監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
矯正治療は自由診療で、歯科医師と治療内容や費用、保証内容などでトラブルになることも少なくありません。
トラブルが起きたらどこに相談したらよいのでしょうか?この記事では、矯正歯科でトラブルが起きた場合の相談窓口を紹介します。
公開日:2024/06/27
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
矯正治療は自由診療で、歯科医師と治療内容や費用、保証内容などでトラブルになることも少なくありません。
トラブルが起きたらどこに相談したらよいのでしょうか?この記事では、矯正歯科でトラブルが起きた場合の相談窓口を紹介します。
公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会では、同会の会員に対して床矯正(矯正歯科治療の一種)に関するアンケートを実施しています。回答を行なった137人のうち約8割が「不適切な拡大をされた患者さんを診察した経験を持つ」と答えました。
同アンケートは「床矯正をした患者さんがセカンドオピニオンを受けたケース」に限定したものであり、かつ、「歯科医師から見たトラブル」に限られた数字ではありますが、歯科医師がこれだけトラブルを感じているのであれば、患者さんがトラブルを感じることも少なくないでしょう。
参考:公益社団法人日本臨床矯正歯科医会
矯正治療を受けたときに、よくあるトラブルとはどんなものなのかご紹介します。
矯正歯科は基本的に公的医療保険が適用されません。歯科医院が独自に設定した治療費を患者さんの全額自己負担で支払います。
トラブルの例としては、治療を始めてから急に必要な処置だと言われて追加の矯正装置代や治療費を請求されることがあるようです。毎回の通院で「調整費」が必要なこともあり、治療期間が長くなればなるほど患者さんの負担が増えてしまいます。
近年はトータルフィー制度(治療費総額提示制)を導入している歯科医院が増えていますが、条件に応じて調整費が別途かかることもあります。
公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会が実施したアンケート調査によると、矯正歯科のトラブルや悩みでは「金銭面でのトラブル・悩み」が最も多いという結果が出ています。
参考:「矯正歯科治療に関する意識調査」アンケート調査結果リリース
特に矯正装置を付けた直後の2~3日は痛みを感じることが多いです。痛みは個人差があり、時間が経てばほとんど痛みを感じなくなるといわれていますが、歯が痛くて食事ができない・痛くて眠れないケースもあります。
痛み止めを飲んだり歯科医師に調整してもらう、数日の経過を待つことで解消できることが多いです。
矯正装置をつけた状態では歯磨きがしにくく、虫歯リスクが高まります。
矯正治療中に大きな虫歯ができた場合は、一度矯正装置を取り外して虫歯治療を受ける必要があり、矯正治療期間が延びてしまいます。
最初に提示された期間通りに終わらなかった、虫歯になるとの説明がなかったなどでトラブルが起こることがあります。
治療を始める際に提示された期間で終わらないことがあります。
提示された期間が終わっているのにいつまでも通院指示をされると不安を感じる患者さんもいるようです。
国民生活センターが公開している「暮らしの判例」では、歯科医院側が患者さんに虚偽の治療期間を説明して契約をしたという事例が紹介されていますが、歯の動く速度には個人差があるほか、痛みに弱い患者さんの場合はかける力を弱くしており、期間が長くかかることがあります。
想定よりも期間がかかることは十分に考えられますが、その際に説明や新たな治療計画の提示などがあるかなどでトラブルになることがあるでしょう。
矯正治療後は、歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起こります。リテーナー(保定装置)を使えば後戻りを最小限に抑えますが、リテーナーをサボって大きく後戻りしてしまった場合は再治療が必要になることがあります。
リテーナーをしていたのに後戻りしてしまった、後戻りするという説明がなかった、自分がリテーナーをさぼったのが原因だが再治療をさせてもらえない、などでトラブルになることがあるようです。
矯正治療期間は長いです。
何度も通院しているうちに、歯科医師やスタッフへの不信感を感じることがあるようです。
担当医師の態度が悪い・治療が乱雑に感じる・説明が少ない・親身になってくれないなどからトラブルになることがあります。
アンカースクリューが何度も抜け落ちてしまったり、矯正治療が進むにつれてかえって歯並びが悪くなっている気がする、噛み合わせが悪くなっている気がするなどが起こると、治療が失敗と感じてトラブルになることがあります。
治療に伴う一時的な変化で治療の失敗ではないケースもあり、失敗されたと思ってしまうのも無理はありません。
実際にうまく歯が動かなかった場合は、矯正装置を装着する期間が長くなった・費用が余分にかかったなどのトラブルにつながることもあるようです。
矯正歯科でトラブルが起きた場合の相談窓口をご紹介します。
日本臨床矯正歯科医会は、矯正歯科専門の開業医団体です。「矯正歯科何でも相談」にて、矯正歯科のトラブルに関する相談を受け付けています。
相談フォームに入力して送信すれば、回答を得られます。
医療安全支援センターは、医療に関する苦情・心配・相談などに対応している団体です。日本全国で380ヵ所以上設置されています。
相談窓口の連絡先や受付時間などは、各自治体の医療安全支援センターホームページよりご確認ください。
各自治体には、歯科医師会という団体が存在し、地域住民の歯とお口の健康を守る活動をしています。ご自身がお住まいの地域の歯科医師会へ相談するのも一つの方法です。
相談窓口の連絡先や受付時間などは、各自治体の歯科医師会ホームページよりご確認ください。
現在通っている歯科医院の治療方針や治療結果などに納得がいかない場合には、セカンドオピニオンを受けてみてはいかがでしょうか。セカンドオピニオンとは、違う歯科医院の医師に見解を求めることをいいます。
ただし、セカンドオピニオンは「医師の対応が悪い」「医師とのコミュニケーショントラブルを抱えている」などの問題については相談できない場合が多いためご注意ください。
*公的医療保険適用になりません。
トラブルを相談する際には、以下の情報をまとめておくとスムーズです。
どのようなトラブルがどう起きたのか、時系列で詳しく整理しましょう。
矯正歯科でのトラブルを客観的に分かるように、医師から受けた説明の内容やその齟齬、治療による変化などを順を追って伝えられるようにしてください。
トラブルの内容にもよりますが、「領収書」「同意書(契約書)」「治療計画書」「カルテの写し」「歯やお口の変化がわかる写真」「録音データ」などをできるかぎり揃えておきましょう。
矯正歯科では、予定していたよりも費用がかかった、計画どおりに終わらない、などのトラブルが起きる恐れがあります。矯正歯科治療に関するトラブルが起こった場合には、日本臨床矯正歯科医会や医療安全支援センターなどに相談できます。契約や費用に関する内容の場合は、消費者センターでも相談を受け付けてもらえることがあります。
トラブルを避けるには腕の良い歯科医院を選ぶことも重要ですが、担当医としっかりコミュニケーションがとれるかどうか、自分自身が治療に納得できるかどうかも大切にしましょう。