マウスピース矯正の失敗5選と知っておくべき歯医者選び6ポイント

従来の矯正治療に比べて目立たず、安価に受けることができるマウスピース矯正。
マウスピース矯正であれば受けたい!と思う方も多いのではないでしょうか。

ですが、マウスピース矯正によって出っ歯になった、噛み合わせが合わなくなったなどの失敗談もネットで目にしますよね。
マウスピース矯正のよくある失敗や失敗しないためのポイント、万が一失敗してしまった時の対処法について紹介します!

マウスピース矯正でお悩みの方はぜひご覧ください。

公開日:2021/06/30  更新日:2022/09/05

監修医師

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

目次

  1. マウスピース矯正のよくある失敗5選
  2. 失敗1:噛み合わせが悪くなった
  3. 失敗2:出っ歯になった
  4. 失敗3:歯を削られた
  5. 失敗4:隙間が残っている
  6. 失敗5:効果が出ない
  7. マウスピース矯正の適用症例とは
  8. マウスピース矯正に失敗したと思ったら
  9. まとめ

マウスピース矯正のよくある失敗5選

マウスピース矯正は従来のワイヤー矯正に比べて安価で手軽に受けられるため、近年人気の矯正方法です。
しかし、マウスピース矯正は失敗談も多く、治療を開始するにあたって不安に感じることも多いのでは。

実は、マウスピース矯正の適用外である歯並びに対して行われると、さまざまなトラブルの元となる可能性があるのです。
マウスピース矯正のよくある代表的な失敗についてみていきましょう。

失敗1:噛み合わせが悪くなった

マウスピース矯正では、マウスピースの厚みの影響で歯が押し込まれます(専門用語で圧下するといいます)。

そのため、マウスピースを外した際に圧下による影響が生じて上下の歯が上手く噛み合わなくなることがあります。

マウスピース矯正は歯並びの見た目をきれいにすることに特化している矯正方法と言われており、噛み合わせの治療は含まれていないケースもあるようです。

健康のために、見た目だけでなく噛み合わせなどの機能面もしっかり治療したい方は注意が必要ですね。

失敗2:出っ歯になった

マウスピース矯正は歯を大幅に動かすことは難しく、自分自身の歯を少し削って歯と歯の間に隙間を作るなど、非抜歯で行う方法をとることが多いようです。

歯を抜いて確保できるスペースと同じだけのスペースを自分自身の歯を削って確保することは難しく、マウスピース矯正では前歯は下がりにくい傾向にあります。

そのため、「歯並びはきれいになったけど、出っ歯は治らなかった」というケースや「以前より前歯が前に出て出っ歯になってしまった」という相談が増えています。

また、出っ歯になっている原因が骨格に起因するものであった場合は、治療時の歯の移動が少ないというマウスピース矯正の特性上、治すのは難しいとされています。

失敗3:歯を削られた

矯正歯科学会によるとマウスピース矯正は適用範囲が狭く、歯を大きく移動させることは困難とされています。

歯を抜歯してスペースを作ると移動量が多くなり、マウスピース矯正では治療ができないため、自分自身の歯を僅かに削るディスキングやIPRと呼ばれる治療法を行うことが多いようです。

