監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
一生に一度の結婚式。「素敵な笑顔で写真に写りたい!」と考えている方も多いのではないかと思います。歯並びがきれいだと、笑顔になったときの印象が違います。実際に歯並びを改善するには長い期間の治療が必要となりますが、式当日に合わせて歯並びをきれいにできる矯正治療があります。それが、患者さんの希望に合わせて治療方針を立てられる「ブライダル矯正」です。ウエディングドレスやメイクなどに比べて、準備期間がとても長いと考えられていた矯正治療ですが、ブライダル矯正であれば治療中であっても美しい口元で式に出ることも可能です。
「結婚式までに歯並びをきれいにしたい」「当日は矯正装置を付けずに式を挙げたい」といったニーズにこたえられるブライダル矯正について、詳しく解説します。
公開日:2020/12/07 更新日:2021/11/18
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
結婚式では、プロのカメラマンや出席している友人・知人からたくさんの写真を撮影されます。さらに、笑顔を求められることも多いので、口元を気にされている方にとっては悩みの種となることも少なくありません。矯正治療を受けようと考えていたが、式までに時間がないので歯並びをきれいにできない…とお考えの方もいます。ブライダル矯正によって、「式に合わせて歯並びを整えたい」「式までの時間が少ない」といった問題を解消できるかもしれません。
ブライダル矯正そのものは矯正治療の方法を表す言葉ではなく、式までの日数などを考慮したうえで、独自に矯正治療の方針を立てていくものです。式までの日数が少ない場合でも、目立つ部分を優先的に矯正したり、式当日だけ矯正装置を外したり、といったさまざまな選択肢があります。歯科医師の方で、日数や患者さんのご希望などを考慮したうえで治療方法を立案します。
ブライダル矯正には、さまざまな種類の矯正治療があります。
ワイヤーブラケットを舌がある側(歯の裏側)に装着する治療方法です。装置が目立たないのでほかの人からは見えにくく、矯正装置を付けたまま式を挙げることも可能です。また、前歯を引き込みやすいという特徴もあり、矯正治療の前半を終えたところで、前歯部分が改善しやすい傾向にあります。
マウスピースを使った矯正治療です。装置そのものが透明で目立たないうえ、ご自身で取り外すことも可能です。事前に治療経過のシミュレーションができるため、式前後の歯並びを把握しやすいという特徴もあります。透明な装置を付けたまま式を挙げることもできますが、外すこともできます。
表側矯正はワイヤーブラケットが目立ってしまいますが、スケジュールを細かく立てながら治療を行い、式の少し前にワイヤーブラケットを一時的に外すという方法もあります。リテーナーと呼ばれる後戻りを防止する装置を付けていただきますが、取り外しが容易なので式当日に外すことができます。
矯正装置を外して式を挙げたい場合には、式の少し前にワイヤーブラケットの矯正装置を外し、マウスピース型の矯正装置に切り替える治療方法です。マウスピースは透明なので目立ちませんが、式の時間だけ取り外すことも可能です。
結婚式当日までの治療が難しいケースでは、歯列の中でも目立ちやすい前歯を優先的に治療をすることがあります。結婚式前には前歯の部分矯正を行い、結婚式後に奥歯の矯正治療を行います。
歯並びが気になる部分だけを矯正します。症状にもよりますが、一般的な治療期間としては、ワイヤーブラケットによる矯正が3ヵ月、マウスピースなどによる微調整が3ヵ月となります。ワイヤーブラケットで7割程度は矯正治療が進んでいるとみられるので、完成に近い状態で良い場合は、ワイヤーブラケットによる矯正に必要な3ヵ月を確保できれば、式当日はマウスピースを外すなどして出ることができます(個人差があるので、期間が長くなることがあります)。
結婚式の日までに、歯の矯正が完了していることが理想的です。しかし、矯正治療は長期にわたるほか、式までの時間が少ない、症例がやや複雑であるなど、さまざまな事情から完璧な状態で式を迎えることが難しいケースも多々あります。
そうした中で大切なのが、その人に適したゴールの設定です。矯正治療が結婚式の前に終わるのか、ある程度きれいになれば良いので結婚式をゴールに設定するのか、式が終わったら再び矯正装置を付けて治療を再開するのか。といったように、ブライダル矯正にはさまざまな選択肢があります。まずは、ご自身の中でゴールを設定し、歯科医師に伝えられるようにするとよいでしょう。
何よりも大切なのは、歯科医師が治療計画を立てられるように正確に情報を伝えることです。
・結婚式の日時
・前撮りや後撮りの有無、日時
・歯列で特に気になる部分(出っ歯、すきっ歯など)
・矯正治療の方法の希望(舌側矯正、マウスピース型矯正装置による治療、式の日だけ装置を外す表側矯正など)
・式までにどの程度矯正が進んでいるのが望ましいか
など、ご自身の希望をはっきりと伝えるようにしてください。
カウンセリングの際に伝えたいことをメモしておくと、歯科医師の方でもより踏み込んだ治療方法の提案などがしやすくなります。そのためにも、普段から理想とする口元をイメージするとよいでしょう。
また、歯科医師の治療方針についても、気になる部分を事前に確認することが大事です。歯列が中途半端な状態で式に臨んだのでは、元も子もありません。式までにどの程度きれいになり、当日はどのような歯になっている予定なのか、歯科医師に相談しながら進めるようにしてください。
このほか、式の前に装置を外せる矯正治療では、付け外しで別途料金が発生することもあります。その場合は料金がいくらになるのか、確認しておくことも大切です。
仮に数年単位で治療期間がかかる矯正歯科治療を受けている場合も、歯科医院によっては途中で装置を取り外すことが可能です(別途費用がかかる可能性があります)。
結婚式を控えている場合は矯正治療ができるかどうか事前に確認することをおすすめします。
ブライダル矯正は、結婚式がより素敵な思い出になるようサポートするものですが、患者さんが積極的に治療へ参加する姿勢も求められます。