監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
矯正歯科の総合サイトです。「妊娠期間中の矯正治療はどうなるんですか?」『成人矯正によくある質問と回答』についてご紹介します。
公開日:2024/02/19
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
矯正歯科治療は妊娠中でも可能です。
患者さんによっては妊娠前に矯正歯科治療を始めて、治療期間中に妊娠がわかり、主治医と相談しながら治療を続けることもあります。
妊娠中の矯正治療では、妊娠後期(出産時期)にさしかかると一時的に治療を中断し、出産後落ち着いてから治療を再開する方法をとります。
妊娠や出産に伴う矯正治療の中断は珍しくありません。妊娠がわかったときはもちろん、妊娠の可能性があるときも、主治医に知らせておきましょう。
「妊娠中でも歯科矯正で抜歯をしても大丈夫?」
妊娠中の抜歯は、時期によって異なります。
妊娠初期(妊娠4週から15週頃)の抜歯は控えたほうがいいですが、安定期(妊娠16週~28週未満)に入れば比較的問題はないでしょう。
抜歯には麻酔や投薬をすることがあります。
もちろん妊娠中でも使用して問題のない麻酔を使用したり薬が処方されます。
ですが妊娠初期は体調も不安定になりがちな時期で、歯科での処置や抜歯後の痛み・違和感で身体に負担がかかることも考えられます。胎児の器官が形成される時期でもあります。
念のため、妊娠初期に抜歯などを含む歯科治療は緊急性が無い限り行われない傾向にあります。
矯正でアンカースクリュー(チタン製の医療用ネジ)を埋め入れる処置を行う場合も同じです。担当医と十分に相談したうえで決めましょう。
妊娠中のレントゲン撮影は抜歯やアンカースクリューと同じく、基本的には安定期に入れば問題ないとされています。
レントゲン撮影による放射線被爆量は10mGy(ミリグレイ)以下といわれています。
大阪大学医学部付属病院放射線部によると、胎児に影響を及ぼす放射線量は100mGy以上であるため、10mGyであれば問題はないといえるでしょう。
妊娠中に撮影するとしても、防護エプロンで腹部を覆っておりますので、胎児に悪影響が出る可能性は低いです。
ただし、念には念をと、レントゲン撮影は出産後しばらく経つまで行わない歯科医院もあります。
妊娠中はつわりが起きたり精神的に不安定になったりと、歯科医院への通院が難しいことも多いでしょう。
そういうときでも、歯科医院に行かなければいけないのでしょうか?
基本的には、気分が悪いときや気持ちが落ち着かないときは、当日であっても予約をキャンセルして無理に通院しないほうがよいでしょう。無断キャンセルはしないようにしてくださいね。
つわりや精神的な不安定が長く続く場合、一度矯正治療を中断する選択肢も検討してみてください。
ただし、矯正治療の進み具合によっては中断が難しいタイミングもあります。
基本的に中断が1ヶ月前後なら特に問題無いことが多いですが、中断したいことを歯科医師に伝えましょう。
通院が難しければ、電話で相談してみてください。
妊娠中はマウスピース矯正だけではなく、ワイヤー矯正も可能です。
「妊娠中ならどちらの矯正方法がいい」という治療方法はありません。
マウスピース矯正とワイヤー矯正のメリットやデメリットを考えて、ご自身に合った矯正方法を選ぶのがいいでしょう。
マウスピース矯正の場合、出産の際でもマウスピースを外しても大丈夫なことがメリットでしょう。
逆に、ワイヤー矯正であれば自身での管理が必要ないため、妊娠中でも計画通りに治療が進められる可能性が高いでしょう。
歯科矯正は妊娠中でも可能ですが、妊娠初期なら安定期に入るまで避けたほうが無難です。
妊娠中はつわりや気分の浮き沈みなど、体調の変化が著しい時期です。
体調不良のために歯科医院に通うことが難しい際は、治療中断を申し出ることを検討しましょう。