監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
「いつの間にか口内炎ができている。早く治す方法とか予防する方法ってあるのかな?」
このように、口内炎について気になる方は多いのではないでしょうか。
気が付くと、口内炎ができていることってよくありますよね。
口内炎になるとお口の中が痛いし、食べ物はしみるし、治るまで痛い想いをして過ごさないといけません。
この記事では、口内炎になる原因や早く治す方法と予防方法について解説していきます。
公開日:2023/12/11 更新日:2023/12/21
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
口内炎とはお口の中にできる炎症の総称のことで、口内炎ができる原因は主に5つ挙げられます。
・お口の中が乾燥している
・生活習慣の乱れ
・偏った栄養バランス
・ウイルスや細菌による感染
・病気や薬による影響
これらの原因がなぜ口内炎につながるのか、解説します。
唾液が減って乾燥したお口の中は、口内炎ができやすい環境になってしまいます。
唾液には『汚れを洗い流す自浄作用』『口腔粘膜の保護』といった効果があるんです。
そのため、唾液がないとウイルスや細菌を洗い流せなり、口内炎ができやすくなります。
口内炎は若い人よりも歳を重ねた人のほうができやすくなります。
というのも、若いころよりも唾液分泌が少なくなる傾向にあり、お口の中が乾燥しやすくなるからです。
加齢以外にも喫煙や口呼吸、ストレスなども唾液が減る原因としてあげられます。
生活習慣が乱れてくると、口内炎のリスクが高まります。
仕事やプライベートなどで疲れが溜まったり、ストレスが増えたり、睡眠不足が続いたりなどが原因で、身体の代謝のスピードが遅くなり、粘膜の再生も遅れます。
疲れやストレスが溜まってくると、粘膜の健康にかかわるビタミンB群が消費されるため、口内炎ができやすくなります。
ウイルスや細菌による感染で口内炎になることもあります。
お口の中にはさまざまな菌が存在していますが、特定の菌だけが増えると口内環境のバランスが崩れて口内炎にかかりやすくなります。
ほかにも、お口の中を噛んでしまったり、矯正器具や歯ブラシで傷つけてしまったりすると、傷口がウイルスや細菌に感染しやすく口内炎になる可能性が高まるんです。
歯磨き粉成分の界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)が原因で口内炎が起こる場合もあるので、注意しておきましょう。
食生活が偏り、栄養バランスが乱れてくると免疫力が下がり口内炎になる可能性があります。
粘膜機能を正常に保つのに必要なビタミンB2、免疫に大切なビタミンB6、これらが足りないとウイルスや細菌感染しやすく、口内炎になりやすくなります。
特にビタミンB群は粘膜の健康に貢献するため、積極的に取るようにしましょう。
病気や薬による影響で口内炎になる可能性もあります。
免疫力を高め、粘膜を健康な状態で保つために必要なビタミンB2が足りないと、風邪になったり口内炎ができやすくなります。
また、抗生物質の長期服用の影響で腸内細菌のバランスが崩れビタミンB群が合成できなくなると、口内炎のリスクが高まります。
口内炎は主に4つに分類されます。
・アフタ性口内炎(潰瘍性口内炎)
・カタル性口内炎
・ウイルス・細菌性口内炎
・その他口内炎
各口内炎の症状にどのような特徴があるのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。
アフタ性口内炎(潰瘍性口内炎)とは、いわゆる一般的な口内炎で、皆さんがイメージする、最も多くみられる口内炎です。
表面が白っぽく窪み、周りに赤い潰瘍(アフタ)ができます。
痛みが特徴的であり、味付けの濃い食べ物や辛い食べ物などがしみます。
カタル性口内炎とは、物理的な刺激が原因で起こる口内炎です。
お口の中を噛んだり、入れ歯や矯正器具による傷が主な原因です。
赤くはれたり、水疱(すいほう)ができたり、熱を持ったりするのが特徴です。
口臭がきつくなる、熱く感じる、痛みがある、食べ物がしみる、味覚が鈍るなどの症状があります。
