監修医師
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
矯正治療中の歯磨きについて解説します。矯正中は歯磨きがとっても大変。通常の歯ブラシだけではなく、2列ブラシやタフトブラシ、歯間ブラシ、フロスなどを部分によって使い分けて磨くのがコツです。裏側矯正の場合は特に磨きにくく、歯と歯の間に食べ物が詰まりやすいため、鏡で確認しながら磨いていきましょう。
公開日:2020/01/14 更新日:2021/11/16
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
目次
固定するタイプの矯正装置が歯に取り付けられると、ワイヤーやブラケットが邪魔をして、歯ブラシが上手く当たりません。長期間磨けていない箇所があると、虫歯や歯周病の原因になってしまいます。「矯正装置を取り外したあとに、虫歯の治療になる」なんてこともあるので、矯正治療中の口腔内ケアは念入りに行う必要があります。
矯正治療中の歯磨きでは、さまざまな種類の口腔ケアグッズを使い分けて、歯と矯正装置に付着した汚れを綺麗に落とすことがポイントとなります。その中でも多く使われている4つの口腔ケアグッズをご紹介します。
日常生活で使用する歯ブラシです。矯正治療中も通常の歯ブラシを使用します。ブラッシングのコツは、上顎の歯と下顎の歯を分けて、丁寧に往復磨きすることです。ブラシの毛先が歯とワイヤーの間にも入るように、うまく傾けて小刻みに左右や上下に動かします。ブラシの毛は柔らかく細いものだとさらに磨きやすいでしょう。
毛束が2列のタイプの歯ブラシです。通常、毛束が3列のブラシを一般用として使いますが、こちらは2列で通常より少しコンパクトになっています。一般の歯ブラシでは磨きづらい、重なり合って生えている歯や、複雑な生え方をしている歯などを磨きます。
毛束が一つで山型の形状になっているのが特徴の歯ブラシです。コンパクトなヘッドなため、歯1本1本の細かな部分とブラケット周りが磨きやすく、ほかの歯ブラシでは届かなかった細かな歯と歯の隙間や、歯肉と歯の堺目、ブラケット周りのブラッシングに適しています。
歯ブラシやタフトブラシでは落としきれない、歯と歯茎の間のプラーク(歯垢)や汚れを落とす際に使用します。ただし、サイズが合わない歯間ブラシを使用するなど、誤った使い方をしていると、歯茎を傷めたり、歯茎がさがり歯と歯の間に黒い隙間を作ってしまう恐れがあります。適切な使用方法とサイズを歯科医院に確認しましょう。なお、歯ブラシだけでは全ての汚れを取ることは難しいです。矯正治療中は装置がついているのでなおさらです。歯ブラシに加えて、タフトブラシと歯間ブラシも活用することをおすすめします。
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通常の歯ブラシや2列歯ブラシを使うコツ
通常の歯ブラシでブラケットと歯の表面を小刻みに磨きます。矯正装置と歯の間に歯ブラシをななめ(45度くらい)に傾けて磨くと効率的です。通常のブラシでは行き届かない部分は2列タイプのものに持ち替えて磨きます。
タフトブラシや歯間ブラシを使うコツ
通常の歯ブラシや2列のタイプで磨きにくかった部分(歯と歯の間やブラケット周り)は、毛束が一つになっているタフトブラシで磨いていきます。歯と歯の間の汚れはサイズの合った歯間ブラシを使用します。
歯と歯の間は歯ブラシでも歯間ブラシでも届かない部分があります。その場合はフロスや歯間ブラシを活用して歯垢を落とします。ワイヤーがあり難しいですが、画像のようにワイヤーの下からフロスをくぐらせることで、うまく落とすことができます。なお、難しいと感じる場合は歯間ブラシを使っても構いません。
矯正装置は、奥歯にはめる銀色の「バンド」と歯1本1本につける「ブラケット」、それらを繋ぐ「ワイヤー」から成り立っています。※画像は上顎が裏側矯正、下顎が表側矯正の装置をつけています。(専門用語で「ハーフリンガル」といいます。)画像の黄色丸部分の「バンドと歯の隙間」や「歯と歯の間」、「ブラケット周り」は食べ残しが溜まりやすく、虫歯になりやすい部位になります。
裏側矯正の場合、上顎のバンドの内側(舌側)はとても見えづらいため、食べ物が挟まっていても気づかないことが多いです。どこに食べ物が挟まっているのかを手鏡を使い、毛先が当たっている場所を確認しながら歯磨きを進めましょう。歯と歯の間は普通の歯ブラシでは入りにくいため、歯間ブラシやタフトブラシで磨きます。
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違和感や痛みなどが出た場合は、なるべく早くかかりつけの歯科医院へ相談しましょう。早期であれば矯正治療を中断することなく、虫歯を削りプラスチック(レジン)を詰めて終了できる場合があります。
虫歯が悪化して矯正装置を外さないといけない場合、矯正治療の期間が延びてしまうことになります。
矯正治療中の歯磨きは「気が向いたときにしっかりやればいい!」ではなく、念入りに毎日行うようにすることが、虫歯予防の鍵です。なるべく食後は磨くように習慣付けていきましょう。寝ている間に虫歯菌が繁殖しやすいため、日中は忙しくて磨けなかった場合でも、夜はしっかりと磨くようにしましょう。