監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
根管治療(こんかんちりょう)といった言葉を耳にしたことはありますか?根管治療は、歯の根管の中にある神経(歯髄)が虫歯に感染してしまった場合に神経を取り除く治療です。
治療せずに放置しておくと、抜歯になってしまう可能性もあります。また、治療には長い期間を要するケースがありますが、歯の予後を大きく左右する大切な治療です。
公開日:2023/11/13
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
根管治療(こんかんちりょう)とは、虫歯菌が歯の神経(歯髄)まで感染している場合に行われる治療です。また、過去に神経の治療をしたものの痛みや膿が出たり、歯が折れてしまった場合などにも根管治療が行われます。
根管治療では、歯の神経に感染した細菌を取り除きます。根の先まで感染した歯を削り、しっかりと洗浄と消毒を行い、お薬(充填剤=じゅうてんざい)で詰め、土台を被せて最後に被せものをします。
日本の根管治療は公的医療保険が適用されます。しかし、マイクロスコープを使用した根管治療は自由診療で行われることが多いため注意が必要です。
また、根管治療は高い技術が必要で、治療には長い期間・時間を要することもあります。なぜならば根管はとても細く、曲がっていたり、複雑に枝分かれしており目視では治療できないためです。
大臼歯(だいきゅうし)は根管が複数存在しており、きちんと治療をするのが特に難しいとされています。
根管治療は、一般的な虫歯治療よりも時間がかかってしまう可能性が高いといわれています。根管はとても複雑な構造をしており、虫歯菌の除去が難しく、目視ができないため、慎重な治療が必要なので何度も通院すことになります。
まずは根管治療が本当に必要であるのかどうか虫歯の進行度合いや症状を確認します。
電気歯髄診断やレントゲンなどを撮影された上で、根管治療が必要か診断され具体的な治療計画を立てていきます。
虫歯菌に感染してしまった歯の神経や血管を取り除く処置を行います。取り残しのないように、かつ歯を傷めてしまわないように、丁寧に行われます。
薬液で根管を綺麗に洗浄していきます。細菌が入らないように薬を入れて仮の詰め物で封鎖します。
綺麗になった根管を封鎖したら、被せものをするための土台を作ります。土台の種類は金属製やグラスファイバー製、プラスチックなどがあります。
最後に土台の上に被せものを装着して治療は終了です。
2023年時点で、マイクロスコープ(顕微鏡)を利用した歯科治療が普及してきています。その中でも特に利用されいるのが、複雑に枝分かれをして見えにくい根管治療です。
マイクロスコープを活用することによって、より精度の高い治療が可能となりました。従来では見えなかった部分も拡大することによって見ることができるので、取り残しや歯を削りすぎて傷めてしまうリスクの軽減、治療時間の短縮につながります。
マイクロスコープを使った根管治療は全額自己負担の自費診療で行う歯科医院が多いです。マイクロスコープの導入には数百万円と高額な費用がかかるため、公的医療保険が適用される範囲内で使用している歯科医院は少ないです。
マイクロスコープを利用した根管治療の一番のメリットは、数十倍に拡大して歯の根管の状態の確認ができることです。従来よりもさらに精密な治療によって、再感染のリスクの防止に努めます。
反対にマイクロスコープのデメリットは、治療費が3万円~10万円と高額になることです。費用はかかりますが高い精度の根管治療が受けられるので歯を長持ちさせることができます。
2023年6月 株式会社メディカルネット調べ
根管治療を行う際には、歯科用CTで状態を確認することもあります。CTを活用することによって、パノラマやレントゲンなどの撮影では確認できない部分を3次元的に確認することができます。
治療前に根管の状態を正確に診査・診断を行い、上で紹介したマイクロスコープとCTを活用することによって、従来の治療では見えなかった根管に対してしっかりと目で確認しながら治療することが可能となりました。
根管治療を成功に導く要因は、もちろんマイクロスコープやCTなどの機器の有無だけではありません。無菌的な環境での治療がされていることも大切な要素です。
根管治療では、主に虫歯菌を取り除く処置を行うため、せっかく根管治療を行っても、唾液や食べかすが根管内に入って再感染を起こしてしまっては意味がありません。
虫歯菌の再感染を避けるために、治療中にはラバーダムといったゴムが使用されることが多いです。治療する歯以外をラバーダムで覆い、防湿することにより唾液に含まれる細菌が根管内に侵入することを防ぎます。
また、同時に根管治療時に使用する器具の誤飲なども防いでくれるといったメリットもあります。
マイクロスコープを利用した根管治療では、従来確認することができなかった箇所まで確認できるようになりました。マイクロスコープを活用した治療は自由診療になることが多いですが、より精密な治療が受けられるメリットがあります。