ウイルス・細菌性口内炎とは、ウイルスや細菌による感染で起こる口内炎のことです。ヘルペスウイルスの接触感染や飛沫感染、梅毒やクラミジアなどの感染がきっかけで起こる可能性もあります。
また、抵抗力が弱まるとお口の中にいるカビの一種であるカンジダ菌が増殖して、カンジダ性口内炎になることもあります。
その他の口内炎として代表的なものは、喫煙者に起こるニコチン性口内炎が挙げられます。
たばこを吸うと唾液の分泌量が低下し、お口の中が乾燥しやすくなり、ビタミン不足に陥ることが原因でで起こる口内炎です。
また、食べ物や薬などがきっかけで発症してしまう可能性があるアレルギー性口内炎などもあります。
口内炎は放っておいても治りますが、お口の中が痛い状態は少しでも早く治したいですよね。状況によっては、早く治らなかったり、ひどくなったりする可能性もあります。そうならないためにも下記の2つの方法を試してみましょう。
市販薬には塗り薬、貼り薬、うがい薬、飲み薬、スプレー薬などさまざまな種類があるため、どれを選べばいいか迷ってしまいますよね。
そんなときは配合されている薬用成分を見て選びましょう。
・炎症を抑えたいときは「トラネキサム酸」「グリチルレチン酸」など
・粘膜の修復を促したいときは「アラントイン」「パンテノール」など
・殺菌や消毒を行いたいときは「セチルピリジニウム塩化物水和物」「ヨウ素」など
・皮膚や粘膜の再生を助ける「ビタミンB2」「ビタミンB6」など
このように口内炎の症状や身体の状態に合わせた、市販薬を選ぶといいでしょう。
口内炎はおおよそ1週間から2週間で治るケースがほとんどです。
ただし、2週間経っても治らない場合は口内炎ではない可能性もあるので念のため医療機関を受診することをおすすめします。
「とはいっても、何科で診てもらえばいいのかわからない」
という方もいると思います。
口内炎は基本的に耳鼻咽喉科で診療するのが一般的ですが、歯科(口腔外科)、内科、皮膚科でも受診は可能です。
ステロイド剤を含んだ薬や、必要に応じて抗生物質が処方されるでしょう。
また、歯科であればレーザーを口内炎に当てて殺菌し、治りを早める処置を行う場合もあるので、高い即効性が期待できます。
口内炎になると、1週間~2週間はお口の中が痛くなります。
そうならないためにも、日ごろから口内炎予防はしておくといいでしょう。
ここからは口内炎を防ぐための3つの方法をご紹介します。
生活習慣が乱れてくると、疲れやストレスが溜まり免疫力の低下などで口内炎のリスクが高まります。
疲れやストレスを溜めないように以下の方法をとることが重要です。
・十分な睡眠を確保する
・お風呂に浸かって疲れを癒やす
・趣味やスポーツなど好きなことをしてストレス発散をする
これらの対策を行い、ストレスや疲れをとって、免疫力を低下させないようにすることが大切ですよ。
偏った栄養バランスにならないように野菜や肉・魚などをまんべんなく摂取することが大事です。
特に免疫力を高めるのに効果があるビタミンAやビタミンC、ビタミンE、口内炎の予防と治りを早める効果があるビタミンB群を多く含む食材を選ぶといいでしょう。
ビタミンB1を含む豚肉、ビタミンB1とビタミンAを含むほうれん草、ビタミンB2とB6を含むレバーなどが口内炎には効果的です。
口内炎を予防するには、お口の中を清潔に保ち細菌やウイルスが増殖しにくい環境にするのが理想的です。
毎日の歯磨きで歯垢を除去して、お口の中を清潔に保つようにしましょう。
歯科医院にて、お口の中をクリーニングしてもらうのも効果的です。
「口内炎って潰すと早く治る」といったことを、もしかしたら聞いたことがあるかもしれません。結論、口内炎を潰すのは逆効果です。口内炎を潰すと細菌が傷口にさらに侵入しやすくなって、炎症がひどくなる可能性があります。
今回は口内炎の原因、早く治す方法や予防方法についてお伝えしてきました。
疲れやストレス、栄養バランスの偏りなどが原因で口内炎になる可能性があるので、生活習慣を整えて口内炎ができないようにしましょう。
原因を知り、予防方法を心掛けることで口内炎ができるのリスクを下げたいですね。
もし口内炎ができてしまった際は「たかが口内炎だから放置しても治る」と決めつけず、長期間治らないなどの症状があれば、歯科や耳鼻咽喉科などを受診し適切な処置を受けましょう。