セラミック治療後に発生する口臭の原因と対策

「セラミック治療を受けてしばらく経つが、最近になって口臭が気になり始めている。ひょっとしたらセラミックの影響で口臭が発生しているのかもしれない。こんな時はどうしたらいいの?」そのような悩みをお持ちの方はいませんか。

口臭の原因はさまざまですが、セラミック治療の影響で口臭が発生する可能性は少なからずあります。今回は、セラミック治療後に口臭が発生しやすくなる6つの原因や、セラミック治療が原因となる口臭対策を4つ解説します。

公開日:2024/08/05

監修医師

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

目次

  1. セラミック治療後に口臭が発生する原因
  2. ①歯垢が溜まっている
  3. ②2次カリエスになっている
  4. ③歯周病になっている
  5. ④セラミックの被せ物や詰め物が合っていない
  6. ⑤経年劣化している
  7. ⑥歯並び(噛み合わせ)が良くない
  8. セラミック矯正の場合も注意が必要
  9. セラミック治療に伴う口臭への対策
  10. ①虫歯・歯周病を治療する
  11. ②セラミックの種類を変える
  12. ③正しいセルフケアの方法を身に付ける
  13. ④歯科医院で定期的にクリーニングしてもらう
  14. まとめ

セラミック治療後に口臭が発生する原因

セラミック治療による口臭には、数多くの原因あり、セラミックの影響による口臭のメカニズムを6つ紹介します。

①歯垢が溜まっている

歯とセラミックの間には、時間が経過するにつれて小さな隙間ができてきます。その部分に歯垢が溜まると、虫歯や歯周病のリスクが高まります。歯周病の原因となる細菌は口臭を生み出す物質が出る原因にもなるため、歯垢増加が口臭にもつながります。

②2次カリエスになっている

「2次カリエス」は、詰め物や被せ物で治療された歯が、再び虫歯になってしまうことです。①で紹介したように詰め物や被せ物には時間と共に境目が生じるため、その部分に虫歯の原因となる細菌が入り込むと、歯磨きでの除去が難しくなってしまいます。その影響で再度虫歯が隙間部分に発生し、口臭のリスクも高まります。

③歯周病になっている

歯周病の原因となる細菌は、口臭を引き起こす物質の発生原因になります。さらに、歯周病の治療でセラミックなどの詰め物を用いた場合、歯の下に位置する歯肉が歯周病になり口臭の原因となります。歯茎からの出血が増え、かつ膿が出て口臭が強まる可能性がさらに高まります。

④セラミックの被せ物や詰め物が合っていない

セラミックで作られた被せ物や詰め物が患者さんに合わないと、歯と装置の間に隙間ができます。隙間には汚れが溜まりやすく、お口の中の環境悪化につながります。さらに、その部分に細菌が入り込むと、虫歯や歯周病のリスクが高まるだけでなく、虫歯や歯周病の進行で歯の神経の壊疽につながったり、強い口臭が発生するかもしれません。

⑤経年劣化している

ハイブリッドセラミックは他のセラミックに比べて耐久性が低く、経年劣化が起こりやすい傾向にあります。具体的には、固定している接着剤が時間が経って徐々に剥がれて隙間ができるため、その部分に歯垢が付着しやすくなります。レジンが吸水しやすい点も、口臭発生につながる原因となっています。

⑥歯並び(噛み合わせ)が良くない

歯の歯並び(噛み合わせ)が良くないと歯磨きが難しくなり、汚れも残りやすくなります。また、歯並びの悪さによって口を閉じにくくなると、口の中が乾燥しやすくなり、虫歯や歯周病の発生リスクが高まります。

セラミック矯正の場合も注意が必要

セラミックを使用した歯科治療の中には、歯を削ってセラミックの被せ物を装着する、「セラミック矯正」という治療もあります。歯科矯正ネットに投稿された質問と歯科医師による回答「セラミック矯正をしてしまった」にも示されている通り、セラミック矯正には健康な歯を削らなければならない点をはじめとした、さまざまな懸念材料があります。

セラミック矯正が持つデメリットの一つとして、口臭の発生リスクを高めることが挙げられます。セラミックはその特性上、口臭を引き起こす可能性が少なからず存在する素材であるため、セラミック矯正を受ける際には、口臭に対する注意も必要となってきます。
*セラミック矯正は歯を動かす矯正治療ではありません。

セラミック治療に伴う口臭への対策

セラミック治療の際には、口臭への対策が必要不可欠です。重要視すべきポイントとしては、以下の4つが挙げられます。

①虫歯・歯周病を治療する

虫歯や歯周病は口臭の原因となるため、歯科医院でチェックし、必要に応じて治療を受けることによって、口臭を解消できる可能性が高いです。歯科医院では歯とセラミックの隙間に細菌が溜まっていても必要な処置が可能なため、口臭がある場合は歯医者に足を運んだうえで、歯茎の検査とメンテナンスを受けることをおすすめします。

②セラミックの種類を変える

セラミックにはさまざまな種類がありますが、ハイブリッドセラミックは他のセラミックに比べて強度がやや低く、口臭が発生するリスクが高くなります。使用するセラミックの種類を耐久性の高いものに変えることによって、口臭を抑えられる可能性が高くなります。

③正しいセルフケアの方法を身に付ける

正しいセルフケアを行っていることも口臭発生を抑える上で重要です。特に重要なのは、以下の3つです。

ブラッシング

日常生活におけるブラッシングは最も基本的なものです。具体的には、毎食後にしっかりと歯磨きを行い、早めにお口の中の汚れを落とすことを意識することで口臭発生の可能性を抑えられます。ただし、歯を磨きすぎると歯や歯肉が傷つき、傷口に細菌が入るため注意が必要です。

フロス・歯間ブラシ

歯ブラシを用いたブラッシングを行った後に、歯間ブラシやデンタルフロスといった器具を使うことで、ブラッシングだけでは落としきれない汚れに対応できるようになります。フロスや歯間ブラシは歯と歯の隙間に位置する細かい汚れを除去できるため、口臭対策としても効果があります。

マウスウォッシュ

マウスウォッシュ(洗口液)は、口臭の原因となるお口の中の細菌を殺菌する効果があります。同じく殺菌効果を持つ唾液を減少させる作用があるため、根本的な口臭対策にはならないことには注意が必要です。外出先のようなじっくり歯磨きを行う時間がないシチュエーションにおいて、口臭ケアをしたい場合には有効です。

④歯科医院で定期的にクリーニングしてもらう

歯科医院において定期的にクリーニングを受けることで、歯間ブラシやフロスを用いたケアでも対応できない汚れを落とせます。セラミック治療などの被せ物や詰め物の治療後の定期的な歯科医院でのケアは非常に重要な役割を果たすことになるため、できれば3カ月に1回程度のペースで歯科医院に足を運び、お口の中の状態を確認してもらうとよいでしょう。

まとめ

セラミック治療後に口臭が発生する場合は、お口の中で何らかのトラブルが起こっている可能性が高いです。具体的には、歯周病や2次カリエスが発症し、セラミックの被せ物や詰め物が合っていないと隙間ができ、隙間に溜まる汚れ(細菌)の影響で口臭が発生しやすくなります。

口臭の原因は多岐にわたりますが、患者さん一人では対処が難しいケースがほとんどです。口臭が気になる場合は早めに歯科医院に足を運び、専門的な判断を仰いで必要な治療を受けることをおすすめします。