歯列矯正で一気に4本抜歯すると後悔してしまう理由｜抜歯のメリットも

患者さんの歯の幅が顎のスペースよりも大きくなっている場合、抜歯せずに矯正治療を行うと、歯が外側にはみ出し、お口が完全に閉じなくなる危険があります。そのような事態を避けるため、患者さんの状態によっては、歯を並べるスペースを確保するために、抜歯の必要性があります。

矯正治療で抜歯する際は、基本的に前から数えて4番目と5番目にあたる、第一小臼歯と第二小臼歯を抜くケースが多いです。場合によっては親知らずを4本抜歯して対応することもあります。抜歯箇所は患者さんの歯列や噛み合わせの状態によって変わりますが、上下左右それぞれ1本ずつ抜く方法が多いです。

抜歯で噛み合わせが悪化すると、ものを噛む力が低下する可能性があります。大きなものや硬いものを噛む際に歯は重要で、抜歯によって食事がスムーズにできなくなる可能性がある場合は注意が必要です。

抜歯の影響で歯並びや噛み合わせが悪くなると、特定の音が発音しにくくなる可能性が出てきます。人によっては、その影響で会話の際にコンプレックスを抱えてしまうケースもあり、抜歯による発音の難易度上昇が、少なからず日常会話に影響を及ぼす可能性を考慮しなくてはなりません。

抜歯の影響で噛み合わせが変化すると、顔のバランスや顔の筋肉への負荷のかかり方も変わってくる場合があります。それらの影響によって、以前とは顔そのものが変化してしまう可能性も出てくるため、見た目を気にする人にとっては、抜歯を伴う治療はリスクの高い選択肢となってしまうかもしれません。

⇒抜歯によって顔が変わることを懸念している方は、矯正歯科ネットのサイト内で歯科医師が回答している相談室に投稿された「抜歯したことを後悔しています きのこさんの相談」をご覧ください。

患者さんが、矯正治療のために抜歯が必要なのかについての疑問を抱いたままの状態で治療を進めてしまうと、何らかのトラブルが発生した際に、抜歯が原因と疑うことにもなりかねません。可能であれば健康な歯を残すのが最善のため、患者さん自身にとっても納得のいくかたちで治療を進めていく必要があります。

抜歯して矯正治療を終えたものの、最終的な仕上がりに満足がいかないケースがあります。抜歯には手術が必要で、その際に痛みや腫れも生じます。それにもかかわらず納得のいく仕上がりにならなかった場合は、抜歯という選択を後悔することになりかねません。

歯列矯正の際に4本の歯を抜くメリットは多いです。この項目では、抜歯を行うことで得られるプラスとなる要素について、4つのメリットを詳しく紹介します。

歯の幅が顎のスペースより大きい場合、歯を並べるスペースの確保が困難になります。そのようなケースにおいては、歯列矯正の際に抜歯によってスペースの確保が容易になります。

矯正治療が難しい症例（歯周病など）の場合、歯のぐらつきが大きくなります。抜歯によって、歯を動かすためのまとまったスペースを確保できれば、歯並びを拡げずに歯を無理なく並べることも可能です。難しい症例への対応が簡単になる点も、抜歯で得られる大きなメリットの一つです。

抜歯せずに矯正治療を進めていく場合、隙間が足りないと一部の歯が想定通りに動いてくれなかったり、歯列が予定通りにならない事態に陥ることがあります。しかし、抜歯によって歯を動かすためのスペースを作ることによって、治療計画の通りに矯正を進めることが容易となることもあります。

歯列矯正で抜歯する際は、メリットだけではなく、デメリットが生じることがある点にも注意しなくてはなりません。抜歯に伴うデメリットは、大きく分けて2つです。

歯列矯正の際の抜歯では、健康な歯を抜くことも多いです。基本的には噛み合わせなどに影響が出ない部分の歯を抜きますが、もともと問題のなかった歯を抜くこと自体が大きなデメリットです。また、矯正で健康な歯を抜歯する場合、公的医療保険が適用されないため、治療にかかる費用が高額になる点にも注意が必要です。

抜歯の際には外科手術が必要なため、一時的な痛みや出血が生じることがあります。手術の際には麻酔によって痛みを軽減する処置を行いますが、痛みや違和感がなかなか引かなかったり、しばらくの間は食事などに支障が生じることもあるため、抜歯直後は飲酒・激しい運動・入浴を控えるよう指示されることが多いです。

抜歯前に、今回の矯正治療において抜歯が必要な理由や、抜歯で得られるメリットは何なのかといった点について、患者さんが理解しておくことが大切です。
抜歯は大きなリスクが伴うため、医師と相談して目的を把握し治療を進めることによって、後悔せずに済むかもしれません。

矯正治療を始める前の段階で、患者さんが理想とする歯並びや噛み合わせの完成形のイメージを、担当医と共有しておくことも重要です。患者さんと担当医の間で認識に間違いがあった場合、抜歯の必要性を含めた大小さまざまなポイントにおいて、治療前の想定と異なる仕上がりとなって治療終了後に後悔する事態を招きます。

矯正治療に伴い抜歯を勧められたものの、担当医の説明に納得がいかない場合、別の歯科医院に足を運び、セカンドオピニオンを受けるという方法もあります。患者さんの状態によっては、抜歯を行わずに矯正治療を進められる可能性もあるため、複数の歯科医師による意見を聞いたうえで、患者さんにとって最も納得のいく選択肢を採用していきましょう。

⇒非抜歯矯正について詳しくは「非抜歯矯正の3つの方法は？非抜歯矯正できる歯並びも紹介」の記事をご覧ください。

⇒抜歯治療について不安がある方は、矯正歯科ネットのサイト内で歯科医師が回答している相談室に投稿された「抜歯治療との違い 矯正歯科の相談」をご覧ください。

歯列矯正の際に抜歯したことで、ものを噛みにくくなった、顔が変わったなどの事態を招き、後になって後悔する可能性があります。歯をきれいに並べるスペースを確保するために抜歯が必要となるケースもあるため、治療を始める前に抜歯する理由を担当医に確認し、納得したうえで治療を進めていくことが大切です。

また、患者さんにとって理想的な治療後の完成形を歯科医師との間で共有しておくことによって、不要な抜歯を回避できる可能性もあるかもしれません。矯正治療を開始してから後悔する事態に陥らないためにも、抜歯の目的をしっかりと理解し、患者さんにとって適切な治療を受けられるようにしましょう。