矯正治療中に虫歯になったらどうするの?

矯正治療を受けていると、歯に矯正装置を取り付けることになります。一般的な装置としてはマルチブラケット装置が挙げられますが、患者さん自身では外せないため、器具が歯磨きの妨げになります。

このように歯ブラシがしにくい環境の中、歯の移動に伴い今まで見えなかった歯の表面が見えるようになり、「もしかしたら虫歯かもしれない」と患者さんが気付かれるケースもあります。

もし、矯正治療中に虫歯になった場合、どのような手順を踏んで治療をすることになるのでしょうか。また、矯正治療前に虫歯が発見された場合はどのような対応になるのでしょうか。この記事では、こうした疑問についてお答えします。

公開日:2021/09/13

監修医師

歯科医師 古川雄亮先生御侍史

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

矯正治療中に虫歯になったらどうするの?

■目次

  1. 矯正治療中に虫歯になってしまった
  2. 矯正治療を中断して虫歯治療をしなきゃいけないの?
  3. 矯正治療を始める前に虫歯が見つかったら?
  4. マウスピース矯正だからって油断は禁物
  5. まとめ

矯正治療中に虫歯になってしまった

歯列矯正中に虫歯にならない為には念入りなケアが必要

歯列矯正をしている間、矯正装置を歯の表面に装着します。矯正装置にはいくつか種類がありますが、一般的なマルチブラケット装置の場合、患者さん自身では外せない固定式となります。そのため、歯が磨きにくくなって汚れが残りやすくなります。

本来であれば日々の歯磨きによって虫歯の原因となる歯垢を取り除いて予防しますが、装置によってスムーズな歯磨きが妨げられてしまいます。

歯垢が残りやすい環境では、歯周病のリスクも高まります。歯周病は、歯を支えている組織が細菌によって炎症を引き起こされるもので、進行すると歯をグラつかせます。歯垢は唾液中のカルシウムにより段々と硬くなって歯石と呼ばれる状態になり、歯ブラシでは取れなくなってしまいます。

このように、矯正治療中は口内環境を清潔に維持するのが難しいため、こまめで丁寧な歯磨きが求められるのです。

矯正治療を中断して虫歯治療をしなきゃいけないの?

歯列矯正中に虫歯ができてしまったら

もし、矯正治療をしている間に虫歯が見つかったら、矯正治療を中断して虫歯の治療をしなければいけないのでしょうか?

虫歯ができる場所は大きさなどにもよりますが、多くの場合は装置を取り外さずに虫歯治療ができます。また、虫歯は歯の表面が脱灰するなどの初期段階であれば、削らずに処置をして経過観察をすることもあります。

ただし、虫歯が大きかったり、治療のために装置が邪魔になるような場合は、矯正装置を外して虫歯治療をすることもあります。このようなケースでは矯正治療を中断せざるを得ません。

矯正治療を始める前に虫歯が見つかったら?

矯正治療中に虫歯が出来てしまった場合、先に虫歯治療から行う

矯正治療をスタートする前に治療が必要な虫歯が確認された場合、基本的には先に虫歯治療をしてから矯正を始めます。矯正治療の前からすでに痛みが強いのであれば、痛みを和らげることが先決です。

ただし、矯正治療は歯並びそのものが変わるため、矯正治療前とは噛み合わせが変わる可能性があります。初期の虫歯であれば予防措置だけで済みますが、もし、虫歯治療で歯を削って被せ物や詰め物をする必要があれば、矯正が完了した後に被せ物などを作り替えることになるかもしれません。

矯正前に見つかった虫歯の大きさや治療方法などにより、どのタイミングで虫歯治療を行なうか検討することになります。

また、虫歯治療は進行しているものほど治療時間や回数がかかってしまいます。初期の段階であれば1回の治療で終わることが多いですが、詰め物や被せ物が必要なものでは一般的に2~3回、神経を抜かなければならないケースではさらに多く通院することになるかもしれません。

矯正治療と合わせてどれくらいの期間が必要になるのか気になる場合は、歯科医師に相談しましょう。

マウスピース矯正だからって油断は禁物

矯正装置の中には自分で取り外しが可能なマウスピース矯正もある

矯正装置は、固定式のマルチブラケット装置のほかに、マウスピース型の矯正装置もあります。これは、自身の手で取り外し可能なマウスピースをはめて歯を動かす矯正です。歯を動かしたい方向に合わせてマウスピースを複数作り、取り替えながら少しずつ歯を動かします。

マウスピース矯正のメリットは、患者さんが取り外しできるので食事や歯磨きをいつもどおり行なえる点です。そのため、マルチブラケット装置に比べると歯を磨きやすく、お口の中を清潔に保てます。

しかし、マウスピース矯正であれば虫歯のリスクがないというわけではありません。マウスピース装着時は、唾液が歯に循環しにくいという問題があります。唾液には細菌を洗い流すという性質があるので、唾液が歯にうまく循環されないと細菌が歯に残ったままになってしまいます。

もし、マウスピース矯正中に虫歯にかかった場合、装置を外して治療をすることはできます。しかし、被せ物や詰め物をするような事態になると、今後の矯正のために作製したマウスピースが合わなくなって作り直さなければならなくなる可能性があるので、注意が必要です。

まとめ

矯正治療中に関わらず普段から虫歯にならないように丁寧なケアを心がけましょう

矯正治療中に虫歯になった場合、虫歯の大きさなどによっては矯正を中断して装置を外し、虫歯を治療する可能性もあります。
装置を自分で取り外せるマウスピース矯正であれば、これまでどおり歯磨きができます。しかし、矯正中は唾液が流れにくいため、虫歯のリスクも残ります。

矯正装置の種類にかかわらず、矯正治療中は虫歯にならないよう丁寧に歯磨きをすることが望まれます。装置と歯の間は歯間ブラシやタフトブラシを使うなど、磨き方を工夫してみてくださいね。

矯正治療のメリットのひとつは、矯正後に歯並びが綺麗になって歯が磨きやすくなり虫歯や歯周病のリスクが低下することでしょう。矯正治療をしっかり受けることで、歯がきれいになるだけでなく、虫歯や歯周病にかかりにくい健康的なお口になっていくことが期待できます。

この記事で、矯正治療に対するあなたの不安が少しでも解消されれば幸いです。

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