矯正中の口臭について

矯正治療をはじめたらお口の臭いが気になる、なんてことはありませんか?矯正装置をつけているため歯磨きがしにくい以外にも様々な要因が口臭の原因になっているかもしれません。口臭がする原因と予防・改善するためのポイントについて紹介します。

公開日:2019/10/01  更新日:2020/09/15

監修医師

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

目次

  1. 口臭の種類は6つあります
  2. 2.口腔内のカビ菌(舌苔 [ ぜったい ]) が原因の口臭
  3. 3.自己臭症 [ じこしゅうしょう ] が原因の口臭
  4. 4.他疾患が原因の口臭
  5. 5.生理的な原因の口臭
  6. 6.食べ物が原因の口臭(外因的口臭)
  7. 【よくある質問】口臭を客観的に検査するには?
  8. 口臭を防ぐための基礎知識

口臭の種類は6つあります

口臭とは、本人や周りの人が不快に感じる臭いのする呼気のことです。
生理的な原因で起こる場合があれば、お口の中・全身の疾患により起こる場合もあります。

1.口腔内の細菌(虫歯・歯周病)が原因の口臭

口臭の原因で一番多いとされているのが舌の上の汚れ(舌苔)です。また、虫歯や歯周病などの原因となる細菌でも口臭が起こります。菌自体から不快な臭いが発生しているわけではなく、お口の中にいる空気を嫌う菌が、お口の中の唾液や血液、食べかすなどを分解する時に発生させるガスが不快な臭いの大きな原因です。
硫化水素(H2S)、メチルメルカプタン(CH3SH)、ジメチルサルファイド[(CH3)2S]からなる揮発性硫黄化合物が口臭の正体です。
お口の中の菌が原因の口臭は、口から吐き出した息に不快な臭いがすることがポイントです。
舌のケアや虫歯・歯周病を歯科医院で治療すれば軽減、改善していきます。
また、毎日寝る前にていねいな歯磨きを心がけ、お口の中の清潔を保つことで改善されます。

2.口腔内のカビ菌(舌苔 [ ぜったい ]) が原因の口臭

既に紹介しました舌苔について紹介します。舌苔とは舌の上の皮や細菌が多く含まれた舌の表面にできたこけ状のものです。 ( 右図 )主に口腔内のカビ菌(カンジダ)が存在します。
体調が悪い、高齢、全身の病気や風邪などにより脱水症状が起こると、お口の中の唾液の量が減少し、舌苔が溜まりやすくなります。
舌ブラシを使用して舌苔を取り除くことで、口臭が軽減されます。
舌の表面には凹凸があり、舌苔は凹凸に入り込んで付着するため、全ての舌苔を取り除くことは不可能です。
舌苔は誰にでもあり、無理に取り除こうとすると、舌に傷をつけ、口内炎や舌癌の原因となるかもしれません。
強くこすって1度で取り除こうとせず、やわらかい舌ブラシを使用して、毎日こまめに舌苔を取り除くことが重要です。

3.自己臭症 [ じこしゅうしょう ] が原因の口臭

他の人には口臭は感じられず、本人だけが口臭がすると感じる症状です。
精神的に不安定な時期や思春期、更年期の女性に多く見られます。
また、強いストレスにさらされたり、うつ状態の時に自己臭を訴える場合もあります。
お口のケアでは改善しないため、かかりつけの歯科医院に相談してみましょう。記事の下に紹介していますが、臭気を数値化してくれる装置が医院にあれば、口臭が実際にあるか無いかを数値で知ることができます。測定してもらうと安心するかもしれません。

4.他疾患が原因の口臭

副鼻腔炎 ( 蓄膿症 ) や咽頭炎など耳鼻科疾患に由来するもの、糖尿病 ( 甘酸っぱい臭い) や腎臓病 ( アンモニア臭 ) に由来するものがあります。
また、呼吸器異常 ( 腐った肉の臭い ) や、消化器異常 ( 腐った卵の臭い)、 肝臓疾患 ( 動物の臭い) に由来するものがあります。
これらの全身疾患が原因の口臭は、鼻からの呼気に悪臭がするのが特徴です。鼻からの呼気に悪臭がある場合は耳鼻咽喉科、内科等を受診して下さい。

5.生理的な原因の口臭

生理的な口臭とは、お口の中に疾患がなく、健康な人でも感じることのある口臭です。誰にでも起こる口臭です。
朝起きた時、空腹時、緊張時、女性の生理時や妊娠時などホルモンバランスが崩れる時は、唾液の分泌が抑制されてお口の中が乾燥するため、口臭の原因となります。
一時的なもので時間が経過するにつれて口臭は軽減していきます。
また、食事をとる、歯磨きをするなどお口の中を刺激すると唾液が出るため、口臭が軽減します。お口の中は寝ている間に菌が繁殖しやすい状態になるので、寝る前によく歯磨きをしておくと朝起きた時の口臭を軽減できます。

