監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
「裏側矯正を考えているけど、どんなものなのかイマイチよくわからない…」
今回は裏側矯正のにかかる費用と表側矯正との違い、治療の流れについて詳しく説明していきます。
公開日:2024/03/04 更新日:2024/03/07
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
目次
裏側矯正とは、歯の裏側(舌側)に矯正装置を着けて歯を動かし、歯並び・噛み合わせをよくする矯正方法です。
歯の表側に矯正装置を着けないため目立たないのが特徴です。
歯の上下とも裏側に装着する場合は「フルリンガル」、上の歯だけ裏側の場合は「ハーフリンガル」と呼ばれています。
フルリンガルは矯正装置が目立ちにくいですが費用は高く、ハーフリンガルは矯正装置が目立ちやすくなりますが、フルリンガルに比べて費用は安くなります。
そのため、矯正を目立たせたくない場合はフルリンガル、少しでも費用を抑えたい場合は上だけ裏側に矯正装置を装着するハーフリンガルなどで選んでみてもよいでしょう。
裏側矯正の治療の流れは大きく分けて、6つのステップに分かれます。
①初診・カウンセリング(所要時間:約30分~60分)
②精密検査(所要時間:約30分~60分)
③治療計画の説明・クリーニング(所要時間:約60分)
④矯正装置の作成・装着(所要時間:約30分~60分)
⑤定期検診・装置の調整(頻度:1ヶ月に1回程度)
⑥歯列矯正終了・保定(頻度:3ヶ月に1回程度)
初診から後戻りを防ぐ保定期間に入るまで、2年以上かかることもあります。
歯の状態意外に、歯を動かす範囲(部分矯正か全部矯正)などによって期間は異なります。
「裏側矯正って矯正装置が目立たないこと以外に特徴はあるの?」
裏側矯正を表側矯正と比べたときの5つの違いを紹介します。
・虫歯
・舌癖
・発音
・矯正装置の力のかかり方
・裏側矯正に必要な技術
これら5つのポイントがどのように違うのか、順番に説明していきます。
裏側矯正は表側矯正に比べると矯正装置の周りが唾液で洗い流されやすく、特に下の歯の裏側は唾液の作用を受けやすく、虫歯になりにくいでしょう。
矯正中に歯を舌で押すと、舌の力で歯が動くのを邪魔してしまい治療が遅くなったり、後戻りの原因になることもあります。
裏側矯正では、舌が矯正装置に触れると違和感や痛みを感じるため、無意識のうちに舌で歯を触らなくなっていきます。舌の悪い癖が改善されるかもしれません
裏側矯正だと歯の裏側の矯正装置に舌が当たるため、発音しにくくなります。
特にサ行やタ行、ラ行が言いにくくなる傾向があります。
1週間から2週間程度で慣れて発音は改善されますが、は注意しましょう。
裏側矯正は歯につけるブラケット同士が近く、表側矯正と比べると強い力が出せます。ただし、強い力だと歯の痛みが激しく感じやすくなるので、表側矯正より弱いワイヤーを使用したり、弱い力で歯を動かすこともあります。
ちなみに裏側矯正は装置を着けた方に歯を動かしやすくなるため、出っ歯や受け口の患者さんにオススメです。
裏側矯正は多くの場合、歯の模型から、患者さん個々に合った矯正装置を作り、特殊な器具を用いて装着する「インダイレクトボンディング」という方法を取ります。
装着する際は担当医によって違いは大きくありませんが、装着後の調整に技術が必要です。
「裏側矯正は高いって聞くけど本当?」
実際、裏側矯正は表側矯正やマウスピース矯正より高くなります。
クリニックや地域で大きく異なりますが、相場は110万円から180万円くらいで、表側矯正の1.5倍ともいわれています。
なぜ裏側矯正はほかの矯正よりも高くなるのでしょうか。主に理由は2つあります。
・専門性が高く治療できる医師が限られる
・矯正装置がオーダーメイド
裏側矯正は歯の裏側に矯正装置があるので見えにくく処置に手間がかかります。
2024年3月 株式会社メディカルネット調べ
裏側矯正について気になることをQ&A方式でまとめてみました。
Q.裏側矯正って痛いの?
A.装着してから多少の痛みが生じる患者さんが多いですが、徐々に慣れて痛みをかんじにくくなります。
慣れてからも、装置を調整するとまた数日は痛みを感じることもあります。
Q.なんで痛くなるの?
A.歯を動かす力を加えることで、歯を支えている歯槽骨や歯根膜などの歯周組織に炎症が起きて痛みが発生します。
矯正装置が口の中で当たることによって痛みが出る場合もあります。
Q.裏側矯正中にダメな食べ物や飲み物はある?
A.硬い食べ物や粘着力のある食べ物は避けたほうがいいでしょう。矯正装置が外れることがあります。
細長い食べ物は絡まりやすいので、ラーメンやそばといった麺類、ニラ、もやしなどの繊維質な物を食べると挟まる可能性がありますが、食べてはいけないわけではありません。食べたらしっかり歯磨きをしましょう。
Q.カレーやコーヒーみたいに色がつきやすい飲食物を摂取しても大丈夫?
A.問題ありません。
ただし、矯正装置の一部に着色することはあります。ちなみにゴムやプラスチックの部分には色がつきやすいです。
Q.表側矯正に比べると治療期間は長くなる?
A.治療期間が早くなる可能性は少ないでしょう。
上記でもお伝えしている通り、裏側矯正のほうが手間がかかるため期間が長くなるかもしれません。裏側矯正の治療期間は症例によりますが、全体矯正で2年以上かかります。
裏側矯正とは歯の裏側に矯正装置を着けて、歯を動かすことです。
正面から見たときに矯正装置が見えないことが特徴なので、見た目を気にする方にうってつけな矯正方法です。
表側矯正やマウスピース矯正との違いを把握したうえで、裏側矯正を検討しましょう。