歯列矯正治療のリスクや副作用、デメリットとは?回避方法も

歯並びを美しく整えられるといわれる矯正治療にはデメリットも当然あります。
デメリットを知って治療を受けることで、担当の医師とのコミュニケーションが取りやすくなり、治療をよりスムーズに進められるようになるのではないでしょうか。

矯正治療のリスクや副作用といったデメリットを事前に確認したうえで、治療を受けるべきか検討してみましょう。

公開日:2024/05/16

監修医師

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

目次

  1. 歯列矯正治療のリスク・副作用などのデメリット
  2. 矯正治療のリスクを回避するための4つの方法とは?
  3. まとめ

歯列矯正治療のリスク・副作用などのデメリット

矯正治療には健康面や審美面などにおいてさまざまなメリットがありますが、歯や骨を動かしていく治療となるため副作用やリスクなどのデメリットがあります。

歯根吸収

歯肉より下に埋まっている歯の部分は「歯根」といい、矯正治療によって短くなることがあります。歯根が短くなると歯がグラグラとしてきて、最悪の場合は歯が抜けてしまうこともあります。

矯正治療では、歯を動かす際に矯正装置で力を加えるため、歯根にも大きな負担がかかって1mm~2mm短くなることがあります。
多くの場合はわずかな吸収で終わるので特に問題ありませんが、歯根吸収が大きく進み歯がぐらつき影響を及ぼすこともあり、矯正治療を途中で中断しなくてはいけなくなることもあります。

歯肉退縮

矯正治療で歯肉退縮が起こったという方も少なくありません。歯の移動以外に、矯正治療中の歯磨きができておらず歯周病による歯肉退縮や、歯並びが悪く歯が重なっているために周囲の骨が少なかったなどが原因です。

特に、歯と歯の間にできる三角の隙間、「ブラックトライアングル」が生じることがありますが、ブラックトライアングルは歯の形が逆三角形をしている場合にも生じやすく、歯の上部は隣の歯と接してきれいに並んでいても、逆三角形のため歯肉付近は歯と歯の間に隙間が空いてしまい、特に下の前歯の歯肉が下がったと感じることがあります。

実際に、矯正治療で歯を動かすときは少しずつ歯を支える骨の吸収と再生が繰り返されており、吸収した量に対して再生量が少ないと歯肉退縮が起こります。

治療中の痛み

矯正治療では、歯を動かすために矯正装置をお口の中に装着します。ブラケットという小さな部品を歯の表面に貼り付けて、そこに金属のワイヤーを通して力を加えるワイヤー矯正では、装置による痛みや不快感を覚える場合があります。
装置にはある程度の厚みがありワイヤーが通っているため、歯肉や舌などの粘膜に擦り傷などができてしまうこともあります。

力が加わることで歯が浮いたような痛みを、初回の1週間近くは続くこともあります。多くの場合は痛みに慣れて違和感が薄れていくことが多いといますが、人によっては痛みが長く続くことが稀にあります。

虫歯・歯周病

虫歯・歯周病
ワイヤー矯正では、患者さんが自分で装置を付けたり外したりすることはできません。歯ブラシの毛先が矯正器具にあたって歯に届いていなくても気が付きにくく、磨きにくさを感じたり磨き残しが増えてしまいがちです。

また、歯の表側矯正は裏側矯正に比べて唾液によって汚れが洗い流されにくいです。
矯正治療で歯並びが改善されれば歯磨きがしやすくなって虫歯や歯周病の予防につながりますが、治療中に虫歯や歯周病のリスクが高まることはワイヤー矯正では避けられないといえるでしょう。

後戻り

矯正治療によって動いた歯は、もとの位置に戻ろうとする性質があります(これを「後戻り」といいます)。矯正治療が終わった後は、歯並びが再び乱れないようにするために歯を移動後の位置に固定する必要があります。

歯科用レジンで歯に直接ワイヤーをとりつける方法や、リテーナーと呼ばれる歯を動かないように装着する保定装置を使用する方法があります。

いずれも歯科医師の指示通りに使用を続けることが大切であり、矯正治療期間と同じかそれ以上の期間の保定を求められることがほとんどです。歯の移動が終わってからも、患者さんの矯正治療は続くといえるでしょう。

顎関節症

矯正治療では、歯を動かして歯並びや噛み合わせを整えます。その過程で顎関節症とよばれる症状が起きることがあります。

顎関節症とは下記の症状が出現する疾患です。

・顎の関節の痛みがする
・口を開けにくい
・顎を動かすとクリック音が鳴る


このような症状が出た場合、矯正医療を中断して顎関節症の改善を優先する可能性があります。また、治療前から顎関節症が見られる場合には矯正治療を始める前に顎関節症を改善するための治療を先に受けることもあります。

金属アレルギー

一般的なブラケットは金属で作られています。金属アレルギーの症状がある場合は、ワイヤー矯正が行えない、金属以外で作られたブラケットを使用する必要があります。

治療前は金属アレルギーの症状がない患者さんでも、稀に治療期間中にアレルギー症状が出ることもあります。治療途中で金属アレルギーの症状が出た場合は、装置の付け替えやアレルギー検査、出た症状の対処に時間や費用がかかったり、矯正治療の期間が延びてしまうことがあります。

矯正治療のリスクを回避するための4つの方法とは?

長い治療期間と高額な費用を要する矯正治療で、リスクやトラブルは避けたいですよね。できるだけリスクを回避するための4つのポイントを紹介します。

信頼できる歯科医師を選ぶ

矯正治療のリスクを回避するために、信頼できる歯科医師を選ぶことが大切です。矯正治療の専門知識や経験のある歯科医師を選ぶこともポイントです。

矯正治療は長期間にわたるため、歯科医師との相性やコミュニケーションが取りやすいかどうか、歯科医院の雰囲気、歯科医師とスタッフの関係性も大切なポイントです。

矯正方法ごとの特徴を把握する

矯正治療にはマウスピース矯正や表側のワイヤー矯正など多くの種類があります。治療方法ごとのメリットとデメリットを理解しないまま治療を始めてしまうと、思っていたのと違ったり、思わぬトラブルが生じることもあります。矯正治療方法ごとのメリットとデメリットをチェックしてみましょう。

マウスピース矯正の特徴と治療の流れ

ワイヤー矯正とマウスピース矯正の特徴と比較(メリット・デメリット)

セルフケアを怠らない

矯正治療中は、歯ブラシが歯に届きにくく汚れが溜まりやすくなることで虫歯や歯周病のリスクが高くなるため、セルフケアを怠らないことが大切です。

また、マウスピース矯正では装着時間や管理方法を怠らないことで、矯正治療で歯が動かないなどのリスクを避けることができるでしょう。

気になることがあれば早めに相談する

矯正治療中の痛みや違和感といった異常があれば早めに相談するようにしましょう。早めに対処してもらえば大きな問題になることが避けられます。不快な症状が続くときや困ったときは、担当の歯科医師にすぐ相談しましょう。

まとめ

矯正治療は歯並びの美しさという審美性に加えて、噛み合わせ(機能面)の改善も行う一方で、同時に矯正治療にリスクや副作用も起こりえます。スムーズに矯正治療を始めるためにも、リスクや副作用などをしっかりと事前に確認したうえで治療を始めるようにしましょう。