矯正治療前に親知らずは抜歯するべき?必要なケースを紹介

親知らずが生えていたら、矯正治療を受けるときに治療で支障にならないか気になる方もいるでしょう。親知らずが他の歯をガタつかせるという話も聞きますよね。

きれいな歯並びにするためには親知らずを抜歯した方が良いのか、それとも抜歯をせずに矯正治療をできるものなのか、抜歯が必要な2つのケースについて具体的に紹介します。

公開日:2024/03/25  更新日:2024/03/28

監修医師

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

目次

  1. 親知らずとは?
  2. 矯正治療前に親知らずの抜歯が必要な2つのケース
  3. 歯並びを悪くする原因になっている場合
  4. スペースの確保が必要な場合
  5. 矯正治療前に親知らずの抜歯が不要な2つのケース
  6. 歯としての機能を果たしている場合
  7. 今後生えてきそうもない場合
  8. 矯正治療の際に親知らずを残した場合の2つのリスク
  9. 隣の歯を押してしまう
  10. 虫歯や歯周病になりやすくなる
  11. 矯正治療時の親知らず抜歯に関してよくある質問(Q&A)
  12. 親知らずの抜歯にかかる費用はどのくらい?
  13. 矯正治療中に親知らずが生えてきたらどうする?
  14. まとめ

親知らずとは?

親知らずとは一番奥に生える永久歯のことを表します。智歯(ちし)や第三大臼歯とも呼ばれています。近年では親知らずが4本すべて生えてこない方も多くなっています。

親知らずがあると歯磨きがしづらいです。斜めに生えていたり歯茎に埋まっている場合は虫歯や歯周病などのトラブルが起きやすいため、矯正治療をしない場合でも親知らずは抜くことが多いです。

親知らずの生え方によって抜歯は大変になり、歯茎を切ったり骨を削ることが必要になると親知らずを抜歯したくない方もいるでしょう。では、矯正治療の時に必ず抜歯をしなければいけないのでしょうか?

矯正治療前に親知らずの抜歯が必要な2つのケース

「親知らずは抜歯するもの」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、親知らずがきれいに生えていれば必ずしも抜歯する必要はありません。

ですが、矯正治療では多くの場合に親知らずを抜歯します。矯正治療前に親知らずを抜歯する2つのケースを紹介します。

歯並びを悪くする原因になっている場合

歯並びが乱れている原因が横向きに生えている親知らずにあると考えられており、矯正治療を始める前に親知らずを抜歯することもあります。

矯正治療がスムーズに進まない可能性があるため、事前に抜くことが多いですが、矯正後に抜歯することもあります。

スペースの確保が必要な場合

矯正治療では歯をきれいに並べるためのスペースが必要です。スペースが十分に足りていないケースでは歯を抜いてスペースを作ることがあります。親知らずを抜いて歯を後ろに下げることができる場合は、親知らずが抜歯候補になるでしょう。

ただし、歯を後ろに下げる必要がない場合は親知らずを抜歯しても矯正に必要なスペースの確保ができません。その場合は、別の歯を抜歯して親知らずは抜かない場合もあります。

矯正治療前に親知らずの抜歯が不要な2つのケース

矯正治療を始める際に、親知らずは残したままでいいといわれるケースもあります。
どのような場合に親知らずを残すのかを確認していきましょう。

歯としての機能を果たしている場合

親知らずに虫歯や歯周病などのトラブルがなく、親知らずが問題なく生えて噛み合っている場合は、残す可能性が高いです。残しておけば、ほかの奥歯がダメになった際に移植をしたり、ダメになった歯を抜いた後に再矯正で歯を移動させて代わりの歯にすることができることもあるためです。

ただし、親知らずにうまく歯ブラシが当たらないなど汚れが残り、虫歯や歯周病になりやすいため、まっすぐ生えていても抜歯することがあります。

今後生えてきそうもない場合

親知らずが歯茎に完全に埋まっている場合は、そのまま矯正治療をすることもあります。親知らずの一部が出ているけれども痛みなどがない場合もそのまま矯正治療を開始することがありますが、汚れが溜まりやすく虫歯や歯周病のリスクも高まるため基本的には抜歯が良いでしょう。

手前の奥歯を動かしたことで親知らずが少しずつ生えてくることもあります。

矯正治療の際に親知らずを残した場合の2つのリスク

親知らずを抜かなくても矯正治療が受けられますが、親知らずを抜かなかった場合にはリスクが伴います。
親知らずを抜かずに治療をするリスクをみていきましょう

隣の歯を押してしまう

親知らずの生え方によっては、他の歯を押すといわれています。横や斜めに向いて生えていると、隣の歯を押して歯並びが悪くなる原因と考えられています。矯正治療後に歯並びが崩れる要因になるかもしれません。

※親知らずが歯を押すことに関して明確なエビデンスはみつかっていませんが、歯科医師の見解や経験によりそのようにいわれることがあります。

虫歯や歯周病になりやすくなる

親知らずは一番奥に生えているため、歯ブラシが届きにくい位置です。すると磨き残しが溜まりやすく、虫歯や歯周病になるリスクが高くなります。

また、斜めに生えて隣の歯にぶつかっているような状態だと、隣の歯との隙間ができて汚れ(細菌)が残り、親知らずの手前の歯が虫歯や歯周病になってしまうことも少なくありません。

矯正治療時の親知らず抜歯に関してよくある質問(Q&A)

矯正治療で親知らずを抜歯する場合、費用などが気になるところではないでしょうか。矯正治療における親知らずの抜歯でよくある質問を紹介します。

親知らずの抜歯にかかる費用はどのくらい?

虫歯や歯周病の親知らずの抜歯は、公的医療保険が適用されます。1本あたり1,500円~5,000円くらいと定められています(※親知らずの抜歯の難易度によって異なります)。

一方、親知らずにトラブルがなく、矯正治療のために抜歯するのであれば「治療が必要な歯ではない」と判断され、公的医療保険は適用されません。自費診療で抜歯することとなり、費用は歯科医院によって異なります。歯科医院によっては、矯正治療費に含まれる場合もあるのでよく確認しておきましょう。

2023年7月 株式会社メディカルネット調べ

矯正治療中に親知らずが生えてきたらどうする?

矯正治療を受けている間に、親知らずが生えてくる・痛みを感じ始めてしまうこともあります。

もし生えてきても、必ずしも抜歯する必要はありません。
痛みが強い場合、親知らずが矯正装置の装着の妨げになる場合などには、矯正治療中に親知らずを抜歯する可能性があります。

親知らずの抜歯の際に矯正器具が取れてしまったり、抜歯直後はお口が開きづらく通院に影響が出ることもあるので、抜歯が必要かどうかはまずは矯正歯科に相談しましょう。

まとめ

親知らずをそのままにしても矯正治療を受けることはできますが、抜歯した方が良いケースも少なくありません。親知らずが他の歯を押して歯並びを悪くする原因と考えられており、歯を並べるスペースを確保する必要があったりするときに抜歯が検討されます。

また、虫歯や歯周病を原因とした親知らずの抜歯は公的医療保険が適用されますが、矯正治療のために抜歯する場合は自費診療になる可能性が高いです。親知らずの抜歯が必要かどうかを矯正歯科でよく説明を受けるようにしましょう。