僅かに歯を削ることは従来の矯正治療でも行われている方法であり、大きな問題はないとされています。

しかし、歯と歯の間を削ったことによりほかの歯と比べ歯の形が異なってしまったなどの相談も寄せられているため、注意が必要ですね。

失敗4:隙間が残っている

抜歯をしてマウスピース矯正を行ったら治療終了と言われても隙間が残ったままにされた、歯を削って作ったスペースが残っているというトラブルもあるようです。

失敗3でもご紹介しましたが、マウスピース矯正の適用範囲は狭く、抜歯矯正や大きく歯を動かす矯正治療には適していないとされています。

マウスピース矯正で歯を動かせる範囲を超えたスペースを抜歯やIPRにて作ってしまうと、最後に埋めることができず隙間が残ったままになってしまうのです。

失敗5:効果が出ない

マウスピース矯正の成否は、患者さんがマウスピースを実際に装着している時間やマウスピースの管理方法など、患者さん個人の行動にも大きく左右されます

そのため、治療開始当初の予想とは異なる結果を生んでしまう可能性もあります。

また、マウスピース矯正の適用範囲外の症例なのに治療可能と診断をされてしまい、いくら続けても効果がでない、なんてことも。

治療法に問題はなく、装着時間や管理方法など患者さんに不備があったとされ、再治療を断られたり、追加の費用を請求されるなどのトラブルも発生しています。

マウスピース矯正で失敗しないための6つの指針

残念ながら、マウスピース矯正を行っている歯科医院には矯正治療に精通した専門医がいないケースも多く、マウスピース矯正が適用される症例かどうかの診断が曖昧なままマウスピース矯正を勧め、治療を開始してしまうこともあるのが実情です。

公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会は、患者にとって信頼がおける矯正歯科を見極めるための目安となる、以下のような6つの指針を提言しています。

・頭部X線規格写真(セファログラム)検査をしている
・精密検査を実施し、それを分析・診断した上で治療をしている
・治療計画、治療費用について詳細に説明をしている
・長い期間を要する治療中の転医、その際の治療費精算まで説明をしている
・常勤の矯正歯科医がいる
・専門知識がある衛生士、スタッフがいる

参考:公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会

これらの指針を目安として、安心して治療を受けられる医院を選んでみてくださいね。

マウスピース矯正のみを検討している場合も、本当に適用症例かどうかなど、矯正専門医やワイヤー矯正を行っている歯科医師のカウンセリングを受けたり、検査結果を聞いてみることがおすすめですよ。

また、マウスピース矯正は低価格や手軽さといった要素がメリットですが、メリットだけを見て治療を開始するのは危険です。

マウスピース矯正のデメリットについても、事前にしっかりと聞いておきましょう。
治療中に不安があった場合に相談ができる環境かどうかもポイントですね。

また、最終的な仕上がりが患者さんが希望する結果にならなかった場合はどのような対応がされるのか、もあらかじめ確認しておきましょう。

マウスピース矯正の適用症例とは

日本矯正歯科学会によると、マウスピース矯正の適用範囲は、
「歯の移動量の少ない症例に限られる(軽度の乱杭歯、軽度の歯の空隙、矯正治療後の軽度の後戻り等)」
とされており、適用される症例は少ないでしょう。

骨格が原因の症例や、歯を精密に動かす必要のある症例、歯を大きく動かす必要のある症例はマウスピース矯正は適していないとされています。

しかし、明確に治療の可否が決められているわけではないため、マウスピース矯正医は可能と診断したが、矯正専門医はマウスピース矯正は不可能と診断するなどのケースも多いようです。

診断に違いがあった場合、自分が求める「メリット」を得られる診断を肯定したくなりますが、「デメリット」も踏まえてよく検討して選んでくださいね。

マウスピース矯正に失敗したと思ったら

まずは治療を受けている歯科医師とよく相談をしてみましょう。
疑問や不安、気になっているポイントを紙に書いておくとスムーズに伝えやすくなります。

それでも疑問や不安が解決しない場合は、セカンドオピニオンを受けてみましょう。

セカンドオピニオンを受ける際は、通院している歯科医院から矯正開始時から今までの治療の資料を提供してもらうと詳しい経過が伝わりますよ。

転院や返金への対応は歯科医院やマウスピース矯正のブランドによって異なります
契約内容によっては、返金は受けられないことも。
そのあたりも含め、担当の医師とはよく相談しましょう。

もしも、いくら対処法を探っても上手くいかないようであれば、治療終了後に再治療を受け付けている歯科医院で再治療を受けるのも1つの選択肢です。

まとめ

マウスピースでの矯正にはいくつものメリットが存在します。

しかし、今回の記事で紹介してきたように、マウスピース矯正は決して万能ではなく、治療に伴うリスクも少なくありません。

治療後の歯並びを納得いくものとするためにも、治療にかかるハードルが低いからといってマウスピース矯正にこだわりすぎることなく、患者さんご自身の歯並びや症状と相談したうえで、適切な治療を行ってくれる歯科医院を探していきましょう。