監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
インビザラインによる矯正治療は公的医療保険が適用されません。高額な治療に尻込みしてしまいますよね。
少しでも費用を抑える方法として確定申告の「医療費控除」を紹介します。
公開日:2024/12/12 更新日:2024/12/13
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
・インビザライン矯正は、噛み合わせの改善が目的なら医療費控除の対象になる
・医療費の明細書を作成し確定申告の際に提出する(領収書は保管)
・還付金額は所得金額によって大きく異なる
1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が一定の金額(10万円)を超えたとき、確定申告で支払う所得税の一部が還付される制度です。医療費は自身だけでなく、同一生計の家族の医療費も計算に含まれます。
インビザラインによる治療であれば、すべてが医療費控除の対象になるというわけではありません。条件をよく確認し、ご自身の治療が医療費控除に当てはまるか確認しましょう。
矯正治療には、「噛み合わせの問題を解決する」という健康(機能)改善を目的としたものもあれば、「見た目を美しくする」という審美改善を目的としたものもあります。出っ歯や叢生(歯並びの乱れ)のように、歯並び改善による悪い噛み合わせ[不正咬合(ふせいこうごう)]を治療するなら、医療費控除の対象です。
歯並びの見た目の改善のみを目的とした治療は医療費控除の対象となりません。インビザライン矯正も同様です。
子どもの矯正治療(小児矯正)の場合、子どもの成長をコントロールしつつ不正咬合を解消するのが主な目的で、基本的に医療費控除の対象です。
大人の矯正治療(成人矯正)は、歯並びのみをきれいにする審美目的の場合もあります。医療費控除の対象になるとは限りません。ただし、患者さん本人が「歯列をきれいにしたい」という想いで歯科医院に通ったとしても、歯科医師が「噛み合わせにも問題があるのでそちらも改善する」と判断すれば、医療費控除の対象です。咀嚼(そしゃく)や咬合の機能改善が目的であれば、医療費控除を受けられます。
大人の矯正治療(成人矯正)は、歯並びのみをきれいにする審美目的の場合もあります。医療費控除の対象になるとは限りません。ただし、患者さん本人が「歯列をきれいにしたい」という想いで歯科医院に通ったとしても、歯科医師が「噛み合わせにも問題があるのでそちらも改善する」と判断すれば、医療費控除の対象です。咀嚼(そしゃく)や咬合の機能改善が目的であれば、医療費控除を受けられます。
医療費というと「歯科医院で支払った金額」「薬局で支払った処方薬の金額」というイメージをお持ちではないでしょうか。実は、ほかにも医療費の対象となる費用が細かく決められています。
・病院の治療費
・精密検査料
・診断料
・インビザラインの装置にかかった費用
・通院時に支払う矯正装置の調整料
・通院にかかった交通費(バスや電車などの公共交通機関)
・付添人の交通費
・処方薬の費用
・ドラッグストアで購入した医薬品
上記の項目が医療費控除の対象です。申請するときに領収書や診断書の確認が必要になることがあるため、保管は必須です。
通院に使った自家用車のガソリン代、タクシー代、通院時の駐車場の費用、審美目的の治療、分割払いの金利、手数料、予防や健康増進を目的としたサプリメント、予防接種などは、医療費控除の対象外です。
医療費控除の方法は、次のSTEPを踏めば難しくありません。
→なお、会計ソフトを提供しているサービスを利用してスマホで確定申告を行う方法については「確定申告(医療費控除)をスマホで行う方法」の記事をご覧ください。
確定申告書、医療費控除の明細書が主な提出書類です。どちらの書類も、税務署または国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。
参考:国税庁
1年間分の医療費通知書、領収書、公共交通機関の記録、それに家族の医療費を確認しながら明細書を作成します。
源泉徴収票や他の控除関係書類(ふるさと納税・生命保険など)を確認しながら、確定申告書を作成します。記入方法がわからない場合は、最寄りの税務署や、地域の確定申告相談会などで教えてもらうことができます。
確定申告書と医療費控除の明細書を最寄りの税務署に提出します。郵送やe-Taxでも提出可能です。確定申告書の提出期間は、基本的に毎年2月16日~3月15日になります。
領収書などの資料は提出義務がありませんが、保管義務があるので大切に取っておきます(白色申告は5年間、青色申告は7年間です)。
過去の医療費についても、5年まではさかのぼって更正手続きできます。
医療費控除の計算方法は、次のとおりです。
【その年中に支払った医療費】-【保険金などで補てんされる金額】-【10万円または所得金額の5%(どちらか少ない額)】=【※医療費控除額】
※医療費控除額は最高200万円
上記の計算方法より、所得金額200万円が分岐点となります。
所得が200万円未満の場合、
【その年中に支払った医療費】-【保険金などで補てんされる金額】-【所得金額×5%】=【医療費控除額】
が計算式になります。
所得金額が170万円、1年間の医療費が80万円だった場合、
80万円-(170万円×5%)=71万5,000円
所得金額が170万円の場合、所得税率が5%となるため、
71万5,000円×5%=3万5,750円
が還付金額となります。
所得が200万円以上の場合、次の計算式になります。
【その年中に支払った医療費】-【保険金などで補てんされる金額】-【10万円】=【医療費控除額】
所得金額が300万円、1年間の医療費が80万円だった場合、
80万円-(10万円)=70万円
所得金額が300万円の場合、所得税率は10%となるため、
70万円×10%=7万円
が還付金額となります。
審美目的でなく、噛み合わせや咀嚼の機能回復が目的であれば、インビザライン矯正も医療費控除の対象です。
医療費は、通院にかかる交通費も対象となりますが、自家用車のガソリン代や駐車場代などは基本的に対象外となるなど、細かい規定があるので注意しましょう。また、医療費控除を申請するには、ご自身で確定申告をする必要があります。
治療が医療費控除の対象となるかどうか心配な方は歯科医師に確認しましょう。