目次
1.治療開始時:6歳半~
【症状】 乳歯歯列期の反対咬合
上記の写真は治療前のものです。治療開始時年齢は6歳半、永久歯は1本もありませんでした。右上の真ん中から4番目の乳歯D(第一乳臼歯)から左上真ん中から3番目の乳歯C(乳犬歯)までが反対咬合の状況でした。
レントゲンの検査、家族暦などから骨格的な下顎前突の程度が大きいことがわかりましたので、オトガイ帽装置(チンキャップ)を使用することになりました。
【治療方針】取り外しのできる装置で上顎前歯を治療
チンキャップ(別名:オトガイ帽装置)の使用効果についてはさまざまな論拠、発表があります。※当症例ではチンキャップの使用効果について、「1.直接的に下顎骨を小さくする効果は無い、2.他の装置の使用効果を高めたり、習癖を除去する効果があり、その結果上顎の本来の成長が得られて上下顎の大きさのバランス改善が得られる」との考えで治療・解説しています。
少しでも治療を楽しむため、色付の装置などもあります。
2.治療経過
[1] クリアプレートとチンキャップの併用(6歳半)
普段のかみ合わせのまま下顎を後ろに押し下げようと力をかけた場合、上顎前歯と下顎前歯がぶつかって上顎まで後ろに下げようとする力が働いてしまいます。そこで、チンキャップを使用する場合には前歯の干渉を避けるためにクリアプレートを併用しました。
[2] 治療から1年後…下顎前歯の抜け変わり(7歳半)
1年後(7歳半)の口腔内。下顎前歯が抜け替わりましたが、反対咬合の状態です。
[3] クリアプレートから装置を変更…FKOに変更(8歳)
8歳になり、下顎の4前歯が永久歯になりました。口腔内装置はFKOに変更しています。
[4] 上顎前歯の乳歯が抜けた状態(8歳2カ月)
8歳2ヶ月で上顎前歯が抜けました。反対咬合の程度は、見ただけではわかりにくい時期ですが、継続して装置の使用を行っています。上の写真は、歯みがき練習を行っているときに、歯を染めだしたときのものです。
[5] 上顎中切歯(永久歯1番)が萌出(8歳6カ月)
8歳6ヶ月で上顎の1番目の永久歯(中切歯)が反対咬合の場所に生えてきました。下顎の1番が生えてくるのは女児平均で6.6歳、上顎の1番は7.3歳と言われていますので、この症例の場合、歯の生え代わりが遅いタイプといえます。しかし、前後2年程度の個人差があっても異常ではありません。
[6] 上顎の中切歯が正常被蓋になり通院間隔を長く調整(8歳10カ月)
8歳10ヶ月時。上顎1番の歯が、正常被蓋※となったので、通院間隔を2~3ヶ月毎と、少し長く調整しました。(※上あごと下あごの歯の上下・前後の重なりが正常な状態。)
[7] 上顎右側の側切歯(永久歯2番)が正常被蓋に(10歳8カ月)
上の写真から約2年後となる10歳8ヶ月時の正面像です。右上の2番目の永久歯(側切歯)は正常被蓋となっています。また、ようやく左上の2番が生えてきました。ちなみに、上顎2番が生えてくる萌出時期は女児で8.4歳が平均。男児の歯の交換は女児より半年から1年遅いのが平均とされています。
[8] 半年に1回の経過観察(12歳2カ月)
さらに1年半後、12歳2ヶ月時の口腔内です。前歯の正常被蓋は維持されています。
この段階では、半年から1年に1回の通院で経過を観察して定期的に様子をみています。
治療に使用した装置 : チンキャップ、クリアプレート、FKO
※治療方法は医院や患者様の症状によって異なります。