監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
「虫歯を治療したすぐ後に歯がしみる感覚があるのはなぜだろう?」と感じタコとはありませんか。意外と多い症状で、「もしかしたら虫歯が治っていないのでは?」と心配になりますよね。
この記事では、虫歯治療後に歯がしみる原因と対処法を解説します。歯科医院で診てもらおうにもすぐに予約が取れなかったり、通院する時間がなかったりする方のご参考になれば嬉しいです。
公開日:2024/08/29
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
虫歯治療後に歯がしみる場合、以下の4つの原因が考えられます。
一般的な虫歯治療では、虫歯がこれ以上拡がらないように、虫歯の範囲よりもやや多めに歯を削ります。削られた歯は以前よりも薄くなり、飲食物や噛む時の刺激が伝わりやすくなっているため歯がしみます。
また、象牙質まで達した虫歯を削るケースでは、歯髄という歯の中の神経も刺激されます。刺激によりまれに歯の神経に炎症が生じ、虫歯治療後にしみる場合があります。
歯を削った部分に入れた詰め物が、象牙質を圧迫しているのかもしれません。飲食物の温度や酸味などのほか、詰め物による圧迫でも象牙質(ぞうげしつ)に刺激が伝わり、歯がしみる場合があります。
虫歯が広範囲にわたり、神経のすぐ近くまで歯を削って詰め物をした場合、しみる症状があっても治ることが多いため様子見となるケースが多いです。
神経を取り除いてしまえばしみる症状はなくなりますが、神経がなくなった歯は栄養が行き届かなくなり、脆くなってしまうというデメリットがあります。
歯科医師としては、できるだけ神経を取り除きたくないため、歯がしみる症状があっても日常生活に支障をきたさなければ、症状が改善するまで痛み止めなどで様子見をします。
金属の詰め物・被せ物は、熱伝導率が高いという特徴があります。温度が伝わりやすいため、飲食物の摂取時に熱で歯がしみやすい状態となっています。
虫歯治療後に歯がしみる状態が続くと、歯は神経を保護するために修復象牙質を形成します。神経が守られることで、しみる症状は治まっていきます。
歯がしみるのが治まるまでの期間は個人差があり、早くて数日~1週間、場合によってはや数ヶ月程度かかるかもしれません。
また、虫歯治療後、神経を温存できるかどうか様子見している状態であれば、しみるのが治まるまでに、半年程度の期間を要する可能性があります。症状が増悪する場合は歯の神経を除去する治療が必要になることが多いです。
参考:一般社団法人 吹田市歯科医師会
虫歯治療後しばらくしてから歯がしみる場合には、以下のような原因が考えられます。
二次う蝕(にじうしょく)とは、虫歯治療をした歯が再び虫歯になった状態を指します。虫歯治療後に詰め物・被せ物と歯との間に隙間が生じ、虫歯菌が入り込んで虫歯をつくります。
冷たい物や甘い物がしみるというのは虫歯の代表的な症状のため、二次う蝕を疑う必要があります。
冷たい水や歯磨きなどでも歯がしみる場合は、知覚過敏かもしれません。知覚過敏は、エナメル質という硬い組織で守られている象牙質が何らかの原因で露出してしまい、飲食や歯磨きなど日常動作でもしみる症状です。
歯磨きや噛む力が強すぎたり、酸性度が高い飲食物を頻繁に摂取したりするなどで、象牙質の露出は起こります。
就寝中などに歯ぎしり・食いしばりをする癖があると、歯がすり減ったり歯肉退縮が起こったりして知覚過敏が起き歯がしみることがあります。
⇒虫歯治療後の痛みについて悩んでいる方は『なぜ虫歯治療後に歯がしみるのか。半年後でも治らない原因を解説』の記事をご覧ください。
虫歯治療後に歯がしみる場合、自然と治るのを待つ以外に、以下のような対処法があります。
市販の痛み止めの服用で、歯がしみるのを多少なりとも緩和できます。ただし、痛み止めは、胃腸障害や腎障害などの副作用を引き起こすリスクがあります。飲み過ぎや長期間の服用には十分に注意しなければなりません。
熱い物や冷たい物は歯にしみやすいため、避けるようにしましょう。また、甘い物や酸性度が高い飲食物も同様です。
具体的には、アイス・ケーキ・ジュース・チョコレート・柑橘系の果物・梅干しなどは、歯がしみやすい飲食物です。
知覚過敏が原因で歯がしみる場合は、知覚過敏用の歯磨き粉を使うのも効果的です。硝酸カリウムが配合されている歯磨き粉により知覚過敏の改善が顕著にみられたという研究報告があります。
虫歯治療後に歯がしみる原因としては、治療後の歯の神経の炎症反応が起きている、歯が欠けて象牙質に刺激が伝わりやすくなっている、などです。
歯がしみるのが治まるまでの期間は、早ければ数日~1週間ですが、個人差があるため約数ヶ月程度かかる場合もあります。しみる症状がなかなか治らない場合は、早めに歯科医師に相談しましょう。症状の具合や期間によって歯の神経を取り除く治療が必要になるかもしれません。
この記事で、虫歯治療後に歯がしみることについての疑問や不安が少しでも解消されたら幸いです。