6.食べ物が原因の口臭(外因的口臭)

キムチ、にんにく、たくあん、にら、ねぎ、玉ねぎ等、臭いの成分を含む食べ物による口臭です。にんにく、にら、玉ねぎ等に含まれる臭いの成分のアリシンは、食べる前に牛乳を飲むことによって臭いを抑えられると言われています。他にも、りんごや緑茶に含まれるポリフェノールにも口臭を抑制する効果が期待されています。また、お酒やコーヒーは利尿作用がありお口の中が乾燥するため、口臭の原因となります。利尿作用があるものを飲む時は、意識して水を飲むとよいでしょう。

タバコによる口臭は、タールニコチンが原因です。タールが舌や歯に付着するとタバコ特有のヤニの臭いの原因となります。
ニコチンは交感神経を刺激します。ヒトはリラックスしている時に唾液が多く出ますが、興奮している時は唾液の量が減り、ネバネバした唾液に変わります。ニコチンによって興奮状態になるとお口の中が乾燥して口臭の原因となります。

【よくある質問】口臭を客観的に検査するには?

口臭を自覚している人の中には実際には口臭がしない人もいます。反対に、口臭が強くあっても口臭を自覚していない人もいます。口臭治療を行う際は、まず客観的に口臭を検査することが重要です。

ブレスチェッカー(口臭測定器)
右図のようなブレスチェッカー(口臭測定器)に息を吹き込むことで、誰でも簡単に口臭の強さを検査することが可能です。臭いの度合いは通常、少し臭う、臭う、とても臭うの4段階など段階を付けて表示されます。
簡単に検査ができるため、口臭が気になる方は日々の習慣として取り入れることもできます。

口臭測定器
歯科医院でお口の中の不快な口臭の原因成分を検査して口臭の程度を客観的に検査することができます。
吹き込んだ息に含まれるガスを測定し、虫歯や歯周病などによる口臭か、臭いの強い食べ物を摂取したことによる外的要因の口臭か、お口の中に残る汚れが原因の口臭か判断することが可能です。
個人で口臭ケアを行っているのに改善されない方は、口臭測定検査を受けることで改善方法がわかるかもしれません。

口臭の検査をする時は、直前に歯を磨かない、歯磨き粉やマウスウォッシュの使用をしない、香水の使用を控えるなどの注意が必要な場合があるので、事前に歯科医師に確認してください。

口臭を防ぐための基礎知識

・洗口液(マウスウォッシュ)を使用する

殺菌効果や消臭効果がある洗口液は、人と会う前のエチケットとしては効果的です。
また、洗口液の効果を十分に発揮させるために、朝起きた直後と寝る前、食後にていねいに歯磨きを行いましょう。
お口の中に菌がいると口臭の原因になりますので、フロスや歯間ブラシなどの補助道具も使用して、歯と歯の間や歯の裏側など細かい部分までていねいに磨くことが大切です。

・舌を磨く

舌を強く磨きすぎるとかえって口臭が強くなる可能性ががあるので、注意しましょう。
舌ブラシを使用して、舌を傷つけないように優しく舌苔を取り除いてください。
全ての舌苔を取り除くことはできませんので、痛みのない程度に清掃してください。

また、口ではなく鼻で息をしましょう。
口呼吸はお口の中が乾燥してしまい、舌苔やプラークが付着しやすくなります。
乾燥したお口の中は菌が繁殖しやすく、口で息をする人は鼻で息をする人に比べ、口臭が強いと言われています。
鼻炎などがある場合は耳鼻咽喉科を受診し、鼻呼吸ができるよう治療してみましょう。

・よく噛んで規則正しく食べる

あまり食事を噛まないと、胃腸などの消化器官に負担がかかり、口臭の原因となります。
また、3食規則正しく食事をとることも大切です。空腹時間が長くなると、口臭の原因となります。

・歯周病や虫歯の治療を行う
歯周病菌や虫歯菌がお口の中に多くいる場合、口臭の原因となります。治療を行い、症状を改善することで、口臭が改善される可能性があります。
また、歯周病や虫歯が進行するとお口の中に食べかすが残りやすくなる、膿や血液が溜まるなど菌以外にも臭いが発生する原因が増えてしまいます。
お口の中を常に清潔にしておくことで、口臭の改善が期待されます。

~ 口臭は誰にでもあります ~
口臭が全くない人はいません。あまり神経質にならない方がいい場合もあります。
口臭が気になる場合は、まずは歯科医院を受診し、客観的な口臭の測定や、口臭の原因を探ってみましょう。