ナイトガードを外した後に痛いのはTCH(歯列接触癖)が原因かも?

「噛みしめが強いことを歯医者で指摘されてからナイトガードを使い始めたが、外した後に痛みを感じることがある。装着しているのに、いったい何が原因なの?」そんな悩みをお持ちの方はいませんか。

ナイトガードを外した後に痛みが発生する原因の一つに、「TCH(歯列接触癖)」という癖があります。今回は、TCHの基礎知識、原因、歯ぎしりや食いしばりとの違い、問題点、チェック方法、具体的な対処法などを詳しく紹介します。

公開日:2024/09/12

目次

  1. ナイトガードを外した後に痛いのはなぜ?TCHが原因かも
  2. TCHの原因
  3. TCHが引き起こす問題
  4. TCHかどうかチェックする方法
  5. ナイトガードを外した後の痛みの原因がTCHの場合の対処法
  6. まとめ

ナイトガードを外した後に痛いのはなぜ?TCHが原因かも

TCH(歯列接触癖)は、ナイトガードを外した後にお口の中で痛みが生じる原因の一つです。通常、お口を閉じた際、上下の歯の間に2~3mmの隙間が生じます。TCHのある人は、上下の歯を無意識に接触させている状態となるため、筋肉や関節に負担がかかります。

※食いしばりや噛みしめが強い場合も、ナイトガードを外した後に痛みが発生することがあります。歯に合わないナイトガードを使用していると、想定外に歯が動いてしまうため、咬合時に歯の痛みが発生する可能性があります。

⇒詳しくは、矯正歯科ネットの相談室に掲載された質問『ナイトガードに矯正力はあるのか』をご覧ください。

TCHと歯ぎしり&食いしばりの違い

「歯ぎしり」は寝ている間に歯と歯を擦り合わせ、「食いしばり」は歯を強い力で噛み合わせることです。「TCH」は患者さん自身が無意識に上下の歯を日中に持続的に接触させている状態です。

TCHは比較的最近になってから知られ、長時間にわたって無意識に日中に上下の歯が接触することになる点が大きな問題です。自覚症状に乏しく、歯のすり減りなどの異変を歯科医院に指摘され初めてTCHに気付くケースが多いです。

TCHをいつも自覚している人は4人に1人程度

2009年に発表された資料によると、TCHを自覚していなかった患者さんの割合は24%です。また、TCHに対する自覚が「たまにある」と回答した患者さんは21%「しばしば」と回答した患者さんは31%「いつも」と回答した患者さんは24%という結果です。

すなわち、TCHを常に自覚している人の割合は、およそ4人に1人程度です。TCHは自覚症状に乏しいため、患者さん自身が早めにTCHに気づいて抜本的な対策を取るのも難しいのが現状です。

参考:日中クレンチングが疑われた顎関節症患者に対する行動変容を期待した スプリントの応用と総合的な治療成

TCHの原因

パソコンやスマートフォンの日常的な利用は、TCHの大きな原因の一つです。パソコンやスマートフォンを使ったり、テレビなどの番組を視聴する際に集中するため、顎に力が入りやすくなります。また、ストレスや緊張を感じる時にTCHが起こりやすいです。

パソコンやスマートフォンを使う時には、前かがみになったり、下を向くことが多くなります。それらの姿勢は歯列を顎が閉じる方向に誘導しやすくなるため、TCHが発生する可能性をより高めます。これらの理由によって、パソコン・スマートフォンといった電子機器の使用とTCHの間には、少なからず関連性があると考えられています。

TCHが引き起こす問題

TCHは長期間にわたって上下の歯の接触が続くと様々な問題を引き起こします。具体的に言うと、歯が摩耗する、歯が折れる(欠ける)、治療に用いた被せ物が破損するなどです。さらに、顎関節症の発症、歯周病の悪化、知覚過敏の原因となるケースがあります。

TCHはお口の中だけではなく、身体全体にも悪影響をもたらす可能性もあります。頭痛、肩こり、腰痛といった全身症状に関係していると考えられています。

TCHかどうかチェックする方法

自分がTCHであるかをチェックすることは難しいですが、症状が起こっている可能性が高いかどうかを確認することは可能です。具体的には、「キッチンタイマー法」という手段を使うことによって、セルフチェックができるようになります。

キッチンタイマー法の具体的な方法を紹介すると、一定時間ごとにタイマーをセットしたうえで、タイマーが鳴ったタイミングで上下の歯が接触しているか、あるいは離れているかを確認します。

このフローを10回繰り返して歯が接触していた回数が2回以下であれば、TCHの可能性は低いです。10回全て上下の歯が接触していた場合は、TCHの可能性を疑ったほうがいいかもしれません。

ナイトガードを外した後の痛みの原因がTCHの場合の対処法

ナイトガードを外した後に痛みが生じている原因がTCHである場合、適切な対処を行うことによって、症状の改善を図ることが可能です。紹介する2つの手段を実行することによって、TCHを改善することができるかもしれません。

①歯が接触することを自覚する

TCHであることをを把握することが、TCHに対処する第一歩となります。まずは、唇を閉じたうえで上下の歯を離しつつ、顔の筋肉から力を抜くという理想的な状況を作る練習を普段から行うといいでしょう。

また、歯が接触していることに気が付いたタイミングで、深呼吸を行うことも効果的です。深呼吸をする際には自然と身体が伸びるため、歯と歯の間に隙間が生まれます。TCHを防ぐために理想的な状況を生み出せるため、適切な状態を身体に覚えさせ、TCHの頻度を徐々に減らすことができる可能性が高くなります。

②張り紙法を行う

「張り紙法」と呼ばれる方法も、TCHを予防するために効果的な手段の一つです。具体的には、紙や付箋などに「歯と歯を合わせない」「リラックス」「深呼吸」のような、TCHを防ぐ有用な言葉を記入します。それらをパソコンやテレビの端のような、自然と目に入る場所に貼ることでリマインダーをすることによって、定期的に意識付けを行っていきます。

紙や付箋が目に入った際に上下の歯が接触している場合、意識して歯を離すことができます。そのタイミングで深呼吸をすることによって本来は噛まないという理想的な状態を身体に覚えさせる点が大きなポイントです。

③ 先ほどの【①・②】を繰り返す

お口を閉じた時に歯と歯が接触していることを自覚し、上下の歯を接触させない理想的な状態を身体に覚えさせるため、、紙や付箋に意識するポイントを記入し定期的に確認して、TCHへの意識付けを強めるために、何度も行うことが大切です。

新しい習慣を身につけるには、繰り返し行うことが非常に重要となります。

まとめ

ナイトガードを外した後の痛みの原因の一つに、TCH(歯列接触癖)という症状があります。TCHは上下の歯を接触させてしまう癖であり、歯のすり減りや破折、知覚過敏、歯周病の悪化、頭痛や腰痛といった、さまざまな問題の発生につながる恐れがあります。

張り紙法のような患者さん自身で行えるTCHの対処法もありますが、ナイトガードを外した後に痛みが生じる原因はTCHだけではありません。

痛みの原因として考えられる他の要因についても確認しておくことが重要となるため、痛みが引かない場合は歯科医院に足を運んで医師と相談し、専門的な判断を仰ぐことをおすすめします。