監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
クレジットカードや交通系IC、QRコードスマホ決済などの電子決済。
今やほとんどの施設で電子決済が使えるため、現金を持ち歩かない人もいるのではないでしょうか。
多くのお店やサービスで使える電子決済ですが、多くの歯医者では「お支払いは現金のみ」なんです。
なぜ歯医者ではクレジットカードや電子決済が使えないのでしょうか?
公開日:2023/05/22
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
今月はちょっと苦しいけど実際の支払いは来月になるから通院できるのに…
思ったより治療費が高くて手持ちの現金ではちょっと足りない…
など、クレジットカードで歯医者の費用を払いたいタイミングもありますよね。
ですが、ほとんどの歯医者でクレジットカード払いはできません。
矯正治療、インプラント治療、ホワイトニングやセラミックなどいわゆる自由診療と呼ばれる高額な治療であればクレジットカード払いができる歯医者もありますが、虫歯治療や歯周病治療、そのほか公的医療保険を適用した治療ではクレジットカード払いができない歯医者がほとんどでしょう。
なぜ歯医者でクレジットカードが使えないのか、その理由をみていきましょう。
まずそもそも、クレジットカードや電子決済はシステムを導入していなければ利用できません。
一部の飲食店や雑貨屋さんなどで、クレジットカードや電子決済が使えなかった経験はあるかと思います。
クレジットカードや電子決済を使うためのシステムをお店側が費用を支払って導入する必要があり、システムがないお店では必然的に使うことができません。
これは歯医者も同じで、システムを導入していなければクレジットカードを使うことができません。
ホワイトニングやセラミック、インプラント治療の時などではクレジットカード払いが使えたのに、次のお会計では断られてしまった、という人もいるでしょう。
クレジットカードのシステムがあるのに使えない理由はなぜなのか?
その理由は、クレジットカードの利用手数料にあります。
クレジットカードの利用手数料はクレジットカード会社によって異なりますが、日本ではおおよそ利用料金の3%程度だそう(各社が公表している利用手数料から算出)。
クレジットカードの利用手数料は原則クレジットカード決済を行う側、歯医者側が3%程度の利用手数料を負担しなければなりません。
しかし、現金払いであればこの手数料はかからない。
そこで、クレジットカードシステムがあっても、患者さんには現金払いのみの対応だと案内していることがあります。
もしかしたら「利用手数料がたった数%ならば使わせてほしい」と思うかもしれません。
公的医療保険適用した治療では患者さんの窓口負担は1~3割、残りの7~9割の治療費は健康保険料(税金)から支払われていますね。
そのため、税金から莫大な利益を得る人を出さないために、公的医療保険で受けられる治療は、国によって治療費(診療報酬点数)が一律に設定されています。
歯医者は公的医療保険を適用した治療に関してはこの診療報酬点数に従って治療費を請求しているため、保険治療をしてもあまり利益が得られないといわれています。
近年はいわゆる銀歯などに使われる金属が高騰しており、診療報酬点数の改定が追いつかないため銀歯治療なんかは治療すればするほど赤字になるほどです。
そんな治療費の中から、さらにクレジットカード利用手数料がひかれてしまうと、歯医者の利益はどんどん少なくなってしまいます。
少しでも利益を確保するために、公的医療保険のお会計ではクレジットカードの利用ができない歯科医院が多いのです。
利用手数料を自分で負担するからクレジットカードで支払いたいと思うかもしれませんが、それはできません。
公的医療保険のルールとしても、患者さんに利用手数料を負担させられないのです。
公的医療保険を適用してできる治療は公的医療保険を適用し、公的医療保険の範囲外の費用を患者さんが自己負担する、という方法は混合診療と呼ばれ、禁止されているのです。
公的医療保険を適用する以上、決められた治療費(診療報酬点数)以外の金額を支払わせることはできません。
たとえ実際にかかった手数料であってもです。
治療はすべて自費診療で行い、かつ利用手数料を支払うと伝えればクレジットカードを使えるかもしれませんが、治療費が非常に高額になります。
また、システム導入時にクレジットカード会社とシステム導入者の間で結ばれる契約の内容に「利用手数料を利用者に負担させてはいけない」という項目が含まれているケースがあります(※カード会社によります)。
この場合、利用手数料を患者さんに負担させてしまうと、カード会社との契約違反になってしまいますね。
よって、手数料を払うからクレジットカードを使わせてほしいと交渉することもできません。
それでもどうしても歯医者の費用をクレジットカードで払いたい場合はどうしたらいいのでしょうか。
クレジットカードを使える歯医者かどうかを知るにはどうすればいいかご紹介します。
クレジットカードを使えるかどうかは、歯医者のホームページに書いてある場合があります。
治療したいと考えている歯医者、いつも通院している歯医者のホームページを見て、支払い方法について書いてあるかどうかを確認してみてください。
記載されていない場合は、保険診療ではクレジットカードが使えない可能性が高いです。
また、クレジットカード使用可となっていても一部の治療のみの可能性がありますので、詳細までしっかり確認、または問い合わせをしてください。
ホームページに支払い方法や費用についてを記載していない歯医者も多くあります。
その場合は、歯医者の予約サイト(ポータルサイト)に記載されているその歯医者の情報を見てみてください。
予約サイトではテンプレートが用意されているため、支払い方法についても掲載がしやすく、ホームページには掲載していない歯医者でも予約サイトには掲載している可能性があります。
支払い方法を記載しなければ、歯医者の情報を載せられないサイトもあるようです。
サイトによって、クレジットカード利用可だけのサイトや取り扱いブランド(VISAやJCB、マスターカードなど)まで記載しているサイトなど様々ですので、いろんなサイトを見てみてもよいかもしれません。
どこにも書いていない場合は、歯医者に直接問い合わせしてみてください。
電話で受付の人に聞けば、クレジットカードが使えるかどうかの返事はもらえるはずです。
自分が何の治療を受けたいのかが決まっているかをはっきりさせて「○○の治療を受けたいのですがクレジットカードで支払えますか」と聞くことで、より確実な答えを受けられるはずですよ。
ホームページや予約サイトでクレジットカード払い可となっていても、すべての治療でクレジットカードが使えるわけではないこともしばしばみられます。
高額である自由診療のみクレジットカードが使える場合や、クレジットカードが使える最低治療額が決められている可能性があります。
ホワイトニングや自費のクリーニングなど、自由診療の中では比較的安価の治療の場合は、クレジットカードが使えないかもしれないので、事前に確認しておきたいですね。
また、クレジットカード可でも使えるブランド(VISAやJCB、マスターカードなど)が限られていると、手持ちのカードでは支払えないことがあります。
そのほか、セラミックやインプラントなど高額な自費診療を払おうとしたらカードの上限額に達しており使えなかった患者さんもいるため、複数の種類のクレジットカードの持参や上限額の確認をしておきましょう。
公的医療保険を適用した治療では原則クレジットカードや電子決済は使えないと思っておきましょう。
クレジットカード払い可能と表記がある場合も、初めていく歯医者の場合は現金を用意しておくことをおすすめします。
初めて通院する歯医者に行く場合は、初診料や検査料、当日に治療できた場合にかかる治療費などを含めて具体的には1万円ほど用意しておくとよいでしょう。
クレジットカードや電子決済が普及していますが、医療機関はまだまだ現金払いのところが多いです。
事前によく確認して支払いに備えましょう!