監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
歯列矯正が無事に終わってリテーナーを装着しているけど、色付きや匂いが気になる方は多いと思います。リテーナーは長く使用していく物であるため、こまめに洗浄することが大切です。リテーナーを全く洗わないと歯垢や歯石が沈着し、口の中の細菌やカビもリテーナーに付着するので、放置すると益々不衛生になります。
リテーナーには取り外しが可能なタイプ(可撤式・非固定式)と取り外しができないタイプ(固定式)の2種類があります。この記事では、リテーナーの役割と、非固定式リテーナーの洗浄方法を中心に解説します。
公開日:2021/11/22
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
リテーナーについて詳しく知らない方もいらっしゃると思いますので、まずはリテーナーの役割を説明します。
矯正歯科で使われるリテーナー (retainer) とは、歯列矯正が終了後、綺麗に並んだ歯が元の状態に戻ろうとすること(後戻り)を最小限に抑える歯科用装置のことを指します。
歯列矯正の方法は大きく二つに分かれます。ブラケット(ワイヤー)矯正とマウスピース矯正です。どちらの矯正後も必ずリテーナーを装着することが肝要です。
歯列矯正で歯を動かす治療(動的治療)の後に、リテーナーによって歯が後戻りしないようにする治療(保定)を行うことが一般的です。歯を綺麗に動かしたら歯列矯正終了というわけではありません。むしろ、歯を動か終わった後の保定期間が歯列矯正において最も重要なステージとなります。
リテーナーは取り外しができないもの(固定式)と、取り外しができるもの(非固定式)の2種類があります。
固定式のリテーナーは舌側弧線装置と呼ばれ、前歯の裏側にワイヤーを接着して後戻りを防ぎます。非固定式のリテーナーはマウスピースのような装置が一般的です。
リテーナーが固定式の場合、ご自身で取り外しはできないので、半永久的に装着すること(永久保定)になります。もし、取り外しをしたい場合、矯正歯科のクリニックに行って、外すことは可能です。固定式リテーナーを外す際の費用は保険適用外になるため、撤去費用を知りたい方は歯科医院に問い合わせてみてください。
非固定式のリテーナーはマウスピースのようなものをイメージしてもらえれば良いと思います。取り外しができるのがメリットである反面、壊れたり無くしたりするなどのトラブルが生じた時に作り直しが必要です。作り直しの相場ですが、10,000円程度かかることが多いです。
リテーナーの装着時間ですが、取り外しができるタイプの場合、矯正で歯を動かした直後は1日20時間以上の装着を一定期間お勧めします。歯列矯正で歯を動かした直後は非常に不安的で歯が後戻りしやすいためです。
リテーナーの装着時間に関しては色々な考え方があります。歯を動かした期間と同じ期間装着するよう指示する歯科医院や、2~3年装着するよう指示する歯科医院など様々です。
「リテーナーを○○年装着すれば歯は後戻りしない」という明確な根拠は残念ながら実在しません。後戻りを極力最小限に抑えたい場合、取り外しのリテーナーであれば、できる限り毎日長時間の装着かつ、長期間の使用をお勧めします。
以下、個人的な意見になりますが、歯を動かした期間と同期間は食事や歯磨き以外はリテーナーをしっかりと装着し、その後は夜だけ装着するようにするなど、徐々に時間を減らしても良いと思います。
リテーナーの取り外しがどうしても面倒な場合、固定式のリテーナーを付けてくれる矯正歯科のクリニックもあります。保険適用にならず、片顎2~3万円程度が相場です。興味のある方は歯科医院にお問い合わせください。
リテーナーの洗浄剤について説明していきます。リテーナー用の洗浄剤は歯科医院や通販サイトで購入することが可能です。
「リテーナーを水洗いで十分では無いか」と思われる方もいるかもしれませんが、リテーナーに付着した汚れ(歯垢)や着色は水洗いでは十分に除去することはできません。
リテーナーの洗浄剤を利用して、しっかりと汚れや着色を落とすことをオススメします。リテーナーの洗浄剤には種類があり、一般的な洗浄剤は、つけ置きするタイプのものです。その他、泡タイプやスプレータイプ、ウェットシートなど、リテーナーを清潔に保つための様々な製品が販売されています。
リテーナーを洗浄するときのポイントを紹介します。
リテーナー洗浄剤の使用方法は製品毎に異なります。使用方法を確認して正しく使用することでリテーナーを清潔に利用することが可能です。
硬いブラシで磨くとリテーナーに小さな傷ができ、リテーナーに汚れや着色が付着しやすくなります。傷がつかないように、軟らかいブラシで磨くようにしましょう。
後は、研磨剤の入っている歯磨き粉でリテーナーを磨くのは控えましょう。リテーナーに傷がつきやすくなります。ブラシで磨く際は何も使用せず磨くだけで大丈夫です。
リテーナーはプラスチックでできています。プラスチックは熱湯により変形し、一度変形すると装着できなくなる可能性があります。水を使って洗浄する場合はリテーナーが変形しないように、40度くらいのぬるま湯につけるようにしましょう。
せっかく綺麗にリテーナーを洗浄しても、リテーナーを使わない時に保管するケースが雑菌だらけでは元の子もありません。リテーナーケースも洗うなどしてきれいにしましょう。
部分入れ歯のように、金属線とプラスチックで構成されているリテーナーを装着する場合の注意事項になります。リテーナー洗浄剤につけ過ぎることにより金属が腐食するなどの問題が生じる可能性があります。
リテーナー洗浄剤の使用は説明書通りに行いましょう。
リテーナーを洗浄しないとお口の中の細菌やカビがリテーナー表面で増加してしまいどんどん不衛生になっていきます。本記事では、リテーナーのさまざまな洗浄方法や洗浄のポイントを紹介していますので、分からなくなったら何度も読み返してもらえれば、と思います。
リテーナーを洗う頻度ですが、リテーナー洗浄剤などを利用する場合、製品の説明書通りに使用して、リテーナーを清潔に保つようにしましょう。
また、リテーナーの洗浄剤がない場合、重曹を代用することも可能です。例えば、コップ1杯の水に重曹を大さじ2杯程度入れて30分程度つけておくと、匂いや汚れをとることができます。
他には超音波洗浄器によるリテーナーの洗浄もおすすめします。リテーナーを洗浄剤や重曹で洗いたくない場合、超音波洗浄器に水を入れて洗うだけでも汚れや匂いがある程度とれます。試してみてください。
リテーナーに付着した汚れはマウスピースが匂う原因に加えて、虫歯や歯周病のリスクを上昇させる可能性があります。非固定式のリテーナーの場合、取り外しを行なって洗浄することが可能ですが、固定式のリテーナーは歯の裏側にワイヤーが接着されているので、歯磨きが難しく歯石が溜まりやすいです。リテーナーが外れていないかの定期的なチェックに加えて歯石除去などの歯のクリーニングをしてもらうことをお勧めします。
リテーナーを洗浄剤などで定期的に洗って、毎日しっかり装着するようにしてくださいね。