監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
虫歯の治療がすべて終わっていないと矯正治療は始めることができないの?
矯正治療と虫歯治療はどちらを優先して治療するべきなの?とお悩みの方へ。
矯正治療は虫歯があっても始めることができます。
また、計画的に治療を行うことで、虫歯治療にかかる費用を抑えることができるかもしれません。
矯正治療と虫歯治療はどちらから始めたらよいのか?
矯正治療のための検査で虫歯が見つかったら、矯正治療を始めることはできないの?といった疑問にお答えします。
公開日:2021/06/14 更新日:2021/09/10
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
虫歯があると矯正治療を先に始めることは断られてしまう、とお思いの方も多いですが、虫歯があっても矯正治療を始めることはできます。
もちろん、虫歯の穴が深い場合神経の治療が必要になる場合、歯冠が崩壊して被せ物の治療が必要になる場合などでは矯正治療を先に始められないこともあります。
しかし、削るほどでもない着色程度の初期虫歯、矯正器具を装着するうえで邪魔にならない部分の虫歯、器具を付けた後でも治療ができる部分の虫歯などは、矯正治療と虫歯治療を同時に行うことで時間のロスを減らし、患者さんが希望したタイミングで矯正治療を始めることができるのです。
また、矯正治療の開始は器具を付けるところから、と思ってしまいがちですが、矯正治療のスタートは「矯正治療を行うための検査を受ける」ことです。歯型を採得したり、レントゲンを撮影するので、虫歯や歯周病の有無なども併せてチェックします。
虫歯を治療する前に検査を行うほうが、場合によって矯正治療を効率よく行えるかもしれませんよ。
矯正治療をしたい、と思った時は少しでも早く矯正治療を始めたいですよね。
でも虫歯があるし矯正治療できるかな…と思ったら、まずは矯正歯科へ相談へ行きましょう。
一般歯科では虫歯の治療をしてから矯正歯科へ行くことをおすすめされがちですが、初めに矯正歯科に行くメリットがあります。
まず、先に矯正歯科に行き「矯正治療を行うための検査」を受けることで、虫歯の治療が必要な歯と必要がない歯を決めることができます。
矯正治療では歯を抜歯するケースもあり、虫歯の歯を抜く場合は治療する必要はないですよね。
それに、矯正歯科に先に行くことで結果的に矯正治療を早く始めることができ、矯正治療に対するモチベーションを失わなくて済むかもしれません。
実は、「矯正治療を行うための検査を受ける」前に虫歯を治してしまうと損をしてしまう可能性があります。
矯正治療では患者さんの元の歯並びやお口の状態を検査・診断して治療方針を決定します。
その際に、理想的な歯並びにするために不要な歯を抜歯するという診断をする事があります。
通常は歯を動かしたい距離や歯の位置などを考慮して抜歯する歯を決めますが、虫歯がある、治療痕があるなど、将来的に長持ちしない可能性が高い歯を優先して抜歯する診断をすることができるケースもあるのです。
せっかく虫歯治療をしたのに、矯正治療で抜歯することになったらもったいないですよね。
また、大きく被せ物をする必要がある歯の場合は、矯正治療が終わってから被せ物を製作したほうが、よりきれいな歯並びに合った被せ物を作製することができるかもしれません。
矯正歯科へ通院して検査を受けても、矯正治療と並行しての治療ではなく、先に虫歯を治療するよう指示されることもあります。
虫歯の程度(象牙質に進行している)、虫歯の箇所(ブラケットを装着する部位に虫歯がある)、既に他院で虫歯治療の途中であるなどは矯正器具を装着してから治療することが難しく、また、矯正期間は長期にわたるため虫歯が進行してしまう前に虫歯治療や被せ物の治療を終わらせておくことがセオリーです。
矯正期間中に虫歯が進行して矯正器具を外して治療をする必要が出てしまった場合、矯正治療の治療計画や治療期間が大幅に変わってしまう可能性があるのです。
その後抜歯が必要になるくらい虫歯が進行してしまった場合は、せっかく矯正したのに抜歯のせいで歯並びが変わってしまった…なんてことも。
「矯正治療を完了した後に虫歯治療をするから、今はとにかく早く矯正を始めたい!」と思うかもしれませんが、矯正治療中に虫歯を放っておくと上記のような、矯正治療後のリスクもあるのです。
また、矯正を始める前から虫歯がある方は、自分自身での歯磨きが十分にできていないケースが多く、矯正器具を装着してお口の中の清潔が保ちにくくなった際に虫歯になりやすくなる、虫歯が進行してしまい治療が難しくなる傾向にあるのです。
基本的には先に虫歯の治療を行うように言われることが多いでしょう。
しかし、歯並びが複雑な方や虫歯が多い方、できるだけ早く矯正治療を始めたい方は、先に矯正歯科に行くことで虫歯治療の期間を減らすことができるかもしれませんね。
反対に虫歯が少なく、虫歯になってしまった歯を抜歯して矯正治療することはできないの…?と思っている方も、まず先に矯正歯科にて相談してみてはいかがでしょうか。