監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
歯列矯正によって頬こけしてしまわないか不安を抱いていませんか?
矯正治療を始めた方のなかには、抜歯をして矯正したら頬がこけたように見えて心配している方もいるかもしれません。
歯列矯正によって頬こけしてしまう原因や悩んでいる際に実践したい改善方法を確認してみましょう。
公開日:2023/08/14
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
歯列矯正によって頬がこけてしまう原因は主に、「抜歯」「咀嚼機能の低下」「嚙み合わせの改善」といった3つが挙げられます。
原因によっては再矯正を行っても改善がなかなか難しい場合や一時的に頬こけが起こってしまっている場合もあり、改善が可能なこともあります。
治療前のカウンセリングや治療計画の説明を受ける段階で、抜歯によって頬コケが起こってしまわないか確認しておくことが大切です。歯列矯正によって頬こけが起こってしまう原因を知っておきましょう。
どの歯を抜くかにもよりますが、抜歯によって前歯が後退することで頬がくぼんでみえることが、頬こけの原因として最も考えられるでしょう。例えば、上顎が下顎より前にあると出っ歯を改善するために抜歯をして矯正する場合、特に上の歯並びが後退し、頬がこけてしまうおそれがあるのです。
矯正治療中は矯正装置をお口の中に装着しているため咀嚼(そしゃく)がしづらく、食事の咀嚼回数が減ってしまう場合があります。
噛む回数が減るということはお口周りの筋肉があまり使われずに衰えてしまいやすく、頬がこけてしまう可能性も否めません。
ただ、矯正治療が終わって普段どおりに食事ができるようになれば、筋肉が回復して頬こけが改善する可能性が高いでしょう。
噛み合わせが深い、歯並びが悪いといった理由でうまく噛めない場合、顎やお顔の筋肉に余計な力がかかってしまい、エラが発達したように見えてしまう場合があります。
こうした症状を歯列矯正によって改善するとお口周りの筋肉も使えて余計な力がかからなくなり顔の張りが改善されて頬がこけたように見えることがあります。抜歯に比べると、頬がこける原因としての可能性は低めです。
歯列矯正後、頬がこけてしまったと感じてしまった場合も原因によっては徐々に改善していくことが可能です。
歯列矯正中はワイヤーを装着しているため、固い食べ物を食べるとブラケットが外れるなどするため、意識的に避けるようにしています。すると、頬の回りの筋肉や、お口を開けたり閉じたりするための咀嚼筋(そしゃくきん)の機能が低下してしまい、一時的に頬がこけて見えてしまうことがあります。
頬のこけには個人差がありますが、根気よくエクササイズを続けていくことが必要な場合もあります。矯正で頬こけしてしまったと感じた場合にできる改善方法をみていきましょう。
うまく咀嚼できないことによって筋肉が衰えて頬がこけている場合、表情筋をトレーニングすることでより早く改善していく場合があります。
表情筋トレーニングの一例として「あ」「い」「う」「え」「お」という音を、大きく目を開きながらお口をダイナミックに動かす「あいうえおトレーニング」があります。これによって表情筋をしっかり動かすことが可能です。
このほかにも、お口の中、とくに頬に空気をたっぷりためて膨らます「空気トレーニング」もあります。たまった空気を上唇の裏側にもってきて、それから時計回りに回転するように移動させます。
反対周りにも動かしていき、左右10回ほど繰り返すことでトレーニングになるのです。また、口角を左右均等に10回持ち上げるというエクササイズもあり、表情筋を鍛える方法はさまざまです。
食生活の改善は矯正装置が入っている間は難しいですが、矯正治療が終わったあとも頬こけが気になる際には効果的な方法です。例えば、ガムをよく噛むトレーニングはストレスなくできます。
歯並びも良くなっている状態で行うので筋肉バランスもよくなり、顎周辺の筋肉も鍛えやすいでしょう。
矯正抜歯による口元後退で必ずしもほうれい線が深くなるわけではありません。
出っ歯による口元が突出した感じが解消されると頬の張りがなくなってほうれい線が深くなったように見えることがあります。また、ほうれい線が深くなる原因は加齢も大きく関係します。
一方、歯並びを改善することによってほうれい線が改善されるケースもあります。先ほどと同じく出っ歯を例にすると、出っ歯の方は口呼吸になりやすいことから表情筋が弱く、ほうれい線ができやすい状態です。
出っ歯が矯正されると口呼吸が軽減されて表情筋が鍛えられ、ほうれい線が目立たなくなるということがあります。
矯正治療によって頬がこける、ほうれい線が深くならないか気になる場合、矯正治療前のカウンセリングで抜歯時の頬こけのリスクなど気になることを説明してくれるクリニックで治療を受けましょう。
矯正治療によって頬こけする原因はいくつかありますが、たいていは一時的なもので治療後などに改善していく可能性があります。
頬こけを改善できるエクササイズなどもありますが、改善までには時間がかかってしまうことが少なくありません。そのため、あらかじめ頬こけしてしまう原因や対策を知っておくことが大切です。
頬こけの原因として加齢も深く関係していますので、リスクや改善するためのプログラムの提案などをきちんと説明してくれる歯科医院を選ぶなどするとよいでしょう。