監修医師
歯科医師 古川雄亮先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
歯並び(噛み合わせ)がずっと気になっているものの、歯列矯正ができなかった。そんな中、「歯列矯正をして良かった!」という話を目にして自分もやってみようと検討している方もいるでしょう。
歯列矯正をすると歯並びがよくなることはもちろん、5つのメリットがあるんです。
大人になった今、歯列矯正を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
公開日:2024/09/30
歯科医師 古川雄亮先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
大人になってからでも、歯列矯正することは決して遅くありません。
歯列矯正では歯並びや噛み合わせが整うほか、次の5つのメリットを得ることができます。
とある会社のアンケート調査によると、20代女性を中心に実施した「歯に関する意識調査」にて「歯」の悩みやコンプレックスがあると回答した方はなんと約94%という結果が発表されています。具体的には、「黄ばみ・着色」をコンプレックスに感じている人の割合が最も多く、「歯並び」が2番目に多いコンプレックスです。
コンプレックスに感じる方が多い歯並びを整えるのが歯列矯正です。歯並びを整えることで見た目のコンプレックスが解消されれば、日常生活がより楽しくなるでしょう。
参考:おうち時間に蓄積?!マスクに隠れた「歯の黄ばみ」意識調査【2022最新】
ガタガタの歯並び部分には歯ブラシが届きにくく、汚れが溜まりやすくなります。歯並びを整えることで細かなところまで歯ブラシがあたりやすくなり、虫歯や歯周病のリスクを軽減することができます。
噛み合わせが整うと、食べ物を噛んだりすり潰したりしやすくなります。咀嚼数が増えると唾液の分泌も増えて、胃腸の負担が軽減され、唾液の自浄作用で虫歯になりにくくなります。
矯正治療により前歯で噛み切れるようになったり、奥歯でしっかり噛んで食べられるようになります。
噛み合わせが悪い場合、お口の中だけでなく全身のバランスに悪影響を及ぼすことがあります。原因がわからない肩こりや頭痛を感じている場合、歯列矯正で噛み合わせを整えることで解消されるケースが考えられます。
子供の歯列矯正では、顎の成長や歯の生え変わりなどを考慮して治療を進めていく必要があり、治療期間も長くなりがちです。身体の成長がいつ終わるかを完全に予想することはできないため、成長の度合いに合わせて都度治療計画を立て直したり、予定と異なる治療方針になることもあります。
大人になると顎が成長したり歯が生え変わったりすることはないため、子供よりも治療計画を立てやすいといえるでしょう。成長がない分、治療期間も短くなるのが、大人の歯列矯正のメリットです。
せっかく時間とお金をかけて矯正しても、後から「やっぱりやめたい...」「こんなはずではなかった...」とならないためにもリスクは知っておきましょう。
矯正治療を始めてから後悔しないために知っておきたい大人の歯列矯正の6つの注意点を紹介します。
歯列矯正の方法はいくつかありますが、ワイヤー矯正ではブラケットという小さな装置を歯の表側に取り付け、ブラケットにワイヤーを通します。口を開けると見えてしまい、見た目が気になる患者さんもいらっしゃいます。
特に金属のブラケットを使用している場合は金属のぎらつきが目立ち、矯正治療中の見た目がコンプレックスになってしまうこともあります。
見た目を解消するには少し費用がかかりますが、白いブラケットとワイヤーを使用したり、矯正装置を歯の裏面に装着する裏側矯正や、透明なマウスピースを使用するマウスピース型矯正なども検討してみるとよいでしょう。
歯列矯正では歯に矯正力をかけて移動させますが、歯が押される圧迫感や痛みが矯正開始直後に生じます。矯正装置を初めて装着したときが特段痛みが強く、新しいマウスピース型矯正装置に交換したときなどにも痛みを感じる人がいらっしゃいます。
基本的に矯正開始後数日で強い痛みはなくなり、歯列矯正が進むにつれて痛みは軽減されていきますが、矯正装置の調整のたびに痛みを感じる患者さんも非常に稀ですがいらっしゃいます。
矯正治療中は普段よりも丁寧な歯磨きが必要です。ワイヤー矯正は患者さん自身で装置の取り外しができず、磨きにくいため、装置の周りを重点的に歯磨きしないと虫歯や歯周病のリスクが高まります。
マウスピース矯正では取り外しができるため、歯磨きのしづらさはあまりありませんが、汚れが残っていると虫歯や歯周病のリスクは高まります。加えて、マウスピースを装着すると唾液の自浄作用が機能しないためリスクが高くなります。
矯正中は虫歯や歯周病リスクが高くなることを意識して歯磨きすると良いでしょう。
歯列矯正は、基本的に公的医療保険が適用されません。自費治療は全額自己負担のため、治療にかかる費用を自身で全額用意しておく必要があります。治療費は、歯科医院の値段設定や患者さんのお口の状態によって大きく異なりますが、目安としては80万円~120万円と考えておきましょう。
また、虫歯や歯周病の治療は基本的に数回、長くても数ヵ月の通院で一通り完了することがほとんどですが、歯列矯正は年単位の長期間の治療になります。全体の矯正を受ける場合、治療期間の目安は1年~3年程度です。
2023年6月 株式会社メディカルネット調べ
ブラックトライアングルとは、歯と歯の間と歯茎の間にできる三角形の黒いすき間のことです。歯の逆三角形の形や歯茎が下がっていることなどによってできるすき間ですが、歯列矯正が進むとできてしまうことがあります。
理由の一つに、歯並びがよくなることも関係しています。歯と歯が強く重なっている場合、歯の接点がないためブラックトライアングルはできません。ところが歯並びがよくなって歯と歯が正しい位置で接するようになると、歯の形や歯茎の下り具合によってはブラックトライアングルができてしまいます(特に下前歯の部分にできることが多いです)。
これは矯正治療だけが原因ではなく、ご自身の歯の形なども関係しています。
そのほか、歯並びが整うことで歯磨きがしやすくなり歯茎の腫れが治まって歯肉が下がった結果、ブラックトライアングルが生じることも考えられます。
また、歯列矯正によって歯槽骨が元々少ない部分に歯が並ぶと歯槽骨に合わせて歯茎が下がってブラックトライアングルができてしまうケースがあります。
どのような方法で歯列矯正を受けても「後戻り」が起こる可能性があります。後戻りとは、歯列矯正前の位置に歯が戻ってしまう動きをいいます。
後戻りを防ぐためには、矯正装置を外した後に一定期間リテーナー(保定装置)を装着して歯が適切な位置で安定するのを待ちましょう。せっかく矯正装置が外れたのに…と思うかもしれませんが、後戻りしてしまうと綺麗な歯並びが崩れてしまったり、再度治すためにお金を払って矯正することになってしまいます。
リテーナーの種類は複数ありますので、お口の中の状態に合ったリテーナーを担当の歯科医師と相談して決めましょう!
大人になってから歯列矯正を始めるのは遅いなんてことはなく、何歳からでもメリットがあります。
ただし、歯列矯正の方法によっては、治療中の見た目が気になるかもしれません。また、どのような方法でも、歯を動かすことで痛みが生じる場合があります。矯正後はリテーナーの装着も必要です。メリットだけでなく、こうしたデメリットも事前に知っておくことが大切です。
歯列矯正を検討している方は、まずは信頼できる歯科医師に相談することをおすすめします。