がまっすぐ生えている、顔や歯並びが左右対称である、歯が重なっていない状態であれば、歯列矯正は基本的に必要ないでしょう。
ただし、歯列矯正が必要かの判断は難しいでしょう。客観的・専門的な意見を知りたい場合は、歯科医院で相談してみましょう。